腹黒薬師は復讐するために生きている
怜來
やってきた薬師ー①
(アイツらは絶対に…許さない…私がこの手で復讐してやる…!)
シャルバリー王国。そこは平和な国であった。事件なども滅多に起きず、みなが仲良く暮らしていた。互いに助け合い尊重しあう。そうやってシャルバリー王国は栄えてきた。
しかしそんな国でも表には出さない裏がある事をみな知らない…
シャルバリー王国に一人の少女がいた。少女は小さい頃から頭が冴えていて薬師になるという夢を抱いていた。
好奇心旺盛でよく森に遊びに行き不思議な植物を持って帰ってきては調合したりそれを自分の体を実験体として付けたり、飲んだりしていた。
カナリヤ・ハルデリス
普通の農民として育ったカナリヤは毎日楽しく過ごしていた。普通の女の子で周りから好かれる存在であった。
しかしあることを機にカナリヤは一変した。前までの笑顔は消え果て、家に引きこもるようになり、遂にはどこかへ消えてしまった。
カナリヤの行方を知っているものは誰一人もいなかった。
だが、ある日突然カナリヤはニコニコしながら家へ帰ってきた。カナリヤの親はカナリヤを抱きしめた。
何があったのか聞いても何も答えてくれない。ただただ笑っているだけだった。それでも両親はカナリヤが帰ってきてくれたことが嬉しく気にしていなかった。
前までとは変わらない日常を送るようになった。いつものように森に行ってはカゴいっぱいに植物を詰め込んで帰ってくる。
そして直ぐに部屋に引きこもり実験をする。そんな日々を送っていたある日国に謎の病が大流行した。
国の医師が大勢集まり解明を急いだが何一つ分からなかった。
それも病気にかかった人達に共通するものは何一つなく何がどうなってこの病気に発展したか、その経緯も分からなかった。
若者から高齢者までもが病気にかかり苦しんでいた。この病気について気になったカナリヤは急いで病院に向かった。
そこで一人一人の患者を見て周り家に帰った。そして、誰一人成し遂げられなかった原因を突き止めた。
その原因は国の周りにある植物によるものだった。それを市場で買い、口にしたことにより病気にかかったのだろう。
簡単な事だったのに医師が分からなかった理由は、この国では植物による病気が流行ったことが初めてであったからだ。
そのため、植物からの感染を疑わなかった。
それを見事に当てたカナリヤの噂は城に居る王にまで届きカナリヤは国を救ったとして城に招待された。
家の前に豪華な馬車が止まっている。馬車に乗り込み何分が経過し見えてきたのはこの国の城。王がいるところである。
城に着くと侍女のような人達に案内され大広間にやってきた。
前には玉座に座った王がいる。
「君が噂の薬師か?」
「はい」
「そうか、今回は本当にありがとな。君のおかげでこの国は助かった」
「いえいえ」
「そこでなんだが…君にこの国の為に尽くしてもらいたい。その代わり君の願いはなんでも聞こう」
カナリヤはニコッと笑いかけ話に応じた。
「私もこの国の為に尽くしたいと思っています。そのような提案をしていただけるのはとても光栄です」
嬉しそうな顔で王の提案を喜んだ。だが、内心はそんな薄っぺらい笑いではなかった。
王に気に入られるのはとっくのとうに計算済み。
気に入られるのは簡単な事だ。ただ単にこの国の危機を救えば王はこちらを振り向く。
それがカナリヤの考えであった。こんなの始まりに過ぎずこれからが本番だ。
カナリヤの復讐が始まる
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