第10話

※レマイア領 穀物問屋でガサ入れ中です。



「・・見極めに失敗したのか?見誤ったか?」


そこに問屋の当主が今の表情に出ているが、何に対して焦っているのか?何処から検討を付けられるのか?只々混乱し百面相を繰り返しているだけだった。そんなのを氷げする人物を現実に見れるとは・・感慨に耽りたい思いも無くは無いけどな。


それらに触れて時間を喰っても仕方ない、外にはお待たせメイサリスが居るからな。俺の知らないうちに、誰かが声でも掛けて居たら問題に発展しかねない。

少し前の冒険者ギルドで起こった厄介事は、何処の場所でも有りそうだからだ。


「たいした量じゃないが、こっちが提出された状況から推移出来る書類。それから各店から陳情の類が纏めてある。そこは名を伏せる為に領公が模写した奴だから、原文に反論したいのなら処罰と平行しながらだな」


それのお門違いも甚だしいところだが、宿屋や飯屋の飲食関係が関わっている者等からの、税金に関する申告書だった。


その内容は単に、彼等が払い込んだ数年前の納税金が目減りした理由だったりする。そこの他の店の売り上げ云々状況で、こんな理由から落ちていると言われても困るのだが・・経費が増えて実利が減ったからだが。何の経費って話だ。


「ある程度の適宜だったら、そこまで関心を引く事も無かったと思ったりもするが・・この商会関係者のツケ買いの度が異常過ぎだ。相手方へツケを言散して広げては、外聞の歯止めも難しく誰も彼もが便乗して行った。それも帳簿として残っていなかったぞ」


その場でのツケの行為は合ったのに、請求の証拠になる帳簿に書き込みは無かった。その不審な状況を調べ出すと、一日の3食を多様な角度から誤魔化し店側から徴発しているのだ。さらに広く各店へと分散しているから、相手の負担を減らしながら時には仕出しに偽装して届けさせてもいる。


それも誤魔化す為の偽装をした脱税だから、相手を気遣うものでなく図に乗り総額は各段に増えている。分散させたから相手の損はそこまで伸びないが、被害店の被害件数は右肩上がりに成った。


数百人を超える雇用者の食費を誤魔化すなど・・所謂、その見極がお粗末で今に至っている。当初の頃は上限もここまでと取り決め、それなりに支払いをしていたのだ。


そんな負担額も段々と減らすことも無く成り、勝手に宴会などを催す者まで出てしまった。最早、これをこのままで許して置く事は出来なくなった。そんな今である。


「・・さて。一度冷静に成って状況を把握してほしい。今回のこの件で俺が出張って来ている理由もあるからな。この先をどう動いて行くのかの選択肢も含めているんだよ。周りはそれなりの情報を持っているだろうが、実はそれ程の事には発展しない」


「ん?」


「冒険者が魔物の動向の調査をしているのも、その間は街中を領を上げての警護に及んでいるのは確かだ。だが、大元は少し違う。それでこの現状の備えは違う意味も含む、いつでも出勤可能な兵を備える必要からだからな。・・そういう事だ。ここで悶着を起こす選択は、罪状以上の全てを失う事に成る」


「・・・」


「・・数年前に起こった道産に関わった者達の脱税事件を知っているか?」


「・ええ」


虫が鳴く様な返事・・虫の息かも知れない、当主の返事の声を聞かされてもそれに同情はしないが。


「細かくは省くが、資材で荷馬車を作り他の領へ丸ごと売りまくって誤魔化すとは、奴等も中々思い切っていたな。その咎で税金の追徴が行われた、それに関わった期間分の全てにだ。知られているのはそこだけだが、奴等の私財の半分も領に徴発されている。そこも一括は出来ず成り行きが疑われたから、殺さずの20年内での返済とされたな」


「・・その、恩赦が向けられるのですか?」


「・・そこはお前達しだいとしか言えない。はっきり言える事は、今はまだ摘発した状況ではない。この件を公にするのは、そこそこの動乱になり兼ねないからだ」


「相場の抑制の手の事でしょうか」


そこはそんなに難しくはない、頭のすげ替えで処理出来るんだから。あんたにはっきり告げるのは酷な話なんだよ。こっちの手の者に替えれば、遣り易さが格段に上がるから。


「この真が問われるからだ。この穀物問屋の立て直しなら、当主や幹部のすげ替えで遣り繰りが出来てしまう。だが被害の補てんをしないとなれば、納得する者がそこそこ居ないだろう。この事実で何を正すかも、嘱目の目で注釈をせがまれる事に成る。それの形が残せていないのだから、似非行為があっても見分け辛いからな」


「・・・」


「まああれだよ、ある程度の打算もあって彼等も恭順していたわけだ。そこも調べた限りでは、その被害で破産に追われた者もいないからな。これに関しては、同罪という形で口を閉ざさせるつもりだ。だからと言って、こちらの罪を帳消しには出来ないぞ。脱税となれば領の威信にも関わるから、元より厳罰と定められているのは知ってるだろ?」


「・・・解りました」


はい、中締めですかね?。ここで大事なのは、こっちの摘発でなくこいつらの自首出頭である事。その心とは殆どこちらの都合なのだが、情状酌量とかの言葉もある訳で・・裁量を決めやすくしたいからだ。


これらを正面から断罪すると、被害者は被害者顔で罪から逃れようとする。そんな輩は共犯の完全否定をはかるからな。逃がさん、今までの損害の返却はしないのだよ。


こちらが許す提案も全て含めて、この事案の猶予は残り3日であると。だからと言って3日後の行動となれば、彼等が目算した誠意などは聞く耳も持たなくなるが。今直ぐ動ける者を領公館に走らせ、セブレスの名を使って領主との面会日を設けさせた。


この行動を取らせた事で、俺自身の保身も確保される訳だ。う~ん、彼等はもう後には引けないのだよ。次に細かな必要書類を頑張って作成してもらい、当日に出向いて貰う事で良いだろう。そんな感じでここの用事は終わりとなった。





「待たせたな。そっちの店で昼食を取ろう」


店から出たら直ぐにメイサリスと合流をし、通りに面していただけの高そうな飯屋へと入った。彼女には吹きっ曝しの外で待機をして貰ったのだから、十分以上の好みの物を食べて貰いたい。


「あら、セブレスの作る料理の方が好きなのに」


「・・いいけど、実家で食べる事になるよ」


「ここで我慢するわ」


その返事に微妙な納得をする事に成る。実家に関わらずでも主夫に成りたい訳じゃないからな。だがしかし、ただ食べれるのなら我慢するとか何なの?そこに贅は尽くさなくても、これから何を食べるかを考えた時から選んでるよね?嫌いな食べ物を喜んで選ぶ奴はおかしいからな。


この飯屋も、そこそこの値段がした割りには、その味が微妙だった。こっちの世界でも、地代が乗った価格なのか?むしろ場所代なんだな。少し外れれば、外食など縁が薄く経営さえ難しいの違いない。


結局、ここの料理はコメントしずらい味であった。その物が限定されてしまっても、味やら何やらの工夫を期待する訳じゃん。


だから料理屋だって努力してますよアピールをしないと、絶対にリピーターを作れない。孤島の一軒家ならそんな事も無いだろうが、ここら辺なら最悪家飯も範疇にとして入れられる。主流がそれだけど。


滅多に出来ない外食でそんなのを出されたら、黙って死んで欲しい。陰から呪おう。賄いが苦行に。飯付き雇用はあたり前っぽい。


異世界メシがチートの定番だと誰が言ったのか・・火の火力も安定しずらいし、思った物が存在していない。その辺はそこそこ解ったよ、根野菜や葉野菜に果物らしき物は確かにあるがそれの品種改良する文化はない。


キャベツは普通に巻かないし、見た目もかなり違うがちゃんと存在した。何故?食べたらキャベツ味だったから勇者がキャベツと命名した。こっちに有るのはそんな物ばかりだが、知識の薄い勇者は知ってる物だけ命名している。


奴はたいした者じゃないと俺は思ったが、勇者の言葉は誰もが受け入れるのだとか。それに其れなりの武勲は上げている・・魔王には遠くから罵っているだけらしいが。


だが今はメシの話だ、それの我慢は生死に関わる・・心情的な所ではあるけどな。むしろ明日を生きて行く活力源じゃないか?精力の促進だけじゃないよ。9割はそうかも知れないが。


だがニンニクは認められない、気をつけないと直ぐにお腹を壊すから。胃が弱いのかな・・こっちじゃまだ食べてないから、トイレと仲良くしてないけど。


飯チート・・材料が原種ばかりなんだぜ、異世界お約束は辻褄の齟齬が許されないらしい。まあ、化学が無いのに怪しい発酵菌の種別は難しいか。添加物も無理!生卵で病気に成るから、マヨなしまったなし!


マヨが美味しいってのは、薬物依存に侵されてるだけだけどな。怪しい宗教食品ゲフンゲフン介入してはいけません。アクターに踊らされてはいけませんぜ。






領公館へと報告に向かうとする。その内容をどう受けとるかは、受け取った者の先入観で大きく変わるのだ。それならと、こちらの都合を含めれば曖昧には出来ない。商会の奴等も都合の良い事を、色々と踏まえて訴えるだろうからな。


こちらは当然聞きかじりの第三者だから、そこに盛り込める事もかなり少ない。ならば引き込み路線を用意し憂い無く仕事を熟そう。


「宿は取ってあるんだから、夜は帰るのよね?」


「ああ、知り合いには気兼ねも増えるからな。宿ならそれなりに落ち着くし」


メイサリスの気掛かりが、俺の妄想と被っているのか解らないが、実家での夜のはっちゃけ具合はそれ程にはなれなかった。彼女の今が気合の入った笑顔に見えるのは、俺が妄想に惑わされていたりするのか?


隣を歩いているメイサリスを伺うと、それこそ今更に思う事がある。いい尻してるな・・じゃねぇよ。思ったの俺だけど。


やっぱこっちの世界の人は、体の鍛え方が全然違うな。・・俺の体もある意味こっち側ではあるが、受ける印象?俺の感慨みたいなとこも混じるが命の為に加減が無い。


ジェネレーションギャップみたいな奴か?それを語れる年齢でないがな。いや、あれと言うかそれなんだが、日頃も鍛錬もするし怠らない精神力も出してくる。どんな時でも時間を作っては、ちょっとでも鍛錬をする訳さ。


何ていうの?纏まった時間が無いなら遣らないみたいな、端から知らずに見るとそれって逃げみたいに感じるじゃない?いつでも歩いてる時でも何処かを鍛えてる・・いつも鍛え続ける精神力!


俺を持ち上げながらのエロ・・してないよ。それは流石に・・俺の妄想レベルが凌駕するからな。

別に暇じゃ無かったけど、メイサリスって結構歩くの早くてさ、色々な妄想をしながらじゃないと、俺がへばりそうだったのよ。


気を紛らわせてると疲れも解らないじゃない?気づくとさらに追い込むのよ、彼女が自分の事を。なーんてな!嫌な汗でじっとりした頃、目的地の領公館に到着出来た。


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