15.性別は二つしかない。

LGBT活動家は、「性別はグラデーション」とか「性別は自分で選ぶもの」とかと寝言を口にしている。


しかし、「性別」とは肉体上の事実だ。もっと言えば、有性生殖を行なうための要素である。異なる遺伝子を交換し合い、さらに異なる遺伝子型個体を作り出すために存在する。性自認や性表現などといったものは、それに付属するものでしかない。


加えて言えば、性別は二つしか存在しない。


と、言うと「両性具有の人だっているのでは?」と思う人がいるだろう。


しかし、ミミズやカタツムリではないのだし、両性具有の人間はいない。あるのは「性分化疾患」――生物学的には男女のいずれかだが、異なる性の特徴が身体に現れる人だ。しかも、大抵の場合は外科手術によって本来の身体に合わせてしまう。


――人間の性別を決定するものは何か?


X染色体やY染色体だと思っている人も多いだろう――染色体がXXなのが女性で、XYなのが男性だと。しかし、XYの染色体を持つ女性や、XXの染色体を持つ男性もいる。(ちなみに、この事実を以って「性別は身体じゃない」と言うアホもいる。)


性別を決定するのはSRY遺伝子だ。


SRYは、Y染色体上の性(Sex)決定領域(Region)である。通常、Y染色体に存在する。染色体がXXの男性は、Y染色体が転座して――突然変異して――X染色体となったのだ。しかしSRY遺伝子の影響から逃れることはできず、男性として生まれる。


SRY遺伝子の役割は、メスになるはずだった胎児をオスに「作り替える」ことだ。


女性は生殖器と泌尿器が別々となっている。一方、男性は生殖器と泌尿器が同じ穴だ。この理由を知っている人はどれだけいるだろう?


受精から七週間目まで、全ての胎児はメスである。母親から身体が分かれるのだから当然かもしれない。ゆえに、卵管と膣の元になる「ミューラー管」と、泌尿器の元になる「ウォルフ管」の二つが作られる。何事もなければ、「ミューラー管」がそのまま女性器となり、メスはメスとして生まれる。ところが、胎児にSRY遺伝子があった場合、「ミューラー管」は閉じられてしまうのだ。


男性には陰嚢から肛門にかけて一つの筋がある。これは、ミューラー管を閉じた痕なのだ。言うなれば、全ての男性は一種のFtM(女→男)だと言える。


そうして、尿道の元となる「ウォルフ管」が前へ延びてゆき、男性器となる。


最初の生物が誕生したのは約三十六億年前だ。そこから十億年のあいだ全ての生物はメスだった――オスは存在しなかったのだ。


メスは、自分の血肉を分けて子供を産む。娘は母親そっくりだ。その娘も、成長すると娘を生む。そうして、そっくりの生命が太い綱のように続いていた。しかしこのシステムでは、母親以上に優れた娘は生まれず、急激な環境の変化にも対応できない。


なので、一部のメスたちは身体を変え、オスとなったのである。


メスからメスへの血のつながりは太いタテ糸だ。オスの役割は、この太いタテ糸から別の太いタテ糸へと遺伝子を運ぶ「使い走り」である。


無理やりメスを造り変えたがゆえに、オスの生殖器は尿道を利用する不格好な形となった。すなわち、「出来そこないのメス」がオスだ。


メスを無理やり造り替えたからこそ、オスはストレスに弱く、身体を壊しやすく、短命である。(ちなみに、あの兇暴性や攻撃性もそれゆえの欠陥ではないかと私は疑っている。)


しかし、全てのオスがメスを作り替えたものといかに言えども、男女の違いは明確だ。骨格の違いなど、いくら性別適合手術を行なおうと変わらない。ましてや、身体の中にうじゃうじゃあるSRY遺伝子やY染色体は消しようがない。


一部の虫や魚などには、環境に応じて性転換する者もいる。しかし、それは人間と違って生殖器や体の形が単純だからこそ出来ることだ。


「性別を決めるのは自己認識」という主張は、客観的な事実や、そのメカニズムを解明してきた科学者たちの努力を踏み倒すものでしかない。

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