7.試験管の中から子供は産まれない。

いつのことだったか、ツイッター上で次の意見を目にしたことがある。


「同性婚には生産性が無いなんて意見を言う議員もいたけど、精子・卵子提供などで産み育てることは出来る」


一か所だけ、この人は誤解している。


というのは、卵子提供でゲイが子供を産むことはできないのだ。試験管の中で胎児を育てる技術は存在しない。


この方法で子供を産むことができるのは異性愛カップルだけだ――第三者から提供された卵子を体外受精させ、女性パートナーに着床させるのだから(これにしろ問題はないではない)。


ゲイが子供を持つ手段として使われるのは「代理母出産」である。


すなわち、女性をお金で雇い、ゲイの精液を子宮に入れて子供を産ませる方法だ。「代理母」とは言うが、本当の母親は子供を産んだ女性である。つまり、金に飽かして女性を出産の道具にする手段だ(物扱いでなければ、人工子宮か何かのように「代理母」などと他人を呼ばない)。


妊娠するとどうなるか――多くの女性は知っているであろう。まず、腹が膨れる。身体が重たくなり、歩くことも難しくなる。微熱や倦怠感も出る。悪阻つわりも出る。このような状態が十か月以上も続く。激痛の果てに出産しても、その子供は自分の子供ではない――ゲイに買われるのだから。


他ならない――代理母出産とは人身売買なのである。


代理母出産は、我が国においても禁止はされていない。ただし、日本産婦人科学会により自主規制されている。ゆえに、このような方法で子供を持つことは普通は出来ない。しかし、そうではない国では、ゲイばかりか不妊の異性愛カップルにまで広く使われている手段だ。


察している人も多いだろうが、代理母となることが多いのは貧困層の女性である。費用の安い中興国や発展途上国では、先進国のカップルが女性を雇って代理母出産を行わせることがよくある。インドでは、代理母出産による市場は六十億ドルにも上るという。しかし、理想の子供ではないからと「返品」される事例や、詐欺に遭って報酬を受け取れない場合もある。


外国人へ向けた商業的な代理母出産を認める数少ない国がウクライナだ。その背景には、東欧の中でも貧しい国だという事情がある。新型コロナが流行する中で都市部が閉鎖され、代理母の産んだ子供が百人も国外へ「出荷」できない事態に陥ったこともある。


BBニュースでは、そんなウクライナの代理母事情が記事となっていた。


『世界の「赤ちゃんオンラインストア」 ウクライナ、代理出産が盛況』

https://www.afpbb.com/articles/-/3294362?page=2


取材を受けた女性は、約束された報酬を受け取れないことは「かなり頻繁に」起こると語る。女性の多くは仲介人によって雇われているのだが、ピンパネされることが多いのだ。


報酬は、妊娠中は四百ドル(四万二千円)を毎月受け取り、出産後は一万五千ドル(百六十万円)を一括して受け取る。つまり、日本円にして二百万円程度か。


記事中で取材を受けた別の女性はこう語った。


「もし普通の仕事があるなら、もちろん代理出産はしない」


また、精子提供であれ代理母出産であれ、生物学的な親との縁が切れ、子供に傷を負わせることとなるのは言うまでもない。

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