倉持氏はラッキースケベでいつも金欠

@konnto

第1話 倉持徹の一日

倉持徹 27歳 


全身から清潔感が漂う好青年である。


目は二重でキリっとしていて、鼻筋がすっと通っている。彫が深いわけではないが、顔のパーツはしっかりしている。しかし、どこかが極端に強調されているというわけではなく、均整がとれている。いわゆる美形である。


身長も178cmとほどほどに高く、手足も長い。スーツが似合う体型である。


中学生のころから筋トレは欠かしたことがない。筋肉は全身にまんべんなくついている。


過度に筋肉質というわけではない。




学生時代からスポーツも勉強も人並み以上にできた。


トップというわけではないが、確実に上位に入る力を持っていた。




大学では経済学を学び、現在は証券会社に勤めている。


知識も深く、コミュニケーション能力も高いため、顧客の中でもいわゆるVIPと呼ばれる人の対応を任されている。




フィクションの世界の住人である。


しかし、そんな彼には、大きな悩みがあった。


彼は慢性的に金欠なのである。




それゆえ、彼は東京都内の証券会社に勤めながらも、シェアハウスに住まざるを得なかった。


だが、その選択が彼の金欠を加速させた。




いったいなぜ、彼は金欠なのだろうか?




彼のスタンダードな一日を見ながら、理由を探していこう。




朝5時   起床   


朝5時5分  洗顔、歯磨きなど身支度をする


朝5時10分 ランニングウェアに着替えて、近くの公園へ行く この時コーヒーメーカーのスイッチを入れる


朝5時25分 ランニング仲間のジョディと挨拶を交わす ジョディはよく胸チラをしてしまう。


この日は乳輪が見えてしまったので、彼は500円を支払った。


朝5時35分 家に帰ると共用のシャワールームに行く そこで、同居人の由紀と鉢合わせる。


全裸を見てしまったので、彼は2,000円を支払った。


朝5時45分 部屋に戻り、コーヒーを入れる 多めに沸かしたコーヒーはステンレスボトルに入れる。


朝5時50分 コーヒーを飲みながら、日経新聞(デジタル版)に目を通す


朝6時30分 出発


朝6時32分 シェアハウスを出るまでに、同居人の宇美とぶつかり、下着に顔を突っ込んでしまう。


彼は1,000円を支払った。


朝7時   通勤電車で女性に胸を押し付けられる。 彼は100円を支払った。


朝7時25分 電車から降りて、会社に行くまでに、2名のパンチラを目撃する。彼はスカートがめくれていることを指摘しながら、100円を支払った。


朝7時40分 会社到着 8時の始業時間までに、準備を整える。


朝8時   始業


朝10時  経理部の赤井が書類を持ってくる。 赤井が転ぶ。 彼が心配して、赤いを見るとスカートがめくれてパンモロ状態になっている。彼は300円支払った。


朝11時  仕事に没頭する。 新人への指導を行う。 巨乳新人の青野のボタンが外れて、さらにキャミソールもめくれ下着があらわになる。 彼は300円支払った。


昼12時  昼食 お弁当を買いに行く お弁当屋の桃井がお辞儀した瞬間、貧乳ゆえに乳首が見えてしまう。彼はお弁当代に加えて1,000円支払った。


昼1時  午後の業務開始 赤井が書類を持ってくる際に転ぶ。胸がぶつかる。彼は100円を支払った


昼2時  青野の下着を見てしまう。 彼は300円支払った。


昼3時  おやつ大好き黒田がお菓子を配って回る際に、彼にぶつかる。 そのまま、倒れて黒田の下着に手が入ってしまう。 彼は1,000円支払った。


夕方5時 終業 よほどの急な案件がなければ、定時に退社する。


帰宅までに、3人のパンチラを目撃し、それぞれに100円支払った。


夕方6時 近隣の公園に筋トレに向かう。 筋トレをしていると、ジョディと同居人の桜に出会う。


ジョディの筋トレのサポートをする。 乳輪を見てしまう。彼は1000円支払った。


夜7時 シャワーを浴びているところに、由紀が入ってくる。相殺分を加味して1,000円支払った。


夜8時 夕食を取りながら部屋で会社情報の収集や書類整理をしていると、部屋に下着がひらひらと入ってくる。上の階の桜と由紀の物であった。返却時に100円添える。


夜9時 就寝 仰向けで寝る。


夜10時 物音で目が覚める。 天井が崩れる。 真上に住んでいる桜が全裸で落ちてくる。


受け止めようとした際に顔面騎乗の形になってしまう。彼は意識がもうろうとし、気絶する寸前に5,000円支払った。






以上が彼の一日である。


早寝早起き、適度な運動、非常に健康的である。


また遊びをするわけでもなく、食事も節約を心がけている。




なぜ彼は、金欠なのだろうか?




それは、ひとえにラッキースケベが起こるたびに対価を支払わないとおかしくなってしまう病にかかっているためだ。


この日は13,300円支払っている。




彼には血のつながっていない二人の姉と一人の妹がいた。


小学生時代、彼は家でよくラッキースケベにあっていた。


例)トイレ鉢合わせ、着替え乱入、スカート顔ツッコミ、全裸カットイン、お風呂遭遇 等々


その時、一人の姉が言った…


「エッチなことしたら罰金ね」


それ以降、彼は事あるごとには金を支払った。


パブロフの犬状態である。


ついには、ラッキースケベに対して、対価を支払わないと発狂してしまうようになってしまったのだ。




では、ラッキースケベが起きないようにすればよい話…ではなかった。


当然、彼のラッキースケベ体質は家でも学校でも問題になった。


だが、どれだけ彼や周りの女の子が気を付けても、なんかしらラッキースケベが発生してしまうのだ。


一度彼は、座敷牢にこもり、座禅を組んだことがある。


しかし、30分後には、地面から温泉が湧き、その勢いで、吹き飛ばされた彼は、入浴中の姉のところに飛び込んでしまった。


また、どこか遠くへ行こうと、北海道に行こうとすると、ヒッチハイクで停まるのは女性ばかりで、もれなくパイチラに遭遇した。


目をつむれば、ボディタッチ。手を縛っても、顔面騎乗。どのような対策をしても彼へのラッキースケベが止まることはなかった。




そんなこんなで、誰もが彼のラッキースケベの抑止をあきらめた。


ぶっちゃけると、クラスの女子も姉妹も、彼へのラッキースケベを嫌がっていなかった。


彼を気遣い、わざとラッキースケベることはなかったが、その気がなくてもラッキースケベは起こってしまっていた。


もはや皆、彼の不幸なラッキースケベを受け入れることにしたのだ。





倉持徹は童貞である。

童貞とは女性経験がない男性の事を指す。

ここでいう女性経験は本番行為を示す。


ちなみにファーストキスもまだである。

ただし、ク○ニとス○タは69回ほど経験している。

しかしながら、いまだ彼の陰茎は女性に侵入したことはない。


ひとえに、彼の自制心の高さと、冷静な判断力、最悪の事態は避ける超危機回避能力によるものである。


今回は彼の童貞保守についての話になる。



いつものように、ランニングに向かう倉持。

ジョディに声をかける。


倉持「おはよう ジョディ」

ジョディ「トオル おはよう」

倉持「お父さんは元気?」

ジョディ「元気だよ。 けど、仕事が忙しいってさ。 でも、トオルと会いたがってたよ」

倉持「そうか… じゃあ、良い話があるって伝えといてもらえる?」

ジョディ「OK 朝から仕事熱心ね」


会話が弾む倉持とジョディ とそこにトラックが突っ込んでくる。

これがラブコメでなければ大参事である。

車道側にいた倉持はトラックの突進をいち早く察知した。

とっさにジョディを抱え、茂みに飛び込む。瞬間、自分が先に茂みに飛び込むように体をひねる。


ジョディ「おー 朝から、大変…ありがとうトオル」

倉持「もがもが」


倉持の顔にはジョディの豊満なバストが直接当たっており、倉持はジョディの右の乳頭を口に含む形となっている。

倉持が身体をひねった瞬間、倉持には二つの危機が訪れる。

一つは口づけ

もう一つは、茂みに入った瞬間、破れてモロだしになった自分の陰茎がジョディに侵入してしまうことである。


そこで、倉持は落下の最中、ジョディの肩を20㎝ほど持ち上げ、ジョディと体が重ならないようにしたのである。

しかし、ジョディの豊満なバストは落下の衝撃でポロリとあらわになり、倉持の顔面に直撃したのであった。


ジョディは財界の令嬢であった。

結婚する気もないのに、接吻…ましてや婚前交渉をしてしまえば、その男はむごたらしい目にあう。

倉持は当然そのことを理解していた。

それゆえの対応で会った。


倉持はショルダーバッグに入れていた予備の下着とウェアを身に着けると、ジョディについた枝葉を丁寧に落とし、3000円支払ってからその場を後にした。


その後、彼はシャワーを浴びる。

彼の背中をよくよく見ると、無数の傷跡がある。

これは彼が女性を守ってきた証であり、傷一つ一つが彼の誠実さの証である。


倉持「うっ…あー…古傷か…」


この古傷は13年前についたものである。

当時15歳の倉持が部屋でくつろいでいると、台所から声がした。

料理は兄弟で持ち回りでしていた。

倉持は週に3日後は姉二人と妹が1日ずつ料理をしていた。

その日は金曜日。


金曜日は妹がカレーを作る日であった。


妹には甘い倉持は、悲鳴を聞きつけて台所に向かった。

妹の千夏がへたり込みながら天井を指さしている。

天井には包丁が突き刺さっている。

その先端には悪名高い黒い虫が蠢いている。

包丁は先日倉持が研いだばかりであり、切れ味抜群である。

それ故か、黒い虫はまだ自分が貫かれたと認識していない様子である。


倉持が天井の包丁を抜くために、調理スペースに向かう。

調理スペースに入った瞬間、倉持の足が摩擦を失う。


倉持「!」

千夏「あ! さっきオリーブオイルをぶちまけたんだった」

倉持(おいおい、オリーブオイルは高いんだぜ…よしてくれよ)


倉持はバランスを崩し千夏に向かって倒れる。


千夏の服はめくれ、倉持の顔は千夏の発展途上の胸に突っ込む。


千夏「あ…ん…ん」


その時倉持は危機を感じた。

自分たちに向かって落下してくるものを察知したのだ。

とっさに、倉持は千夏をその全身で包み込むように抱きしめる。


千夏「ああ…」


それを見ていた黒い虫は、自分の状況を理解した。

ゴキブリ「そうか…俺の身体は何かに貫かれたのか…もはやこの命長くはもつまい…」

ゴキブリ「このまま落下したならば、おそらくこの何かは下にいるでかいものも貫くだろう」

ゴキブリ「俺の知ったことではない…しかし、何だこの胸に去来する思いは…」

ゴキブリ「このまま…下にいるでかいものの上に落ちてはいけない…」

ゴキブリ「このでかいものはやがて大きなことを成す…そんな気がする」

ゴキブリ「…俺の命…今振り絞るとき」


黒い虫が羽を広げる。

身体の中心を貫かれているため、羽は無事広がった。


それにより、包丁の軌道は20㎝ほどそれた。

そして、倉持の右わき腹をかすめて、床に突き刺さった。

この黒い虫の機転がなければ、包丁は倉持の臓器深くに突き刺さっていたであろう。


倉持はオリーブオイルにまみれて、最後を迎えようとしている黒い虫に何かを感じた。

倉持は黒い虫を自分の父が眠る墓近くの山林に葬ると、静かに礼をした。

妹には50円支払った。



シャワー中の倉持はハッと我に返る。


倉持(来週…実家に帰るかな…たまには風呂で足を伸ばしたいし)


ノズルをキュッとしめる。

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