第3話 桜の下での君との出逢い・2
「あ、美沙!おっはよ!」
背後から弾むような明るい声がした。よく知るその声の主は、中学の時からの大親友、前田真白のもの。
「おはよう、真白。朝から元気だね。」
「なんだかわくわくしちゃってさー!」
真白は、普段は背中まで伸びた長い黒髪を高い位置でポニーテールにしていたけど、今日はバレッタで止めたハーフアップスタイル。
色白でスタイルのいい真白は茶色い大きな瞳に笑うと涙袋ができる愛らしい顔をしていて、大人っぽい。しかも運動も勉強もできて中学の時からよくモテていた。(本人は興味無いみたいだけど…)
2人揃って校門をくぐると、その瞬間に優しい風が吹いて辺りに桜の花びらが舞った。
周囲に目を向ければ、遠くの方で校庭に植えられたたくさんの桜の枝がそよそよと揺れている。
「美沙、どこ行くの?クラス表見に行こうよ」
桜の花びらに誘われるように人気のない校庭に足を運ぶ。
「ごめん、先行ってて」
「えっ?ちょっと!」
「すぐ追いかけるからー!」
次第に早足になる私。背後から真白の呆れた声が聞こえた。
「わあ、すっごい…」
目の前に広がるピンクの景色。
フェンスに沿ってずらりと並ぶ桜の木々はどれも見頃を迎えている。
風が吹く度に花びらが舞って、幻想的な雰囲気に思わず見惚れてしまった。
こんな綺麗な景色、いくら見たって飽きないよ。
そうだ!
記念に写真撮ろう!
カバンの中に手を入れてスマホを探す。
ついこの前買ってもらったスマホはまだ使いこなせてなくてどうしても動きがたどたどしい。
「あ、あれ?どうやって撮るんだっけ…」
このボタンかな?そう思って指を伸ばした時だった。
後ろからひとの気配がして、思わずハッとする。
恐る恐る後ろを振り返ったらそこにはだるそうな目をした男子高校生がいた。
どこかで見たような…
「って、もしかして朝の…?!」
「朝のってなんだよ。まさか隠し撮りとかしようとしてないよな?」
え、さっきの動作にどこに隠し撮りと思わせることが…?
「え、隠し撮り…?」
「さっき撮ろうとしてたの、あれ内カメラになってた。ストーカーとか勘弁しろよな」
「えーっと、内カメになってたみたいで誤解させて申し訳ないんですが…私はストーカーじゃないです…偶然あなたがいただけで…」
「よくいるんだよな、こういう言い訳するやつ」
「え、あの、だから…」
恐る恐る顔を上げる。
ちゃんと見てなかったから気づかなかったけど、とってもイケメンだ。小顔で顔も整っている上にスタイルも良い。
そりゃ、こんなカッコよかったら絶対モテるだろうな…
でも目の前の高身長イケメンは完璧に私が悪いと決めつけるような顔に鋭い視線を向けられていて思わず肩が震える。
「えっと、だから…誤解だって……」
「お前みたいなやつ、1番嫌い」
どうしてそこまで言われないといけないのか。
「ほんとに違うんだけど!私は桜を撮ろうとしただけだし、自分かっこいいからってストーカーされてるなんて自惚れないでよ!」
一通り言い切った…
「じゃあ」
それだけ言うと私は踵を返してさっき来た道を引き返した。
それにしても、ストーカーだなんて冗談じゃないよ。
一方的に決めつけやがって…
かっこいいけど、性格最悪じゃん。
後で真白に即報告だよ!
知らない、知らないあんなやつ。
そう言い聞かせてクラス表の人だかりの中にいる真白を探した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます