ブレイド・メイド・ワールド ~元一般人の俺と神剣とかわいい女の子~
カイナベル
第一章 新たな力
プロローグ
――――――世界は武器が創り出した――――――
昔々、この大地よりも遠く遠く、ずっと遠くの場所からこの大地に十柱の神様が送られてきました。その十柱の神様はこの世界を管理するとてもえらい神様から私たちの住む大地を管理するように命令されてやってきたといいます。その神様たちは人間にはとても手に入れることのできない強大な力を持っており、それまで天災や狂暴な怪物に苦しめられてきた人々をいとも容易く救って見せました。これには人々も大喜び。自分たちのことを守り続けてくれる救世主が現れたと両手を上げて喜びあいました。
しかし、彼らは次第に管理するという言葉を忘れてしまったかのように自分勝手な行動をとり始めるようになりました。ある一柱は他の神々に戦いを挑みその戦いの余波で天災を引き起こし。ある一柱は婚約者の男性を好みだからという理由で連れ去り自分の伴侶とし飽きたという理由で突然放り出し。ある一柱は人々を裏から操作し最も力のあった村を内輪もめで滅ぼし。比較的善性の高い神々も彼らの横暴な振る舞いを治めようとしますが、逆に被害は広がっていく一方。全く止めることができません。
とうとう堪忍袋の緒が切れた善性の神々は彼らに対し宣戦布告をすると、自分の信仰者を率いて横暴な振る舞いをする神々に攻め込み始めました。それを黙ってみているはずもない横暴側の神々も自分の信仰者を率いて彼らに対抗します。そして争い始めた神々はその強大な力を振るい大地を砕き、天を割き、海を吹き飛ばしながら戦い続けます。次第に味方であったはずの神々同士の争いすら始まり、最終的には十柱による大地を丸ごと破壊せんばかりの大戦争へと発展しました。
これに対して怒り狂ったのは自分の上で戦争をされている大地でした。いきなりやってきて勝手に自分たちがこの大地を管理するといった挙句に、その張本人同士で荒らし始めるとは一体何事か。荒らされている本人からすればたまったものではない。腸が煮えくり返るほど怒り狂うのも当然の事です。
彼らの横暴な振る舞いに怒り狂った大地は自分の持てる力を使い、今までの動物とは比較にならない生物、通称『魔獣』を作り出し、それに人間たちを襲わせ始めました。神々の力が強大なのは人間たちの信仰があってこそ。人間がいなくなれば神々の力は弱まり、この星から去っていくだろうという目論見でした。
そしてその目論見はあながち間違いでもありませんでした。人々が魔獣に襲われ数を減らしていくとそれに伴って神々も力を落としていきます。それでも神々は戦争をやめることはありません。もともと強い力を持つ神々は魔獣を持てる神性で強化すると自分の手駒、『神獣』としさらに戦いの熱を上げていきます。こうして十一勢力による戦争は止まることなく百年以上も続きました。
十柱が大戦争を繰り広げている一方。彼らの振る舞いに頭を悩ませている存在がもう一人存在していました。それは十柱の父となる存在です。星々を管理するといって自信満々に飛び出していった自分の子がその土地で大規模な戦争をしていると知ると彼は頭を抱えました。改めて観察しても彼らの振る舞いには目に余るものがあり彼らの引き戻し教育し直そうかとも思いましたが、その一方で父としてその地の管理をしてほしいという親心もありました。
さて、どうしようかと考えた末、父は十柱を見張ってもらうための神々をさらに送ることで安定させようと考え、自分が信を置く神々を選び始めました。選ばれた神々は四柱。癖のある性格をしている柱もいるが先に送られた十柱よりも位の高い神々です。きっと彼らであれば十柱を抑えてくれると期待する父は、四柱を了承のもと十柱のもとへ送り出しました。
場所は戻って十柱のいる大地。戦争が始まって二百年弱が経った頃。十柱の神々はこの戦いに疲れ切ってしまっていました。終わることのない戦い、無限とも思えるほどに襲い掛かってくる魔獣、戦いで命を落とし減っていく人々。終わることのない、しかし終わらせ方の分からない戦争に十柱は疲労しきってしまっていました。この戦いを終わらせようと決断した十柱は終結し、どう終わらせるかの話し合いを始めました。しかし、我の強い彼らはそんな状況でも自分の主張を曲げることがありません。話し合いはなかなか終わることなく進みさらに二年の月日が過ぎました。
その時、父によって送られた四柱が到着し、彼らの荒らした大地を目撃することとなりました。その惨状を見て四柱の中でも特に年長の神は十柱に向かってピシャリと言い放ちます。
―――貴様らは子供か?―――
たった一言、悪い振る舞いを見せた子供を嗜めるように吐かれたこの言葉がよほど効いたのか神々は反論することもできずに、ただ俯くだけでした。二百年以上の戦争の疲れも相まってもうやめたいと考えていた彼らは話し合いの意志を見せ始めました。ですが、話し合いが始まっても我の強い彼らはあーだこーだと自分の意見を押し付けあいます。また争いに反転するのではないかと思ったその時、とある一柱がポツリと提案しました。
―――我々が大地を管理するのではなく、人間に管理を任せ我々はその手助けをすることにするのはどうだろうか―――
それを聞いた神々は否定するでもなく、その提案の議論を始めました。その提案には賛成半分、反対半分といった反論を見せる神々。冷静に、客観的に判断して自分たちが管理しようとすればまた争いが起こることは必至。しかし、自分たちが管理しないのであれば自分たちが来た意味がないという声もあり、十柱の議論はいい意味で白熱していきます。あーだこーだと議論を積み重ねていった神々は全員が納得できるような結論に至ります。
彼らは自分たちの体を武器に変え、それを人間に使ってもらうことで力を振るうことができるようにするという方針に固まりました。こうした理由は、自分で活動し身勝手な振る舞いで抜け駆けすることを防ぐこと、人間たちに管理を任せるのであれば自分たちは道具として形を変えるべきだということなどでした。
そして彼らの中で一つの約束事が決められました。それは『人間たちの行動を止めるようなことをしないこと。』これから世界を人間に任せるのであればどんなやり方であっても人間のやり方を否定せず、その人物を気に入ったのであれば、例外なく力を貸し人間の意志に身を任せることに決めたのでした。人間が争いを好むのであれば武器として武力を貸し、平和を望むのであれば神々として発展のための知識を貸す。これは世界を人間に任せた最たる証拠であった。
何はともあれ解決法を導き出した神々は、自分たちの体を武器に変えると各々が認めた人間の手に向かい、その手で振るわれることを選びました。あとからやってきた四柱も彼らの決定に沿う形で人型ではない何らかの形に変化すると世界のあちこちで彼らのお目付け役を始めました。
こうして十柱同士の戦争は終結し、人類は発展の道を選ぶことになります。しかし、唯一取り残された大地の怒りは収まるところを知りません。十柱が争いをやめても魔獣は留まることを知らず襲い続け、人類は発展の道と同時に戦いの道も歩むこととなりました。
魔獣の脅威にさらされる人類。そんな中で光輝いたのは神々に認められたその手に神の武器、通称『神装』を握る者たちでした。神の武器で魔獣を薙ぎ払い神々から与えられた知識を使い、人類の発展の一助となる。彼らは善悪に関わらず人々を越えた力を発揮したため、彼らは等しく『英雄』と呼ばれるようになりました。
こうして発展をつづけた人類であったが、ここで一人の人間が声を上げる。
―――――世界を発展させてきたのは人間だ。神々の功績ではない!―――――
最初は戯言と思われていた主張であったが、次第にその主張を信じる者が増え始め一大宗教として神々を殺そうとする過激派へと拡大していきました。こうして人類の争いの歴史に新たな一ページが刻まれることとなりました。
しかし、それでも神装使いたちは挫けることなく、ある者は人々を救うために力を振るい、ある者は世界を自らのものにしようと悪辣の限りを尽くしました。
こうして発展を遂げた世界の中心で、神装使いは今日も力を振るい人々のために戦うのでした。
「さて、現代の神装使いはどのように力を振るうのでしょう?」
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