幕引き

辺りの景色も壊れ、真っ白な空間が広がっている。スミレの作り上げた世界が崩れ、星は元の形を取り戻そうとしている。

ゲンタはあたりを見回して不安に思っていると、目の前にいきなり人影が現れた。


「ゲンタよ、よくやった」


自称神様は、ゲンタの目の前に現れるなり彼を誉める。


「この世界の偽りを見抜きそれを打ち破るとは、ワシが見込んだだけのことはあるのぉ」


「また調子の良い事ばかり言って。てか、神様がいるってことはここは天国なのか?」


ゲンタは周りを見回しながら訪ねる。


「ここは虚無の空間じゃ、スミレによって作られた世界が壊れ、今本来のあるべき姿へと世界は創り返されておる」


「そうなのか、スミレはまったくの無から世界を作り出した訳じゃなかったんだな」


「そうじゃ、前からあったものを使って新たな舞台を作成するのが【大衆演劇】じゃ。だから世界の人も消えるわけではない、本来の姿へと戻るだけじゃ」


「なるほど、でもキキョウは・・・」


「彼女はスミレの力によって生み出された存在じゃ、その力が破られたら彼女はもう・・・」


俺は、神様の言葉で改めてスミレの深い悲しみを痛感する。そんなスミレが、何か思い立ったようにこちらを向いた。


「また守れなかった。キキョウを二度も殺してしまった」


スミレは憎しみの籠った目でこちらを睨みつけてくる。


「待つんじゃスミレ!いままでのキキョウは幻じゃ、お主が作り出した夢なんじゃよ」


神様の言葉も今のスミレには届かない。


「爺さん今のスミレに何言っても無駄だ。さて、最後まで付き合ってやるから、少し頭を冷やせ」


ゲンタはそう言ってスミレの前に立ちはだかる。


「待てゲンタ!は危険じゃ!」


ゲンタの後ろで神様が叫ぶが、お構いなしにゲンタは突っ込んでいく。ゲンタは先ほどの戦いがスミレの実力のすべてだと過信していた、相手が言霊を失ったことで更に油断もしていた。

ゲンタはスミレを押さえつけようと腕を掴む、しかしスミレは、逆の手でゲンタの腕を掴むとそのまま力任せに地面に叩きつけた。


「グハッ!!!な、どこにそんな力が!?」


ゲンタは先ほどまでと違うスミレの力に驚く。


「これが本来の私の力です」


スミレはゲンタを見下ろしながら答える。そのまま何もない空間から細身の剣を取り出す。


「なんだ?言霊の力か?」


「インベントリも知らないのか?まぁこの世界では、あなたは初心者ですからね」


スミレは余裕の顔で笑いかける。


「ゲンタよ!今はスミレの呪縛から溶けた世界、ワシら神が作ったもともとあった世界じゃ。そこでは魔物を倒せばレベルが上がり、装備は各々のインベントリに格納できる!お主も使えるはずじゃ!」


神様の言葉にゲンタも空間に手を伸ばし想像する、何もない空間に確かに何かが存在していた。

その何かを掴み引っ張り出す。


「!?木の棒?」


インベントリには木の棒とどこかで見たお札が入っていた。ゲンタはお札をズボンに入れ、木の棒を構える。


「ふっ、初心者装備の木の棒だね。ちなみに私のレベルは80オーバー、元の世界では戦士として力を重点的に上げていました」


そう言ってスミレは剣を振るう、その衝撃でゲンタは離れていても剣戟を受ける。


「スミレはこの世界では勇者じゃった、魔王すら倒し膨大な力を譲り受けそれを基にして自分の望む言霊の世界を作り出したんじゃ」


神様は世界の変化を必死にゲンタに告げる。


「神よ、この後あなたの作った世界もバラバラに壊してやる。せいぜい指をくわえて見ていることだ」


スミレは神様に向けて冷たく言い放つ、彼はまるで全てのものを憎んでいるようだった。


「ゲンタ、頼む世界を救ってくれ!ワシはそちらの世界に手出し出来んのじゃ。そろそろ世界が生まれ変わる、ワシが居られるのもここまでじゃ」


神様の言葉を待たずして周りの景色は一遍していく、空は黒い雲に覆われ地面は腐敗し木々も枯れている。


「ここは?魔王城の名残か、懐かしいな」


スミレは呟く。

ゲンタはこの絶望的な状況で考えを巡らせる。今や力の差は歴然、仲間もいない。


「さぁゲンタ、いきなりクライマックスだ。ラストバトルを始めようか」


勇者スミレは圧倒的な威圧を纏いながらゲンタに告げてくる。


「ハッ!!【追撃乱舞】!」


スミレの剣舞は冴えわたり、四方八方から剣戟が襲い掛かる。

ゲンタは防戦一方で、かわす余裕すらなかった。


「レベル1にしては頑丈だな。やはり転生者は普通の人と体の作りが違うのか?それとも久しぶりで私の腕が鈍ったのかな?」


スミレは不思議そうに思いながら余裕の仕草で呟く。


【ステータス】


スミレが呟くと、何もない空間に目を向ける。


「うん、能力値は魔王を倒した時のままだな。新しい世界を作るために言霊を全力で使ってるから魔力はほとんど残ってないか、」


ゲンタは不思議そうにその光景を眺める。


「これか?自分の能力値を見れるんだよ。ステータスって唱えてみなよ」


ゲンタは半信半疑になりながらも呟いた。


【ステータス】


-----------------------------------------------------

ゲンタ・シライ レベル ◆4Λ

職業 主夫


体力 200/720 

魔力 15/15

経験値 320/1200


ステータスポイント 50


力 50 ▲

素早さ 30 ▲

知力 5 ▲

運 20 ▲


スキルポイント 10


スキル ▼

-----------------------------------------------------


ゲンタの前に数値が表示される。あまりの情報量に呆然とする。

しかし、ここでもやっぱり主夫なんだな。


「ふふ、驚いたかい?それが君の能力を現す数値だ。レベル1だから数値はどれも10か20か、そのくらいだろう?ちなみに私の力は800、防御力も500を超えている。これだけで力の差がどれほどあるかわかるだろ?」


スミレのいう事が本当ならば二人の差は数十倍にもなり、逆立ちしても勝てない差だ。


「本来なら魔物を倒してレベルを上げ、能力値を割り振ってスキルを習得する、そうしてやっとたどり着ける領域だ。もちろん君にそんな時間は与えないよ。このあと世界を壊さないといけないからね。君にばかり構ってられないだ」


スミレの話しでゲンタはふと疑問に思う、まずは自分のレベルだ、これは文字化けしていて何故か読み取れない、しかし経験値が中途半端に入っている。これはすでに魔物との戦闘経験をこなしていることを意味しているのではないか。

ゲンタは試しに力の横にある▲に触れてみる。



-----------------------------------------------------

ステータスポイント 49


力 51 ▲

-----------------------------------------------------


力の数値が上がっている、どうやらこのステータスポイントが割り振れる能力値の数みたいだ。

すでにゲンタのなかで一つの仮説が出来上がっていた。


(以前行った地下遺跡、そこはこの世界の遺跡だったのか。あの時もバグった声が聞こえて自分の身体能力が向上するのを感じた)


ゲンタは一心不乱にステータス画面から、自分の能力値を高めていく。


「はは、いくら操作しようとレベルを上げて、ステータスポイントを稼がないと能力値は上がらないよ。そのレベルを上げる方法も、敵である私を倒すしかない、まさに八方塞がりだね」


ゲンタは少しでも時間を稼ぐためその場から逃げ出す。


「悪いが、力だけでなく素早さも800超えてるんでね」


逃げ出したゲンタの前にスミレが現れる。そのまま剣を振り下ろし、ゲンタの左腕を難なく切り落とす。


「ぐわぁぁ、」


腕から血が噴き出し、あまりの激痛に声を上げてその場にうずくまる。


「軽く振っただけなのに簡単に千切れ飛んだな、人の体とは案外脆いんだな」


剣に着いた血を払いながら、スミレはそっけなく答える。


「次は苦しまぬように首をはねて、それで終わりだ。下手に動くなよ」


スミレは、痛みで這いつくばるゲンタの首筋を見定めて告げる。ゆっくりと剣を掲げ、そのまま垂直に打ち下ろす。


「うぉぉぉぉ!!」


ゲンタの命を刈り取ろうとしているその刹那、スミレは横からの衝撃に押され吹き飛ばされる。

スミレは態勢を崩され、振り下ろした剣は無残にもゲンタをかすめて地面へと刺さる。


「貴様らいつの間に!!」


スミレの前には、三人がゲンタを守るように取り囲んでいた。


「お父さん!!今治すわ、頑張って」


--------------------【金蘭之契】--------------------


セナはゲンタの千切れた腕を繋ぎ戻すために言霊を発動する。

柔らかい光と共にゲンタの腕は繋ぎ止められる。


「ありがとうセナ」


「ごめんなさい、呪文が使えないから傷を完全に治すことが出来なくて」


「くっついただけで十分さ」


セナも呪文の力を失い、残されたのは言霊の力だけだった。


「ちっ!!まったく力が入らねぇ、剣も消えちまって攻めることも守ることも満足にできねぇな」


スミレに体当たりをしたコウタが体を起こしながら呟く。


「コウタ!言霊も失ったお前があんまり無茶するんじゃないよ!!」


マリがコウタに注意を促す。


「そうか、娘の言霊で家族を繋ぎ止めていたか。それでいち早くここに来れた訳か、」


スミレが体を起こしながら四人を睨みつける。


「何人レベル1が集まった所で事態は変わらないのにな、わざわざ死にに来たようなもんだぞ?」


「そんなのやってみなくちゃわからねぇ!」


スミレの威圧に気圧されながらも、コウタは果敢にも突っ込んでいく。

先ほどとは違い今度はしっかりコウタの攻撃をスミレは受け流すと、剣の背でコウタの体を数か所打ち付けた。

コウタは血を吐きながらその場へ倒れる。


「骨の数本は折れたか?切り捨てても娘の言霊ですぐ繋がれてしまうからな。なぶり殺してやるよ。唯一私に対抗出来たお前も、言霊が使えなくなっていたのは幸いだったな、これで恐れるものもなくなったよ」


コウタの言霊【唯我独尊】、単騎ならば無類の強さを誇り、レベル差で上回るスミレすら圧倒した可能性は高かった。しかし、孤独を捨て、仲間を思い、家族を愛することを選んだコウタには以前の想いは失われ必然的に言霊も失われていた。


「さぁ、今度は家族みんなで地獄へ行くといい」


【乱れ突き】!!


目にも止まらぬ速さの突きがマリへと襲い掛かる。

彼女はそれを軽快なステップでかわしていく。

スミレとの力の差は歴然としているため攻撃は無意味と悟り、マリから仕掛けることはなく逃げの一手に徹している。


「レベル1でこれだけ動けるのはさすがですね。しかし体力もそう無尽蔵ではないでしょ?避けてるだけでは勝てませんよ」


「今うちの人が攻撃の準備してるから待ちなさいよ。だから、大人しくしてくれてると有難いんだけど?」


「そんなブラフは通じませんよ。まったく、魔力さえ十分にあれば一気に四人とも片付けてやれるのに、こんなチンケな技じゃ埒があきませんね」


マリは何か準備をしているゲンタを察しつつ、時間稼ぎを行っていた。


「お父さん何か策でもあるの?」


倒れたコウタを介抱しながらセナが父に語りかける。


「いまそれを探しているところだ、もう少し時間をくれ!」


ゲンタは自分のステータスを睨みながら答える。

すでにステータスポイントは振り終わったがそれでも力は100、まだまだスミレの足元にも及ばない。

そこで今度は、スキルについて確認していた。


---------------------------------------------------

スキルポイント 10


スキル▼

・追撃 1 (すべての攻撃に補正が付く)

・三段突き 1 (三連続の刺突)

・乱れ突き 3 (複数回刺突を行う、回数は素早さに依存する)

・急所突き 3 (敵の急所を攻撃し倍のダメージを与える)

---------------------------------------------------


スキルはどうやらポイントで覚えるようだ。

ゲンタのポイントは10、大技は覚えられないし恐らく魔力が少なくて使えないだろう。

この中でスミレを倒せる技を慎重に見極めていく。


「・・うっ!!」


「お兄ちゃん大丈夫!?」


そんな中、先ほど倒させたコウタが目を覚ます。


「あぁ、このくらいなんでもない。親父、やつを倒せそうか?」


コウタは現状を確認しゲンタに問いかける。


「可能性はあるが、問題は攻撃が当たるかだな。上手く注意を逸らせれば、」


ゲンタはスキルを確認しプランを練っていた。


「なら、のんびり寝てられないな」


コウタはゆっくりと起き上がりスミレに立ち向かおうとする。


「お兄ちゃん無理よ!右手もそれ動かないんでしょ!?」


コウタの力なく垂れ下がった腕をみてセナは叫ぶ。


「大丈夫、大丈夫だセナ。俺は親父を信じてる、もちろんお前もお袋もな」


コウタは笑ってセナに話しかける。


「体痛いから一回だけしか無理だぞ? 外すんじゃねぇぞ」


コウタはゲンタに話しかけ、そのままスミレと戦うマリの下へと急いだ。


「セナ、お前ももう少し頑張ってくれ」


セナも強がっていたが、先の戦争時に無理をしていたため言霊の力もセナの体力も限界が近づいていた。


「みんなに守られてばかりじゃないんだから」


セナの笑顔にゲンタはやる気を奮い立たせる。


「よし!いくぞ!!」


二人もコウタに続いて駆け出した。


「ワラワラと群がってきて鬱陶しい!!仕方ない、これで終わりだ!【狂化】!!」


スキルを発動したスミレの筋肉が膨張し、その力は赤いオーラとなって可視化する。


「自分の力を数倍にして手あたり次第敵をせん滅する!いままでの温い攻撃とはわけが違うぞ!」


そう言って駆けだしたスミレのスピードは先ほどまでと桁違いで、何とかかわせていたマリも彼を見失った。


「!!一体どこに!?きゃぁ!!」


一瞬でマリの背後に移動したスミレはそのまま拳を叩きこむ。


「コレデ、オワリダ!!」


野性的な感情を露わにしたスミレは更に追撃をかける。


--------------------【家内安全】--------------------


!!!ガキン!!!


寸でのところでゲンタの言霊が間に合い、マリをスミレの攻撃から救う。


「マリ!コウタ!奴の注意を惹いてくれ!セナは足止めを!!」


「「「わかった」」」


三人はそれぞれの役割を理解して動いていく。

マリは言霊により、有り余る才能を用いてスミレの注意を惹く、

コウタはマリが捌ききれない攻撃を身をもって受ける、その際にゲンタの言霊でサポートが入る。

セナは相手の体制を崩すべく、言霊で文字通りの足止めを行っていた。


ゲンタは皆の動きを確認して手に入れたばかりのスキルを使っていく。握りしめた木の棒に、ゲンタのスキルが宿って光り輝く。


スキル【背水の陣】!!

このスキルは防御力が著しく落ちるがその分攻撃力が二倍にも跳ね上がる。

これで攻撃力は200、


【急所突き】

急所に当たると攻撃力は倍になる、これで攻撃力は400。


ゲンタは皆が作ってくれた隙をつき、スミレの急所に攻撃を仕掛ける。

スミレは油断していたのか、スキルを使用するゲンタを見て驚愕する。


「な、なんでお前がスキルを!?」


【三段突き】!!!


一回、二回とスミレの体にゲンタの攻撃が当たっていく。

ここまででスミレの防御力を上回った、どうやらスミレの使用した【狂化】は攻撃力と素早さを一時的に上げる代わりに防御力を犠牲にするようだ。止めの三回目の攻撃がスミレに当たる、スミレもただでは倒されずに意地でカウンターを仕掛けてくる。


「・・・・・」


「・・・・・」


二人の攻撃は同時に相手に届き、お互いの胸を突く。そして、皆が呆然と見守るなか言葉もなく倒れていく。


「お父さん!!!」


セナはゲンタに駆け寄り急いで体を起こす。

マリとコウタも父親の近くに行きその顔を覗き込む。


「・・・グッ!!ガハッ!!無駄だ、防御を捨てた状態で【狂化】での攻撃を受けたんだ、無事でいるわけがない」


スミレはいち早く意識を取り戻したがすでに動く気配はない、彼もまたすべてを出し尽くしていた。ゲンタの武器がもう少しまともな物であったら、スミレも命はなかったであろう。


「そ、そんな・・・」


セナは動かぬ父を前に泣き崩れる、マリもコウタも言葉を発することができなかった。

そんなゲンタのズボンから一枚のお守りが零れ落ちる、お守りはそのまま砂となって姿を消した。


「・・んっ、なんだ?みんなどうしたんだ?」


その時、力尽きたはずのゲンタが目を覚ます。


「お父さん!!」「親父!!」


奇跡を前にセナとコウタは驚き、マリは黙って涙を浮かべる。


「そ、そんな!どうして!?・・・まさかあれは『神の御守り』?一度だけ身代わりとなるアイテムか!?そんなものどうして?」


スミレは驚いて告げる。


「そうか、前遺跡で爺さんがくれたやつだったか、こりゃちゃんと崇めないと罰が当たるな」


ゲンタは笑いながら話す。

ゲンタはその後コウタに抱えられて立ち上がると、ゆっくりスミレに近づく。


「決着だな。親父どうするんだ?まさかこのまま見過ごすわけじゃないだろ?」


コウタは父に向って問いかける。

ゲンタはしばらく悲しい目をスミレに向けていた。


「その前に確認したいことがある。セナ!」


ゲンタはセナを近くに呼び寄せて尋ねる。


「お前の言霊で繋がりのある人物を探して欲しい、できるか?」


「思いが強ければできると思うけど・・・」


「なら大丈夫だ、彼ら親子の絆はピカイチだからな」


「まさか!?」


ゲンタとセナの会話から何かを察してスミレは声を上げる。


「この世界にいるキキョウを探してくれ!」


「なにを言い出すのかと思えば・・・」


スミレは呆れた声でゲンタを見上げる。


「この世界に転生されている可能性もあるだろ?」


ゲンタは真面目に答える。その間もセナは集中して親子の糸を手繰り寄せる。


「・・・見えたわ」


スミレはセナの言葉に驚き、言葉の続きを黙って見守る。


「今はまだか細いけど、キキョウちゃんはこの世界に息づいてるわ。恐らく生まれかわって、まだ赤ちゃんか、もしくはこれから生まれるかだと思うけど。私の力ではここまでが限界」


セナは力を使い果たしその場に座り込んでしまった。

マリがすぐさま駆け寄り我が子を介抱する。


「・・・そうか、キキョウはこの世界にいるのか、」


スミレはそう呟くと、立ち上がり拙い足取りで歩き出した。


「どこに行くんだ?」


返事はわかりつつも、ゲンタは問いかける。


「もちろん我が子を探しにさ、また生きる意味が見つかった。我が子にまた会えるまで見逃してもらえないだろうか?」


ゲンタは周りで佇む家族の顔を見る、それぞれが返事をすることなくとも顔を見れば気持ちは伺い知れた。


「今度顔見せるときは二人で来いよ」


スミレは小さく頭を下げると、ゆっくりと去って行った。


「さぁ、俺たちも家に帰ろう!もうクタクタだ」


「この世界に帰る家があればな、」


「みんなが集まればそこが私たちの家よ」


「そうだよお兄ちゃん!」


四人は笑って歩き出した。

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