魔王城にて

「こんにちわーゲンタさん、いますかにゃー?」


玄関先で猫の鳴き声が響いている、いち早く聞きつけてセナが玄関を開ける。


「バンズさんいらっしゃい!!」


セナがニコニコしてバンズを抱え上げる。


「にゃにゃ!セナさん降ろしてくださいにゃ」


バンズの抵抗も虚しく、セナに抱きかかえられたままバンズは居間へと招かれていく。


「バンズいらっしゃい、今日はどうした?まだ王様から正式な会談の日取りは来てないだろ?」


俺はバンズに尋ねる。あの一件の後、俺はスミスに事の次第を話した。スミスも出来れば和平を望んでいるらしく前向きに検討してくれたが、魔王軍と同じで王城内でも様々な意見があり、いまだ話し合いは進んでいなかった。


「今回はゲンタさんをお誘いに来ましたにゃ。一緒に魔王城へ行きましょうにゃ」


バンズの提案に俺は飲んでいたお茶を吹き出す。

魔王城なんて適地のど真ん中じゃないか、そんな危険地帯に一介の主夫が行って無事で済むわけない。


「魔王城って、友達の家に遊びに行くのとは訳が違うんだぞ」


俺はバンズに言う。


「そこは私が責任を持ってお守りしますにゃ」


バンズは胸を叩きながら宣言する。

いや、お前オーガ一匹にすら手も足も出なかっただろ。

俺は不安な目でバンズを見つめる。


「今回は魔王様自らの要望にゃ、こちらから私が使者としてきているので、王都側からも誰かお招きしたいという意向にゃ」


バンズは答える。


「話しはわかったが、それで俺なんかが行っていいのか?もっと国の重鎮に任せるべきだと思うが」


俺は不安になって応える。


「すぐにお返事貰えずとも大丈夫ですにゃ、前向きに検討してくださいにゃ」


バンズはそう言って、この話しはここまでとなった。

その後はバンズの手土産の魚を俺が料理して、夜は豪華な会食が始まった。

コウタは忙しく各地を飛び回っているため欠席となったが、代わりに遊びに来たカシロフを加えての宴会となった。


「旨い酒が手に入ったからたまには来てみれば、まさか肴も用意してあるとは話しが早い」


カシロフは豪華な夕食を眺めて上機嫌であった。


「運のいい奴め、まぁせっかくの料理だ、余らせるのも勿体ない食べていけよ」


俺はカシロフを家に上げ、バンズを紹介する。


「君が噂の猫又か、なかなか弁が立つようじゃないか。和平の件、期待しているよ」


カシロフもスミスから色々と聞かされているようだ、やはり役職的に戦争は回避したいらしい。


「はいにゃ、一緒に頑張りましょうにゃ」


バンズも笑顔で答える。


「バンズさんもカシロフ様も、すっかり打ち解けたみたいで良かったわ」


料理を運びながらセナが言う。


「しかし、王国側の使者にゲンちゃんをねぇ。意外といい着眼点かもしれないな」


カシロフはグラスを煽りながら言う。


「なんだ?他人事だと思って」


俺はカシロフに言う。


「いや、下手に国の重鎮を向かわすと強硬派に狙われる可能性が高いんだよ。奴らにとっては国の不祥事は、戦争のいい餌だからな」


「確かにそんなお偉いさんが暗殺でもされたら国として黙っておくわけにはいかないな」


俺はカシロフの言葉に納得する。


「その点、ゲンちゃんなら狙われる価値もないからな。それこそ一般人として紛れ込める」


「魔王城の城下町には一般の人間もたくさんいるにゃ。まだ対立意識が高くないから商人や観光客として紛れるならいい機会にゃ」


今度はバンズがカシロフの意見に同調する。


「これは行くしかないわね、お父さん国の運命がかかってるわ頑張って」


セナまで背中を押すようなことを言いだす。


「ここで話しがまとまってもスミスが何と言うかだろ?」


俺は最後の希望を国王に託していた。


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「ゲンタよ行ってくれるか?」


いつものギルドのカウンターで、ツナギ姿のスミスは俺に頭を下げていた。


「この件については大ごとには出来ん、それこそお主の命に係わってくるかもしれんからのぉ」


「スミスよ、みなまで言うな」


俺はスミスの言葉を遮る。スミスもカシロフたちと同意見だった。


「しかし、敵地に単身ともなるとやっぱり不安だよな」


マレットは心配して答える。

友よ、お前だけは俺の味方だ。

俺は優しいマレットの言葉に感動する。


「まぁ、ゲンちゃんなら大丈夫だろ。毎度毎度何とかなってるから」


マレットはあっという間に掌を返してくる。

気づけばすっかり俺は魔王城への使者の件を断りづらくなっていた。


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光に照らせれる巨大なシルエット、城下の街は色とりどりのネオンが輝く。

日も落ちても暗闇に染まることはなく、街は一段と活気づいている。


「どこのテーマパークだ?」


俺はこの夢の国について尋ねた。


「眠らない街、魔王街へようこそにゃ」


足元でバンズが胸を張って歓迎してくれる。


「すごいな王都と同じ世界の街とは思えない。なんでこんなに発展してるんだ?」


魔王の街は夜でも明かるく、道もしっかり舗装されている。

上下水道も完備されているのか道は綺麗で匂いもしない。


「商工会のみなさんが頑張ってくれたからにゃ。もともとはここも荒れ果てた小屋と薄気味悪い城があっただけでしたにゃ。それが魔王様が改革を進めた結果、ここまで発展しましたにゃ」


いや、王都と雲泥の差だな。魔王、かなり優秀だぞ。


「この技術革新を提供頂くだけでも、十分和平を結ぶ価値はあるな」


俺は、驚いて答えた。


「さて、今日はもう遅いにゃ、適当に食事して街の宿屋で休むにゃ」


バンズが提案してくる。俺は適当に頷きながら、あたりの店を物色していた。

武器屋に道具屋、どれも一級品の品ぞろえだ。

いい街にはいい職人が集まるということか。

しばらく歩くとバンズが一軒の店を指さしてきた。


「ここにゃ、旨い魚と旨い酒があるにゃ」


バンズが飛び跳ねながら告げる。

これだけいい店が揃う中で一押しということは、期待が持てそうだ。

俺とバンズは胸を躍らせながら店の扉を潜った。


店の中は広く、すでに大勢にお客さんで込み合っていた。

空いている席を探していると、猫の耳をしたウエイトレスが声をかけてきた。


「あら?バンズじゃない。二人かしら?ちょっと待ってて席作るから」


ウエイレスはバンズの知り合いらしく、手際よくテーブルを片付けて席を設けてくれた。


「注文はいつものかしら?そちらのお兄さんはどうする?」


ウエイトレスはせわしなく聞いてくる。


「バンズと同じものでいいよ」


俺は適当に注文する、初めての店だしバンズにお任せが間違いないだろう。

その後テーブルにはビールが並び、俺たちは乾杯して飲み始める。

しばらくすると、サラダや刺身、フライした魚などがテーブルを彩る。


「うん、どれも旨いな!バンズが勧めるだけある」


俺は上機嫌で箸を進めた。

しばらく食事と会話を楽しんでいると、店の奥が賑やかになってきた。


「ん?なんか催し物でもあるのか」


俺はバンズに尋ねる。


「ここはたまに、ショーも楽しめるにゃ。何が始まるかは日によって違うにゃ」


バンズは魚を頬張りながら言う。

辺りがほんのり暗くなり、奥のステージが照らされるとそこに帽子を被りギターらしき楽器を奏でる吟遊詩人が現れた。

その音色は優しく、歌声は透き通ってみなの注目を集める。

まるで上品なワインのように心を溶かす音色だ。

俺も静かに聞き入っていた。

歌が終わるとお客たちは一斉に拍手を送り、俺も同じく絶賛していた。


「いやぁ、なかなかいい歌だ。いいものを見させてもらったよ」


俺が感動していると、吟遊詩人は帽子を脱いでお辞儀をしていた。

改めてよく見ると、そこには見知った顔があった。


「あれはスミレじゃないか?」


「ゲンタさん、あの方をご存じでしたかにゃ?」


俺の言葉にバンズが反応する。

前に街道で出会った子連れの吟遊詩人、確かにこの歌声なら食うには困らなそうだ。

俺はスミレに手を振ると、彼も気づいたようで手を上げて挨拶し返してくれた。

スミレは適当に集まった客をあしらうと、俺の方まで近づいてくる。


「これはこれは、お久しぶりですね」


俺たちのテーブルまできてスミレが声をかける。

俺はスミレに席を勧めてウエイトレスにビールを注文する。


「まさかこんなところで会うとはな、思いがけずあんたの歌声が聴けて感動したよ」


俺はスミレに正直な感想を言う。


「ありがとうございます。ゲンタさん今日はお一人で?」


「あぁ、ちょっと知り合いと観光がてらね。なぁバンズ」


俺は咄嗟に話しを濁してバンズに振る、どこで誰が聴いてるかわからない、使者の話しはなるべく内密にとのことだ。

バンズは話しを振られて適当にごまかしている。


「ここも気に入っていたんですが、これからの状勢で満足に歌を歌うことも出来なくなるかもしれません。私も心残りですが、こうして多くの方に聴いて貰えるように頑張っています」


スミレは周りを見渡して呟く。


「なるべくなら平和的に解決して欲しいよな。二国が手を組めば双方ともに利はあると思うんだが」


俺は思っていることを口にする。


「ゲンタさんは戦争反対派ですか?」


スミレは聞いてくる。


「あぁ、争いなんて後々禍根を残すだけだからな」


「もし戦いが避けられないとなったらどうしますか?」


スミレはなおも聞いてくる。


「そうだな、俺には子供たちみたいに戦う力はない。せいぜい自分の家を守るくらいしか出来ないよ」


スミレの言葉に今一度これからについて考えさせられた。

新たに運ばれてきたビールを、スミレと一緒に難しい顔をしながら飲み干すのであった。


「うぅ、飲みすぎたー」


俺は唸る頭を抱えながら布団から身を起こす。

昨日はスミレとバンズの三人で遅くまで飲み明かしていた。そのツケが今朝襲ってきた。


「おはようございますにゃ、よく眠れましたかにゃ?」


バンズが元気よく挨拶してくる。

昨日俺以上に飲んでた割には顔色一つ変わらず元気だ。化け物だなコイツは。


「おはようバンズ、いや、二日酔いで頭が割れそうだ」


俺はバンズから水を貰いながら答える。


「それは大変ですにゃ、では魔王城に行く前に薬でも調達しに行きますにゃ」


ありがたいバンズの言葉に俺は賛成の意を表して、朝食もそこそこに宿を出発した。


「さて、この書類で最後ですにゃ」


バンズが魔王城手前の詰所で入城の書類を書いている。

やはりすんなりと部外者が入れるはずもなく、こうして面倒な手続きを行っていた。

時間はすでに昼を回っていた、薬を飲みゆっくり時間をかけたお陰で、俺の二日酔いは段々と良くなっていった。


「ふぅ、やっと入れるのか、これじゃあ魔王様に会うには日が暮れちまうな」


俺は笑いながら言った。

その言葉に詰所の兵士は怖い目で睨みつけてくる。

まるで不審者を見張るような目線だ、かなり怖い。


「大丈夫ですよゲンタさん、城に入れれば後は面倒な手続きはありませんにゃ」


バンズが明るく答える。

その後書類に不備がないことが認められ、俺たちは晴れて魔王城に入ることを許されたのだった。


「魔王城ってくらいだからもっと兵士が多いのかと思ったが、そうでもないな」


城の中は多くの人が働いていたが、ほとんどが文官といった感じだった。

眼鏡をかけたトカゲ人間もいれば、大きな鳥のような魔物は一生懸命書類に目を通して判を押していた。

スーツを着ていれば日本の役所と遜色ない光景だった。


「魔王城は政治の中枢ですからにゃ、緊急時でもないかぎり武官は離れで訓練していますにゃ」


冷静に考えればそうなんだろうが、なんだかファンタジー感が薄まっている。


「魔王様はどうやら会議中見たいにゃ、もうしばらくしたら終わるから少し待ってて欲しいにゃ」


そういってバンズは手頃な部屋を用意してくれた、そこで手際よくお茶を入れ差し出してくれる。

ついに魔王と対面とあって緊張してきた。

喉の渇きを抑えるために俺はお茶を一気に飲み干すのだった。


「そういえば魔王ってどんな人なんだ?国の様子を見るとかなりやり手なように思えるが」


俺はバンズに質問する。


「はいにゃ。魔王様は一代でこの国をまとめ上げ、国をここまで成長させた立役者にゃ。いままで力で支配していた体制を見直し、内政にまで力を入れた手腕はさすがにゃ。素質を見抜く目も確かで、優秀な側近を何人も採用しているにゃ」


バンズは目を輝かせながら言う。

そこまで優秀だと王国なんて簡単に滅ぼされそうだな。

これは是非とも和平を実現して貰わなければ。


「バンズさん、魔王様がお呼びですよ」


しばらくすると部屋をノックする音がして、ドアの奥から我々を呼ぶ声がした。

俺はグラスを置いて椅子から立ち上がるとバンズに目で合図をする。


「わかりましたにゃ、いま行きますにゃ」


バンスは扉の向こうに答えて、俺たちは部屋を後にするのだった。

いよいよか、緊張してきた。


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「平くん、何やってるの?」


豪華な魔王の部屋、いくつもの彫刻が置かれ立派な玉座にが正面に置かれている。

そこに魔王は鎮座しているはず、だが目の前には見知った顔があった。

平 ジン、妻の会社の後輩であり俺も何度か顔を合わせたことがある。

彼が玉座に座っているということは。


「お久しぶりですゲンタさん、えっと、僕が魔王のジン・タイラーです」


開いた口が塞がらなかった、どんな強面の魔物が出てくるかと思ったらまさかの平くんとは、幼い顔立ちで優しい目元、とてもやり手のイメージには程遠かった。

俺の記憶では、平くんの仕事ぶりはお世辞にも優秀といい難く、いつも先輩の妻がフォローしていたと記憶している。


「いろいろ混乱しているけど、平くんも神様に転生されてここにきたの?」


「はい、僕もこの世界に呼ばれてきました。魔王の素質を持って」


魔王って素質なのと思ったが、コウタの勇者も似たようなものだった。

しかし魔王が平くんなら話しは早い。


「さっそく本題だけど、聞いているとは思うけど今回は王国の使者としてきたんだ。そう和平の使者としてね。ここは争いは止めて平和的に話し合いの場を持たないかい?」


俺は気楽に提案する、もともと気の弱い性格の平くんだしあっさり提案に乗ってくれるはずだ。


「ゲンタさん、せっかく来ていただいたのにすいません。、その提案には賛同できないんですよ」


平くんは見せたことのない真剣な眼差しで見つめ返していた。


「戦争だよ?平和だった国で育ったから実感は薄いかもしれないけど、人がたくさん死んじゃうんだよ。せっかく仲良くなった仲間がみんないなくなるかもしれないんだよ?」


俺は平くんに訴えかけた。

もし転生などせずに日本に留まっていたら戦争なんて、たぶん経験することはないだろう。

人の死なんて直接かかわることも少なく、病気か事故かで亡くなるのがほとんどだろう。


「それもわかっています。日本での平和な暮らしがここでも実現出来ればとは思ってはいます。でもダメなんですよ。やはりゲンタさんには、この気持ちはわかりませんか?」


まるで戦うことが使命であるかのごとく、魔王の意思は揺らぐことがなかった。


「戦いは避けられないのか、それを言うために俺をここに呼んだのか?そういえば俺をこの世界に呼んだのも平くんなんだろ?」


俺は平くんに尋ねる。


「はい、ゲンタさんを転生させたのは僕の言霊によるものです」


「いったいその言霊って?」


「秘密にする必要もありませんね。僕の言霊は【桃李満門】です。配下に優秀な人材を集めることができる力です。もっとも僕自身には恩恵がないので人任せな言霊ではあるんですが」


平くんは笑いながら答える。


「なるほど、その言霊で優秀な俺を呼んだわけだな」


俺は納得して答える。


「そんなわけないでしょ。自惚れてるんじゃないわよ」


まんざらでもない表情の俺に向かって、懐かしいキツイ声が飛んでくる。

後ろを振り向くと入ってきたドアの前に見知った女性が立っていた。平くんを見た時から、なんとなく彼女の存在を予想してはいた。


「いつもいつも適当なこと言って、その根拠のない自信はどこからくるのかしら。魔王様が呼んだのは私よ」


言葉はキツイが顔は穏やかで、優しい目をしている。

俺はつられて笑顔を向けていた。


「マリ」


俺は懐かしい名を口にする。


「久しぶりねゲンタ」


そこに居たのは妻の白井マリだった。


「そうです、僕は部下として優秀な先輩に手伝って欲しかったんです。そしていま、先輩は参謀のマリー・クロスとして協力頂いています」


平くんが答える。


「黒須って旧姓かよ!俺は別れたつもりはないぞ!」


俺はマリに突っ込む。


「職場では旧姓で通していたからその名残よ。それで、魔王様の言霊は優秀な人材を集めるだけでなく、配下には最大限のパフォーマンスをも提供してくれるのよ。アンタは私のパフォーマンスを引き出すために、で呼ばれたの。そのお陰で、貴方だけ本来の転生者とは違って素質を得られなかった訳だけど」


つまり、ヘッドハンティングされたのはマリで、俺は会社のあてがわれた社宅に呼ばれた家族か。しかも正式に呼ばれた訳じゃないから本来貰える素質も貰えなかったなんて悲しすぎる。

さっきまではしゃいでいた頭は、急激に冷え込んでいった。


「なるほどね、平くんが俺をこの世界に呼んだって意味がわかったよ。俺だけ素質がないのも納得した」


俺は肩を落としながら言った。


「そんなゲンタさん、落ち込まないで下さい」


「なにを言っても無駄よ、だってその通りなんだから。でも、そのお陰で世界を救うことができるかもしれない」


平くんがフォローするも、マリはスバっと正論を吐いてくる。


「身も蓋もないな、しかも世界を救うなら一介の主夫じゃなくて勇者の役目だろ」


俺はふてくされてマリに告げる。



マリはハッキリと告げる。


「つまり、コウタが平くんを殺すのか?」


俺は恐る恐る質問する。


「えぇ、そういうシナリオよ」


「シナリオって、平くんなにか悪いことしたの?そんなシナリオ書き換えちゃえばいいじゃないか」


俺は至極当然といった感じでマリに尋ねる。


「王国と魔王の戦いは避けられない、そして物語は魔王の死をもって終わる。私たちにシナリオを変えることは出来ないわ」


マリは悲しい目をして誰にともなく語りかける、玉座に腰かけた平くんもなんとも言えない表情になる。


「なに言ってるんだ?そんなこと俺がさせないよ!平くんもマリも死なせない!」


俺は悲しげな二人の表情を見て自然と叫んでいた。

俺の言葉を聞いて二人は顔を見合わせ、そして笑っていた。


「ゲンタならそう言ってくれると思ったわ、それじゃあ最悪のシナリオにならないように宜しくね」


マリはまるで他人事のように言ってくる。


「いや、よろしくって、」


「もう時間はないわ、物語はすでに佳境に差し掛かってる」


俺の言葉を遮ってマリは告げてくるのだった。

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