第3話

 ピンポ〜ン!


 掃除機をかけていたら、来客用のインターホンが鳴った。

 注文しておいた荷物が届いたらしい。


 配送屋さんから小さなダンボール箱を受け取った俺は、文具箱からカッターナイフを取り出して、さっそく開封してみる。


 ちなみに彼女は透明なガラス容器に体をすっぽり収めている。

 お気に入りのニャンコ動画を真似したやつで、首から上を出しながら、かわいいでしょう、私、といいたげな視線を送ってくる。


 はいはい、かわいいよ。

 君がネット通販で注文したガラス容器も抜群に似合っている。

 な〜んて褒め言葉は死んでも口にしないけれども……。


 俺には積りに積もった恨みがある。

 そして今日、リベンジの機会がやってきた。


 俺が取り寄せたのは猫用天然マタタビ。

 一瞬、その植物の正体が分からなかった彼女だが、猫の本能には逆らえないらしく、目をうっとりさせて鼻をピクピクさせる。


 あのライオンですら猫化させるマタタビなのだ。

 欲しくて欲しくてたまらないだろう。


「にゃ〜〜〜! にゃっ! にゃっ! にゃっ!」


 俺は彼女の頭上目がけてマタタビを放り投げた。

 すると、彼女は黒ひげ危機一髪みたいにガラス容器からジャンプ。

 三日月のカーブを描いてきれいな着地を決めた。


「にゃっ⁉︎ にゃっ⁉︎ にゃっ⁉︎ う〜〜〜にゃ〜〜〜!」


 このニャンコ語を日本語に翻訳するなら、


『なんて上質なマタタビなんだ! これはネット通販の一番高いやつだ! 頭ではダメだと分かっているのに、体が! 体が! 体が全然いうことを聞かない! 脳汁がドバドバあふれてくるぅ〜!』


 といった具合だろう。


 くっくっくっ。

 興奮して夜も寝られまい。


「ほれほれ、イタズラのお返しだ」


 彼女がマタタビの誘惑に勝てないのを良いことに、俺は首根っこを引っ張ったり、肉球をプニプニして遊びまくった。

 猫より人間の方が賢いのである。

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