1人声劇「離婚届け」

桜庭

1人声劇・・・「離婚届け」

N「一日目、1枚目」


    テーブルの上に一枚が僕の前に出される。


「テーブルの上にある紙は・・・・あれ?これって離婚届け・・・だよね?」

「・・・・」

「何?、・・・離婚したいの?、・・・な、なんで?、・・・理由は?」

「・・・・」

「あのさ、黙ってじゃあ、分かんねよ。今日いきなりだし、俺の気持ちの整理が出来てないから・・・」

     離婚届け、やぶる。


N「二日目。2枚目」


    テーブルの上に2枚目の離婚届け。


「また離婚届けあるけど・・・。あのさ、理由を教えてくれないかな?理由なしでは書けないよね」

「・・・・」

「もしかして、自分の胸に聞けってこと。それってさ、みんな言うけどさ、意外に自分では分からないもんだよ。自分ではいいと思う事が他人は違ったりするんだね。それじゃあ・・・これも・・・」

    離婚届け、やぶる。


N「三日目、3枚目」


    テーブルの上に3枚目の離婚届け。


「おいおい、またかよ。3枚目だよ。君も頑張るね。仏の顔も三度までと言うけど。とにかく、離婚したい理由を聞かせてくれ!・・・原因は俺?・・・それとも好きな男が出来た?」

「・・・・」

「あ、指を指した?という事は、原因は俺か!何が原因だったんだろう?

うーん・・・うーん・・・ダメだ、考えても分からん!このことに関して何も言わないのか?言いたくないのか?それとも理由も聞かずに黙って書いてくれってことか?・・・うーん・・・それじゃあ、これも・・・」

    離婚届け、やぶる。


N「同じことが毎日、離婚届けを出しては、破る、出しては、破るの繰り返し。

  そして、十日目、10枚目」


     テーブルの上には10枚目の離婚届け。


「テーブルの上に離婚届けがあるのは、今日で10枚目。という事は10日間、よく覚えてるよね俺って・・・。もしかして、こんなに離婚届け破るのは世界中で俺だけじゃないかな?自慢にもならねえよ。もうそろそろ理由を言ってもいいんじゃない?」

「・・・・」

「あ、そう・・・。何も言わずか・・・・。こまったね。あ、そうだ、俺、明日から地方LOCがあるから5日間帰ってこないから。何枚も破るのは無駄になるし、

君が理由を言うか、俺が黙って書くか?外の空気当たってくるから・・・」


N「そして、1時間がたった」


「さて、気持ちも改まったので。もう一度聞くよ、離婚する理由は?」

「・・・・」

「・・・そうか、言わないか・・・。おれもここまで頑張ったが君の粘りには負けたよ。理由も聞かずに書くよ。ここに名前を書くのか・・・よし、ハンコはここに押すのか・・・。さーて、これで完成だ!あ、なんか喜んでいる俺が悲しい。

これを提出すれば離婚成立。君も納得だよね。

え、すぐに出ていかない?お金ないから、半年は居させてくれって?

なんだよ、それって!もしかして、離婚届け出すの半年後?

え、頷いている!・・・・この10日間は何だったんだ」

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1人声劇「離婚届け」 桜庭 @sakuraba0807

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