新九郎に恋して!

星都ハナス

新九郎 エリート幕府官僚家の出身だった。

 あなたは戦国武将の中で誰が一番好きですか? 私は新九郎だよ。誰やねんそれ? って思ったそこのあなた。伊勢宗瑞いせそうずいならご存知かしら? ん? 伊勢エビの雑炊。ふふ、そんなオヤジギャグはいらないのよ。


 じゃ、北条早雲ほうじょうそううんなら分かるかしら? 聞いた事あるでしょ。でも鎌倉の北条氏とは関係なくってよ。早雲の嫡男こども氏綱より相模国小田原城を本拠として、五代にわたって関八州に威勢を振るった戦国大名家なの。


 学校ではきっと後北条氏とか、小田原北条氏って教えられたかもね。知らんけど。だから、早雲は自分で自分のこと、北条早雲って名乗った事はないらしいわ。その生涯も色んな説があってミステリアスな男なの。


 いいの、いいの。私の中ではジジイ(言い方)になってもだから。そんな新九郎さまの魅力を語りたいの。いや語らせて。今の日本にいたらいい仕事すると思うの。上から目線。じゃ、生い立ちから始めるわ。


 新九郎は一介の素浪人から下剋上で戦国大名になったっていう逸話があるの。簡単に言うと職なし侍がやんちゃして偉くなったって事ね。うん、それもカッコいいかも。そんな新九郎でも惚れちゃったと思うの。


 けど、ウィ、ワキ、、ウキ、違う! ウィキペディアをちゃんと読むとね、歴史研究家の説明があって、お父さんは伊勢盛定、お母さんは京都伊勢氏当主で政所執事の伊勢貞国の娘らしいのよ。


 政所執事? 読めるかしら? 。なんかエッチな響きよね。その政所ってほら、平安時代に設けられた職制で、幕府の財政や領地に関する訴訟をつかさどる職のことなの。執事は当初二階堂氏や京極氏が任じられていたんだけど、1379年(天授五年/康暦元年)伊勢貞継が任命されて以後は伊勢氏の世襲となったってわけ。


 じゃあ、盛定もりさだパパはいつの時代、誰が将軍の時に政所執事だったと思う?


 室町幕府第六代将軍足利義教と七代将軍足利義政に仕えたの。もう一度言うね、あしかがさん所のお坊ちゃん、よしのり君とよしまさ君。


 つまりは、新九郎さまは幕府のエリート官僚の家の子って事ね。新九郎っていうのは通称名。ちゃんと盛時もりときっていう名前もあるのよ。伊勢新九郎盛時。ミドルネームってやつよね。おしゃれだわ。


 そうなの。だから新九郎さま、実は生まれは備中、今の岡山県なの。

 就職で京に出てきて、主君は足利義政、義尚よしひさ義材よしき義澄よしずみなんだけど、義澄さんの名前はあとで出るから覚えておいてね。


 『応仁の乱』って覚えてるかしら? 1467年の出来事よ。伊勢貞親が、ああ貞親さだちかって新九郎のパパ盛定の義理兄で執事だった人なんだけど、彼は次期将軍候補の義視よしみにあらぬ疑いをかけて討伐し将軍世継ぎ争いを終わらせようとしたの。簡単に言うと暗殺。乱というくらいだからグチャグチャよね。将軍家から言ったら謀反、伊勢家からしたら迷惑。


 1467年。って覚えたように、まだ十才そこそこの新九郎も巻き込まれていったのよ。お兄ちゃんは戦国時代特有の人質として取られてしまうし。西軍と東軍の対立。守護大名の争い。裏切り。跡目争い。


 応仁の乱については字数が足りなくなるので、端折ります。あしからず。

 東軍総大将の細川勝元、西軍総大将の山名宗全が亡くなって、二代目同士が和睦して騒乱終息。よかったよかった。

 

 備中国、高越城たかこしじょうで応仁の乱終息の知らせを聞いた新九郎は十七才になっていました。

 

 元服の儀を終えた新九郎、この時盛時という名前に決まり、新九郎も京に行って、政所執事の仕事をパパに教わる事になりました。実質、新九郎が嫡男扱い。


 世襲制なので、新九郎もエリート幕臣で平穏な生活が送れると思うわよね。 


 そうは問屋が卸しません。


 な、なんとお姉ちゃんの嫁ぎ先である駿河の守護大名今川義忠が戦で死にます。応仁の乱の火がくすぶっていたのです。全国各地ではちょろちょろと戦になっていました。


 はい、今川家でも家督争いです。新九郎のお姉ちゃん、北川殿は自分の子供龍王丸を跡目を継がせたいってなります。まだ五才の龍王丸りゅうおうまるに対抗して小鹿範満おしかのりみつは扇谷上杉家を味方につけて当主の座を狙っています。争いを仕掛けてくる中、お姉ちゃんは政所執事のパパに助けを求めます。

 

 今川家の分裂、もしかしたらお姉ちゃんと甥っ子が殺されるかもしれません。

そんな時、前将軍足利義政はパパの話を聞き、名代として新九郎を駿河の国に向かわせます。伊勢家、今川義忠の嫡男の味方についてくれたのです。


 御隠居となった前将軍義政の御内書を見た小鹿は戦いをしない事、龍王丸が元服するまで後見人になるという条件で和睦しました。


 新九郎はまだ二十歳そこそこで仲介役を見事に果たし、その功績として幕府の申次衆もうしつぎしゅうとなりました。申次とは取次のことで,将軍に将士を取り次ぐことを任とする職です。将軍足利義尚にパパと仕えることになりました。


 それからさらに十年後、正室を迎えた新九郎さまは、三十一才です。


 龍王丸が元服したはずなのに、なかなか家督代行の小鹿は当主の座を龍王丸に渡そうとしません。権力を持った者は手放しません、いつの世も。


 新九郎は、幕府のお墨付きを貰い、また駿河の国に入ります。今川氏親と名乗っている甥っ子、龍王丸と十年ぶりの再会です。


 話し合いでは埒があかないと思った新九郎は戦を仕掛けることにしました。作戦は夜襲です。今川館を取り戻すのです。


 京の都では幕臣の新九郎。戦よ、血を見るの。斬られた生首を見るのよ。大丈夫かしら。ガンバレー!


 

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