最終話 俺が全てを救う!

——

 「そして俺が全てを救う!」

 「っ……!?」


 邪悪の世界は現れたアーマードシャークルスの形をした何かに驚愕の目を向ける


 「何故……何故お前が存在している!? 全て無となったはずだ!」

 「全ての始まりは無だった」


 鎧は彼方まで続く無を指さす


 「無から創造が産まれ、創造から時と空間と破壊が産まれた……」


 鎧は1歩、また1歩と前に進むその度に足元から世界を産み出す


 「俺の中にも無が存在した……その無から全てが……世界が産まれた……」

 「はぁっ……何言っ……」

 「ゼァ……!」

 「がっ……!?」


 鎧の拳が邪悪の世界の顔を歪める


 「アーマード……それが俺だ……!」


 

 ——アーマード世界を包む鎧——



 「っ!?」


 アーマードを中心に世界が産まれていく


 「っ……ぐぞぎっ……ゼルガァァァァァァァア!」


 邪悪の世界は激昂してアーマードに殴りかかる


 「ゼァァァ!」

 「ごばぃっ!?」


 邪悪の世界の拳はアーマードの放った拳に砕き飛ばされ、そこからまた世界が産まれる


 「やばぎっ……っどこかに逃げっ……」


 衝撃に吹き飛ばされた邪悪の世界は逃げ出そうと背を向ける


 「俺の牙からは逃げられない!」



 『ホライド』



 「っ!?」

 「紺碧の翼で空を舞う……!」


 逃げる邪悪の世界は背後から身体を青と銀に輝かせ紺碧の翼を背から生やしたアーマードが迫っている事に気が付く


 「っ……ホライドォォォオ!」


 邪悪の世界は振り返り、アーマードに向かい時の力を放つ……が……


 「ドラスアロー光線!」


 アーマードの時が止まる事は無く、アーマードの両腕の間から放たれた青く輝く矢の光線が邪悪の世界の胸を切り裂きその中から世界を吹き出させる


 「ゼラァァッ……!」


 邪悪の世界は両腕に力を集中させる


 「ゼラガァァァァァァァァァァァァ!」


 邪悪の世界は両拳を無限回放つ……が……


 「ゼァァァ!」

 「ぜらぃぁぁあ!?」


 アーマードが振り回した右腕が巻き起こした突風が邪悪の世界の拳を消し飛ばす



 『スペースド』



 「ゼァァ……!」


 アーマードの身体は黄緑に輝く


 「っ……!?」


 空間が増殖して邪悪の世界を中心に無数の青く輝く刃が並び、球体を生み出す


 「ぜらぁぁぁぁぁぅぁぁぁあ!」

 「ゼァァァァァァァア!」


 青く輝く刃の全てが邪悪の世界を突き刺し、そしてアーマードの拳が邪悪の世界を吹き飛ばす



 『ドレッド』



 「鷹弐……」


 アーマードの身体は赤く輝く


 「ゼァァァァァァ!」

 「がるぃぃぅぃ!」


 アーマードは8つの巨大な赤い翼を生み出し、背中から分離させて操り邪悪の世界を切り裂く


 「何故……世界が蘇る……何故何故っ……何故世界が消えない!?」


 叫ぶ邪悪の世界の瞳は力に染っていた


 「世界は消えない……!」



 『エルード』



 「ゼィァァァァァァァァァ!」


 アーマードの身体は青く輝き右腕に巨大な青く輝く牙を生み出し邪悪の世界を砕き飛ばす


 「がるぃぁぁぁぁぁぁあ……!」


 邪悪の世界は執念で自身の存在を保つ


 「俺が存在する限りな!」



 『アーマード』



 「俺の牙が貴様を砕き……!」

 「っぃい……!?」


 アーマードは黄金に輝き、龍の翼と蝶の翼と鷹の翼を背から生やし両腕から巨大な牙を産み出す


 「全てを救う!」


 アーマードは飛び上がり……


 

 キックヒーローの必殺技の構えを取る



 「ゼァァァァァァァァァァァァァア!」


 アーマードは邪悪の世界と衝突して叫ぶ


 「がぐぁぁああ……何故……俺と貴様の力はどちらも同じ世界の力のはずっ……なのになぜぇっぁぁあ!」

 「当たり前だろ……! お前は……全てを利用してきたお前は1人だ! だが俺の力には……全ての……世界の中で生き……そして死んできた魂の願いが込められている!」


 アーマードの黄金の輝きが増していく


 「独りよがりの力お前如きに負けるわけがないだろ!」

 「くっ……そガキがぁぁぁぁぁぁぁ!」


 邪悪の世界は目の前の輝きを前に惨めに叫ぶ


 「ゼァァァァァァァァァァァァァァア!」


 アーマードのキックが邪悪の世界を貫き、砕き飛ばした



——

 白い空間、アーマードは世界と対峙する


 「あんたが世界……この悲劇を始めた存在……」


 世界は首を縦に振る


 「お前は自分を消し去る為にこの悲劇を生み出した……皆を幸せにする為に……」


 アーマードは複雑そうな声色で言う


 「つまり全力でぶん殴っても想定内……お前にとって全てが想定内なんだよな……」


 アーマードは拳を握り締める



 『レルガ』



 アーマードの身体は優しい緑に輝く


 「っ……!?」


 世界は驚愕の色を見せる


 「ゼレガァァァァァァァァァァア!」


 アーマードの拳が世界を殴り飛ばした


 「どうだ……最後の最後に想定を越えられた気分は……!」

 「……は……はは……」


 世界は微かに笑い……そして消え去った



——

 「っ……」


 視界の先には青く澄み渡る空があった


 「分からない……とりあえず歩くか……」


 立ち上がり、そして歩き出した


 「来た事ないはず……これがデジャブか……いや違うな……確かに来た事がある……」


 街を見渡し歩きながら呟く


 「うおぁぁぁぁぁ!」


 少女が叫びながら横を駆け抜ける


 「っ……!?」

 「うぉっと……大丈夫か!?」


 走る青年に肩をぶつけられ転倒する


 「大丈夫……だ」

 「それならいいんだけど……」

 「おーい兄貴! 早くしないとゲーム売り切れちゃうよ!」


 立ち止まり振り返って少女が青年に向かって叫ぶ


 「……妹か?」

 「あぁ……俺にとって唯一の……宝だ」


 青年は大きく手を振る少女を見つめて微笑む


 「君の名前はなんだ……?」


 青年を見上げて言う


 「俺は空翼 鷹弐だ……そっちは?」

 「俺は……分からないな」

 「……?」


 鷹弐は首を傾げる


 「ほら、早く行ってやれ」

 「……またな!」


 鷹弐は少女の方へ走り去る


 「……」


 また立ち上がり、そして歩き出した


 「やっぱり見た事がある……」


 視界に蜘蛛の入ったケースを持って走る変人、2人の男女、4人の家族、少年が映りそして過ぎ去る


 「ここは……」


 気が付くとカフェの前に立っていた


 「Turn……ターン……」


 看板に書かれていた文字を読み上げる


 「……?」


 店の前のベンチには赤い髪の青年が座り眠っていた


 「……」

 「あ、いらっしゃいませー!」


 扉を開くと店内には数名の客と店員と思われる男と女がいた

 名札に書かれている苗字はどちらも鈴木、男の名は政則、女の名は夜奈だった


 「……あ」


 席に座って財布が無い事に気が付く


 「しまった……」


 ため息をついて席を立ち扉を開く……


 「うぉぃぁ!?」

 「っ……」


 ターンに入ろうとした女と衝突する


 「っ……!?」


 知っている、自分は絶対にこの女を知っている……だが思い出せない


 「どうかした……?」

 「えっ……別に……」


 思い出すのを諦め女に道を譲る


 「……」


 女に続いて男が店内に入るがその男には何故か親近感を覚えた


 「……!?」


 男も何かを感じ取ったのか目を見開き、そして過ぎ去った


 「……」


 浜辺に立つ


 「これが俺……そうか……」


 海を覗き込むとそこには映っていた



 『アーマードシャークルス』



 浜辺には誰もいない……波の音が響き……そして消えた

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アーマードシャークルス ハヤシカレー @hayashikare

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