最終話 俺が全てを砕く……

——

 「私はかつて……邪悪と呼ばれた命の神……この鎧を纏った新たな神の姿……」


 黒いアーマードシャークルス……命の神は拳を構える流牙を無視して語り出す


 「アーマードジャークルスと名付けよう……いい名前じゃないか……? なぁ……」


 命の神……邪神の鎧 アーマードジャークルスは流牙の背後に現れる


 『流牙……!』

 「っ……!?」


 邪神の鎧の声は流牙の中で響き魂を震え上がらせる


 「アーマード!」


 流牙は青い輝きを纏い、弾き飛ばしてアーマードシャークルス タマシイとなる


 「ゼァァァァア! っ……」


 青い鎧は背後の邪神の鎧に右肘を放つがそこに邪神の鎧の姿は無かった


 「一撃目が当たらないのはいつも通りだな……っどこから来っ……がっ……!?」


 青い鎧の肉体内に突然激痛が走る


 「なんだっ……!?」


 その痛みは生命体の様に血管内を駆け回り、脳内で何かが暴れ回る


 「脳みそをかき混ぜても思考能力を失わない……タマシイ化した時点で既に生命体として最上位の域に足を踏み入れるのか……」


 もがく青い鎧の前に黒い液体を弾いて邪神の鎧が現れ実験動物を見る科学者のような口調で言う


 「お前っ……何をしたんだ……!?」

 「流牙、お前は私の息子だ……眠る幼いお前の体内に極小の生命体を入れるくらい簡単に出来る」

 「っ……」


 青い鎧はその言葉に拳を震わせる


 「本当に……無いんだな……」


 青い鎧は拳を握りしめ肩を震わせる


 「お前には……家族への愛も何も……! 無いんだな!?」

 「……?」


 邪視の鎧は首を傾げる


 「私はお前を愛している……お前という命は何度も絶望に打ちひしがれようと必ず立ち上がる……そこに命の輝きが産まれる……! 私はそんなお前を心の底から愛している……!」

 「それは家族への愛じゃない!」


 訴えかけるように語る邪神の鎧に青い鎧は声を荒らげる


 「っ……愛も知らないくせに……なんで……どうして俺を産み出したんだ……」


 青い鎧は俯く


 「……少し長くなる……」



——

 私は命の神……エルードとして誕生した

 

 私は命を愛し、様々な環境下で生物を生み出してきた……


 しかし他の神、特にホライドは私を邪悪と呼び嫌悪した


 だが私は死の神……ドレッドと出会い共に生命体の進化を鑑賞し……そう……私は満足していた……命の全てを知ったと思っていた……



 『私も命だ』



 突然、突然の事だった


 世界が突然私に語りかけてきた


 私は世界の命を知りたくなった……知りたくて……知りたくて……


 そして計画を開始した


 私は死の神と共に世界に挑み、そして敗れた……


 世界は新たな命の神と死の神が現れるまで代わりに命と死の根源となった


 死という概念を取り込んだ事で命と死が揃い世界は寿命という概念を手に入れ、寿命が尽きるまでに新たな神を産み出す必要が出来た


 世界の強さは桁違いだった……だが私は気が付いていた


 世界は私達を消すつもりは無いと、だから私は負けを前提で挑み……


 そして人間の姿に堕とされ地球に降り立ち、人間の女との間に流牙を産み出した



——

 「俺はお前が俺を生み出すまでの経緯じゃなく理由を知りたいんだ」

 「分からないのか……? いや単純に知識が足りないのか……」


 邪神の鎧は青い鎧を指さす


 「自分の存在する世界線にアーマードを呼び寄せ、そして神の力を集めさせる為に流牙と空翼 鷹弐が必要だった」

 「どういう事だ……?」

 「世界と戦った時、私は世界から無の欠片を奪い取り微かに残された命の力と融合させアーマードとして産み出す事で私は命の力を持ったまま人間として生きる事が出来た」

 「意味が分からない……」

 「答えだけを話そう……」


 邪神の鎧は少し呆れたように言う


 「命の力を持つ私から産まれた事でお前は命の力を産まれた時から持つ人間となり、確実にアーマードシャークルスに選ばれるというわけだ」

 「っ……」


 青い鎧は身体を震わせる


 「最初から……俺の……」

 「さてと、これでお前の疑問には答えた……が……」


 邪神の鎧は青い鎧を見つめる


 「また立ち上がる時間が必要か?」

 「……いや……いらない」


 青い鎧は顔を上げる


 「お前が……悪だと分かった……」


 青い鎧は邪神の鎧を強く睨む、その目は家族に向ける物ではなかった


 「ほう……」

 「これでお前を全力でぶっ砕ける!」


 青い鎧はそう叫んで右拳を構える


 「俺の牙からは……逃げられない!」


 青い鎧は両腕の鰭を伸ばして駆け出し、地面を蹴り飛ばし飛び上がって邪神の鎧に向かい落下する


 「ゼァァァァアァ!」

 「……」


 邪神の鎧の視界の中で輝く刃が迫る


 「1つ言っておこう……」

 「っ!? がぁぁぁ!?」


 落下する青い鎧の背後に邪神の鎧が現れ青い鎧の首を掴んで地面に叩き付ける


 「お前は輝いていた……が……もうこれ以上輝く事は無い……」

 「がぐぎぃっ……!」

 「つまり……」


 邪神の鎧の青い鎧の首を掴む力がどんどんと強まっていく


 「私もお前を全力で砕ける」

 「っ……」


 青い鎧は、流牙は理解する……邪神の鎧は、自分の父親は本気で言っているのだと


 「ゼァァァァァアッ……ぐがぁ!」

 「お前は私にとって最も愛した命だった……」


 青い鎧は右拳を放つが邪神の鎧の左腕に捕まれへし折られる

 体内で生命体に暴れられ再生する事が出来ない


 『ホライド』

 「っ……!?」


 青い鎧の中から時の力が消えていく


 「何をしっ……」

 「ゼルガァァア!」

 「あがらぁぁぁぃぁあ!」

 

 邪神の鎧は青い鎧の右腕を引っ張り青い鎧の右肩を引き裂く


 『スペースド』

 「っぁぁあ……!」


 青い鎧の中から空間の力が消えていく


 「その力は……託された物だ……!」


 青い鎧は銀と黄緑の輝きを得た邪神の鎧に左手を伸ばす……が


 「がぁっ……!?」


 その手は消し飛ぶ


 「あいつも終わったのか……」


 3つの神の力に引かれ赤い玉……死の力が現れる

 邪神の鎧は青い鎧を放って立ち上がる


 「これで私は……世界を消し去り……世界となりその命を知る……!」


 邪神の鎧は赤い玉を握り潰した


 「俺が全てを砕く……!」

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