サナギの抜け殻

山下 巳花

序章

 瞳子とうこは、建物の裏手にある駐輪場に自転車を停めると、前カゴから食糧の入ったエコバッグを持ち上げた。

 いつもより重みのあるそれを右肩に掛け、建物の表側に向かって歩き出す。

 そして、いつもの様にアパートの1階にある集合ポストの前で足を留め、ナンバーロックキーの数字を回す。

 702ー草太朗そうたろうと付き合い始めた日付だ。

 鍵を開け、郵便物を取り出す。

 昨日取り忘れたダイレクトメールが1通と、いつ入れられたか判らないB5のチラシが1枚。瞳子は、その場でチラシに目を通した。


『この子を探しています』

 

 ワープロで打たれた上段の黒字の大きな見出しが、ず目に飛び込んできた。

 その下は左右に分かれていて、左側には制服を着た少女の全身が写ったカラー写真、右側にはその少女のプロフィール等が同じく黒字で書かれてあった。


斉藤さいとう くるみ

 小学2年生 8才

 身長 120㎝

 体重 23㎏

 髪型 肩までのストレート

    前髪に苺のピン留め

 服装 失踪時は写真と同じ制服と靴

 

 12月13日(金) 20時頃 

 家を出たまま帰宅していません。

 些細な情報で構いませんので、

 お心当たりの方は下記迄ご連絡下さい。

 080-××××-3592 斉藤』


 瞳子は、最後まで読み終えると、その紙とダイレクトメールを肩に掛けたエコバッグに無造作に押し込んだ。



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