痴漢は犯罪です
学生の朝はしんどい。その一つがこの満員電車だ。
(今日は集会があるから制服で来たけど……)
ルーチェはすぐに後悔した。普段着の方がやはり楽だと。
(いつもパンツスタイルのせいか……スカートに慣れない……)
おーーーっと、ここで人が雪崩込んできたーー! 押し潰されるー!
(やべー! 死ぬー!)
ルーチェはなんとか隙間を見つけ、そこに入り込んだ。おお! すごい! 隅っこスペースをなんとか確保したぞ!
(これであとは中央駅まで行くだけ……)
ルーチェは顔を上げて、ぴたっ! と止まった。正面にはニコニコ笑う桃色の髪の女性が笑顔で自分を見下ろしていた。ルーチェは眉をひそませ、スマホを取り出し、チャットをした。すると女性もスマホを取り出し、チャットを見始めた。
>なんでいるの?
<ルーチェが電車に乗るとこ見えたから乗っちゃった♡
>乗っちゃったじゃねえよ。ふざけんな。早く依頼現場行け。
<今日の現場中央区域なんだもん♡ だからこのまま乗っていきます♡
>まじで言ってる?
<大真面目♡
<ルーチェ、制服可愛いね♡
(うおおお……。駅までお姉ちゃんと向かい合ってろってかぁああ……!?)
その正体は何度見てもパルフェクト。本名ナビリティ・ストピド。自分の実の姉が自分を壁ドンの如く腕を壁に付き、笑顔で見つめられている。愛が重たいのなんの。
(駄目だ。視線に耐えられん)
(あっ!)
パルフェクトがはっとした。ルーチェが自分に背中を向けたではないか。リュックを抱きしめているから背中は無防備だ。
(え? 無防備な背中を向けたということは?)
抱きしめていいっていうこと!?
思った瞬間即行動。とくにルーチェに関しての場合は。パルフェクトは早速ルーチェの背中から腕を伸ばし、小さな妹を優しく抱きしめてあげると、睨まれた。
(あっ! 睨みルーチェ♡超きゃわたん!」
(なんで抱きしめてくるわけ? 狭いんだからやめろよ。まじで)
(ああ、いい匂いする……。可愛いルーチェ♡……。わたくしのルーチェ♡……。今日は……制服なんだ……?)
(ああ、まじやだ……。朝からしんど……)
(すごい。ルーチェ♡のスカート姿。いつぶりだろう……)
パルフェクトの手がスカート越しからルーチェの太腿に触れた。ルーチェがびくっと肩を揺らす。
(ああ、ルーチェ♡の太腿……♡)
(は? 何やってんの? この女?)
(ああ、生で触りたい……♡ スカート越しじゃなくて……)
(うわっ!)
スカートをめくり、直に太腿に触れてくる。
(ちょっと、まじで!)
(ルーチェ……♡)
(やめろって……まじで……!)
その手が太腿を撫でてくる。
(やだってば……!)
(ああ、ルーチェ♡、もっと触りたい……)
(やっ!)
指が太腿をなぞり、上に伝っていく。
(ちょ、ここ、電車……)
パルフェクトがスカートの中で手を動かす。
(なに、考えて……)
(あっ! ルーチェのおぱんつ! 綿100%! ゴム製!)
(どこ触ってんのぉおおお!!)
(ってことは……)
パルフェクトの指が下着の線をなぞっていくと、ルーチェの尻がピクリと揺れた。かなり嫌な予感がする。
(やばぁ……。可愛い……。ルーチェ♡。……触りたくなってきちゃった……)
(中央駅。早く、電車早く。この変態から早く離して……! 早くぅ!)
(ちょっとだけなら……いいよね?)
(ひえっ!?)
パルフェクトの手が動き出した――。
――深くて、重たい息が、二人から放たれた。
――電車がようやく動き出す。
――ルーチェがパルフェクトを睨みつけた。その目を見て――またパルフェクトに興奮が走る。
(めっっっっちゃかわ……♡)
「お前……いつか……殺す……」
「すごぉーく……可愛かったよ……♡ ルーチェ……♡」
「っ……くたばれ……」
「人にくたばれとか言わないの♡」
『次はー中央駅ー、中央駅ー』
「ミランダ様に、チ、チクってやる……」
「そんなお口はこうしてやる」
「むふっ……!」
中央駅までの一分間、人混みに紛れた二人の姉妹が濃厚なキスを交わしていた。
痴漢は犯罪です END(R18フルverはアルファポリスにて)
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