放課後
(つ、疲れた……)
アルバイトから部屋に戻ってくると、ベッドにすぐさま倒れ込む。今日はもう頑張ったから、このまま寝てしまおうか。
「おいこら、まだ寝るんじゃねえ」
「餌なら朝やったがやー……」
「お前明日の課題やるんじゃねえのかよ」
「あー、うぜえ……」
あたしは起き上がり、のそのそと立ち上がり、鳥籠の中にいる白フクロウを睨んだ。
「もっと言い方さー」
「課題のこと言えってお前が言ったんだろ」
「バイトして疲れてんが!」
「そうやって言い訳して何年留年してんだよ。もう後がねえから厳しくしてくれってお前が言ったんだぞ」
「はーあ! じゅじゅから送られた時点で送り返すんだったわ。フクロウじゃなくてまるで九官鳥。同じ言葉をひたすら繰り返す。ハロー。ごきげんよう。こんばんは。オラが活躍していた魔法調査隊の武勇伝自慢話はいかがかね。ああ! もう沢山だべ!」
「んなこと言ってるからいつまで経っても魔法使いになれねえんだよ」
「うるせえな。喋るフクロウに何がわかんだっぺ! こっちだって色々大変な!」
「お前が寝てる間にもやってる奴はやってるぞ。お前のやってる行動はただのサボりだ。サボって泣きを見るのは誰かな。ま、俺には関係ないことだからどうでもいいけどな」
「なしてそんなこと言うがや? 疲れてるって言ってっべ。魔法の勉強さ金ばっか、かかっちゃ。やる気も失せるってもんべ。んちゃ。お腹さ空いた。ああ、この時間はリンダさん担当か。リンダさんのご飯はうめーけんど、あの人、目がこえーんだ。あれは絶対寝てないべ。クマが濃いもん。不眠症だべ。不眠症。今のあたが会ったら影響されて夜眠れなくなりそう」
「良かったな。課題ができるじゃねえか」
「お前、この馬鹿たれ申せっちゃ。明日の一限目の授業誰か知ってっか? ミランダ先生の授業だべ」
「その課題もミランダの授業だろ?」
「ああ、課題をやっても寝不足で居眠る可能性大。課題をやらなくてもなんでやってこなかったんだい。やる気はあるのかいって言葉の拳をぶつけられる可能性大。どちらを転んでも駄目ならあたは考えた。ここは明日休んだらどうかと」
「お前それが仕事でも同じことすんのか?」
「そりゃ、魔法使いになれたらあただってスケジュール管理はしっかりするべ」
「だったら練習だと思って今のうちにやっておけ。いいか。明日は行け。ミランダの授業ならちゃんと毎回受けろ。あの女の話は為になる。いいな。自分のためだぞ」
「仕事なら課題はねえ」
「馬鹿言うんじゃねえ。魔法使いは専門職だぞ。毎日課題と研究だ。ジュリアを見たらわかるだろ」
「じゅじゅとはあんまり関わってこなかったって言ってっべ。闇魔法の魔力分子がある限り、満足に近づけん。……気ぃ狂っちまう。調合薬がなきゃ、一日2時間が限度」
「そうだ、それを変えたいと思ってお前はここに来た。ミルフィユベルン、目的を忘れるな」
「……」
「夢を叶えるためにはどうするんだ? お前の夢は、ただ魔法使いになることだったか?」
「……あたの夢は、……おっとさんとおっかさんが死んだ……原因の……闇魔法を……安全で最強の魔力分子に変形させること」
「そうだ。それさえ開発できれば、世の闇魔法使いがどれだけ助かるか。誰もが挑戦し、絶対に成し得られなかったことだ。ミルフィユベルン。闇魔法の勉強は満足にできてるか? 開発は上手くいきそうか?」
「……夕飯は諦める」
「おう、そうか」
「その時間を使って課題をやる。これでいいべ?」
「早めに寝れたら朝食をたらふく食べればいい」
「ああ、ぶっ倒れちまうべ。もう。あた泣きそう」
「泣いてはいないだろ」
「うるせえ。泣きたいんだよ。疲れて涙すら出ないんだっちゃ!」
あたしは椅子に座り、課題を広げた。
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