第3話 トーヤ、勇者になる
朦朧とする意識の中、俺は目覚めた。
「ここは、、、」
見たことのない部屋が視界に広がる。服も最後に着ていたものとは違っていたのだった。
「目が覚めたのね!」
ミミルが嬉しそうに俺の手をとる。
「あぁ、ミミルが運んできてくれたのか。ありがとう」
「いや、運んだのは私じゃないよ」
「え?」
扉の奥から大柄の男が入ってくる。
「え?!ちょちょ、誰ですかあなた!」
すごく困惑した。しかもこの男、目つきがとにかく悪い。
「、、それが命の、、恩人に対する態度、、か」
なんだか会話のテンポが悪い男だった。それに運んだだけなら命の恩人でもない。
「あっ、いや、そんなつもりは、、、」
「そう!この人が運んでくれたの!」
こいつ、、いや、仮にも恩人だ。こいつはやめておこう。
「この人が、、そうか。どうもありがとう」
「大した事では、、ない」
なぜこんな喋り方なのか、俺は言及するのを敢えて避けた。
話が長くなりそうだと思ったのだ。
「名前はなんて言うんだ?」
「バt「バトゥーラさんだよ!」
食い気味にミミルが言う。
(言わせてあげなって、、、)
「バトゥーラさんはなぜあの場に?」
「あぁ、、クエストを終えた、帰りだったのだ、、、」
「クエスト?」
まさかあるのか、、?
ギルドが!
「ギルドってとこでクエストを受けられるんだよ!」
(やっぱりあったんだ!)
「俺もクエスト受けてみたい!」
「お前には、、、無理だろう、、、貧弱そうな、体つきだぞ、、、」
「やっぱり試験とかあるのか?」
「あるけど、薬草採りとか、簡単なクエストだけを受ける人向けに筆記試験だけっていうのもあるよ。」
でも、どうせ受けるならばやはり冒険者になれる方がいい。
「いや、俺は冒険者になりたい!」
「でっでも、、、」
「ランクギルド、、は、一筋縄では、、いかんぞ、、、」
「ならバトゥーラさん、俺と一緒にパーティを組まないか?」
「パーティ、、だと?」
元々悪い目つきがさらに悪くなる。
「嫌に、、決まっているだろう、、、」
「じゃぁ一人で行くしかないか、、」
「私は一緒についていくー!」
その後再度お礼をしてからバトゥーラとは別れ、ミミルの案内についていってギルドへと行った。
「いらっしゃいませ~!」
まるで飲食店などのように挨拶が響き渡る。
「あの、ランクギルドに登録しに来たんですけど、、」
美人な受け付け嬢に言うと、後ろから太く低い声が背筋をなぞる。
「おいおい、まじかこいつは。こんな体躯でランクギルドとは、、」
テンプレである。
「ちょっと、なんですかこの人は!失礼ですよ!」
「嬢ちゃんは黙ってな」
ミミルの胸が俺の背中につく。
(し、幸せと恐怖がっ同時に、、!)
「おい坊主。まさか武器なし装備なしでこのランクギルドに登録しようってんじゃないだろうな?」
「と、特殊スキルがある、、」
ごもごもとした声で言った。
「ほう。どんなスキルだ?」
「発動すると気絶できるぞ!」
自信たっぷりに言ったが、後から考えてもこの時の行動は理解できない。
「はっはっはっは!」
思いっきり笑っているのが怖かった。
「お前なめてんじゃねえよ。ここを遊び場とでも勘違いして来たのか?あ?」
(こっ怖い、、、)
「こ、このスキルがどんなものか分かってないだけだ!」
「はっ。じゃぁどんなものかわからねえといけねえなぁ」
嫌な予感がした。
「おい。ギルマスを呼べ。丁度鬱憤がたまってたんだ。こいつでストレス発散とでもいこうか」
慣れている口調に、余計に恐怖を感じた。
「おい、なんだ!またお前かバッカス!」
ギルドマスターと思しき男性が出てきた。
「おいヒルバス。おれぁこいつと決闘するぜ。いいよなぁ?坊主」
「断った方がいいですよ!こんなのおかしいです!」
ミミルも言うが、、なんとなくだがこいつには勝てる気がする。
「いや、スキルが分かるかもしれないから、一度死にかけてみるよ」
「えぇ?!」
「だってこの世界には治癒魔法もあるだろ?後遺症が残らないような治療もできるだろうし、、」
「後遺症は残るものは残るよ!そんなに万能なものじゃないの!魔法は!」
「それで、やるってことでいいんだな?」
「あぁ」
俺はもはやミミルの話を聞いていなかった。なぜなら、こういうイベントでは大体主人公であるはずの俺が勝つ。何かしらの要因によって俺が勝つはずだ。
だから大丈夫なはずだ。
「では、そのようにして取り決めるが、いいんだな?」
ギルマスはとっても怪訝そうにこちらを見てくる。
「はぁ。本当はやってほしくないですが、仕事だからやります。」
「ではここに、ギルドマスター[ヒルバス・キンブルム]の名のもとに決闘を取り決める!日時は明朝、場所はギルド本部裏の闘技場だ!」
「ねぇ、本当に大丈夫かな、、?」
ミミルはこの上なく不安そうにこちらを見ながら言ってくる。
「あの人も可哀想に、、」
「登録したてのところに来るなんて、バッカスも悪趣味だわ」
「あいつ死んだなw明日が楽しみだぜ」
周りもざわついていた。とりあえず今晩は明日にそなえ、宿に戻ることにした。
「明日になればスキルが分かるはずだ。楽しみだな~」
「何を呑気にしてるんですか!」
ミミルが会計をしながら言う。
「死んじゃうかもなんですよ?!もっと恐怖心を知ってください!」
何を言われても、俺の気持ちは曲がらないのだった。
そして翌日、俺h酷い目に遭うのだった。
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