【完結】リンガーベル！～転生したら何でも食べて混ぜ合わせちゃう魔獣でした～

第37話 呪いのかたまりクリスタル

「がぶっがぁぁぁ――……ッ！！」

　邪魔っだぁぁぁ――……ッ！！

　全身にオーラを纏った私が、タックルをしながら突き進む。

　カルミッチェさんが戦っていた黒い人型の呪いは、貴族街に近づくに連れて数を増やしていく。

　だけど、私の敵じゃない。

　気分は爽快無双系アクション！

　パンチ一発（ワンパン）で無数の人型吹き飛ばし、尻尾を軽く一振りすれば無数の人型薙ぎ払うッ！

　タックル！　パンチ！　尻尾！　尻尾！　ローリング！

　ジャンプ！　からの！　真下へヒップスタンピング！　お尻ドッシン衝撃波で周囲をまとめて吹き飛ばせッ！

　道を開けろ雑魚どもがぁぁ――……ッ！！

「ベルの後ろについて行くだけで道が開いていくのはラクね」

「ベルちゃん、こんな強かったのね」

　ラッキー！　みたいな調子のスーズさんと、若干引き気味のカルミッチェさん。二人の温度差はちょっと風邪引きそうなほどに大きい。

　だけど、私は気にしない。

「ベル！　あそこに見える門の入り口！　あの先が貴族街よッ！」

「がぁーがぶ！」

　りょーかい！

　私はスーズさんにサムズアップしてから、右手に力を込めながら大きく引く。

　天竜（テンリュウ）・咆哮掌（ホウコウショウ）――

「がっぶぇぇぇ！！」

　そして、勢いよく掌底（しょうてい）を突き出した！

　突き出した掌から、エネルギーの奔流が螺旋を描きながら伸びていき、閉じかかっていた門を粉砕する。

　当然、その射線上にいた人型どもは、諸共吹き飛ばした。

「がぶぉぅ！」

　行こうと私がジェスチャーすると、スーズさんとカルミッチェさんは目を見開いたまま固まっている。

「がぶがぶ！！」

「ごめんなさい。ちょっとデタラメな威力に驚いてただけよ」

「ベルちゃん、とんでもなく強かったのね」

　正気に戻った二人が動き出すのを確認すると、私は再び先行気味に走り出す。

　色々合成して呪いを解いてきたとはいえ、まだまだお腹には色んなモノが入っているからね。

　食べれば食べるだけ強くなれるタベルン種の本領発揮をしている最中なのだよ。

　そうして私たちが貴族街へと突入すると、大きな邪想獣が暴れているのが見えた。

　騎士っぽい人たちとともに戦っているのはクロンダイク。

　馬鹿でかい邪想獣が騎士さんたちと薙ぎ飛ばし、中心にいたクロンダイクに向けて鎌のような前足を振り上げる。

「がぶがぶがッ！」

　させるかよッ！

　私は地面を思い切り踏みしめて、跳び上がった。

　その衝撃で巻き起こった風を受けて、スーズさんとカルミッチェさんが小さく悲鳴を上げたけど、それは後で謝るッ！

　何度かルーマってチカラを使って分かってきた。そのコントロール！

　別に繰り出す技はアーツである必要はなく、ただ右手にルーマを込めて殴る！　でも十分な効果が発揮されることもあるんだ！

　まさにそれは今ッ！

「がぁぶぁぁッ！！」

　気合いとともに、振り上げられた邪想獣の前足を全力でブン殴るッ！

　私のパワーが凄かったのか、殴った鎌のような前足は折れて吹っ飛び、無事だったお屋敷の一つに突き刺さった。

　だけど私はまだ空中。

　ならばと両手を掲げて重ねると、ルーマを込めて振り下ろす！

　いわゆるスレッジハンマーって技だ。

　このジャンプ中レバー下入れ強パンチ（２Ｃ）で奈落に落ちろッ！

　私はそのスレッジハンマーを本体だろう中心の球体に振り下ろす！

　本体だろう中心の球体はそのまま地面に叩きつけられ、軽く石畳にめりこんだ。

　ベネ（よし）ッ！

　でも、ちょっと威力高すぎたかな？

　そんなことを思いながら、私はスレッジハンマーのあと、バク転してクルクルシュタッと、クロンダイクの近くに着地した。

「ナイスだマイフレンド！

　よくぞくっそうぜぇババアの別荘をブレイクしたッ！」

　助けたことよりそっちがナイスなのッ！？

「目撃者はこれだけいるし、元々この貴族街とは名ばかりの無人別荘地帯は邪魔だったしな！　ハデに暴れてもらって潰れても、がんばったけど無理でしたって顔してればバレないはずだ！　万事オールオッケー！」

「がぶ……がぶがぶがぶがーがぶっが？」

　あれ……助ける必要なかった？

「いやいやいや。そんなコトないぞ、マイフレンド。

　お前が助っ人にきてくれたのは、もちろん嬉しいからな！」

「がぶがぶがぶるがー？」

　ほんとにござるかー？

「確かにこの貴族街、何かの理由で更地になんねーかなぁ……とは思っていたのも事実なんだが。

　ここぞとばかりに廃墟になれー……と思っていたワケなんだが」

「がぶんががぶががぶが？」

　自分の街じゃないの？

「まぁいろいろあるんだよ。

　その話は、コイツをちゃんと倒してからでいいだろ？」

「がぁ、ぶぅぶぅがぶががぶがぶが」

　まぁ、そういうことにしておくよ。

「ちなみに、この邪想獣はサブンが変身したモノだ。

　なんか術者が死ぬコトで強化されるタイプの呪いらしい」

「がぶぁ、がぶがぶが」

　そりゃあ、迷惑な。

　でもまぁ――これまで通り、食べて浄化しちゃえば終わりっしょ。

「がぶがぶがぁぶ」

　いただきまぁす。

　……が。

「がぶぁ……」

　今までと違って小さくなって口に入ってくる感じはなく、ふつうのかじり付いて削り取っちゃった感じ。

　そう。呪いの塊が、そのまま口の中に……。

「がぁぁぁぁぶぁぁっぁあがぁぁぁぁぁぶぉぉぉぉ！！！！」

　まぁぁぁぁずぅぅっぅういぃぃぃぃぃぞぉぉぉぉ！！！！

　でも飲み込む。

　おえ。思わずえずいちゃうけど、飲み込む。

　でも、涙がでちゃう。女の子だもん……。

　それはそれとして、鑑定……できるかな？

　あまりのマズさに両手を地面についてケホケホしながら、お腹の中に意識を向ける。

　食べた呪いを鑑定できるならしてみたいんだけど……。

【邪想結晶】

　邪想獣になるほど高まった呪いのかたまり。

　本体から切り離された際、本来なら呪いが霧散し消滅する。だが、これは呪いの濃度が高かった為に消滅しきらずに結晶化した。

　軽くて丈夫で美しい為、内包する呪いだけを消すことができれば、武具の素材としても芸術品の素材としても非常に有用な『麗想結晶』となる。

　お、出来た出来た。

　クッソまずいけど、手に入る素材としては上々そうじゃん。

　しっかし呪いの結晶かぁ……。

「お、おい。マイフレンド。大丈夫か？」

「がぶぅ……」

　心配そうに声を掛けてくるフレンドに、首だけ向けてうなずいてからゆっくりと立ち上がる。

「ベル、さっきまで自分の身体より大きい奴も一口でペロリと平らげてたのに、大丈夫？」

　スーズさんも心配そうに声を掛けてくれたので、それにうなずく。

　すると、横でクロンダイクが私の能力についての推察を語ってくれた。

「恐らくはスキルの効果なんだろう。

　一定以上の実力差ある格下や、単純な素材や道具なんかは一口でいけるが、条件を満たしてないものは一口でいかないっていうさ」

　なるほど。

　相手が格下であったとしても、レベル差が小さいと飲み込めないって感じか。

「がぶ……」

　なら……。

「そうだな。多少弱らせれば一口で行けるようになるかもな」

　さすがマイフレンド、話が分かる。

　そういや、切り離されても呪いの濃度が高くて結晶が残るんだったら、さっきの前足ってどうなった？

　ふと思って、前足の突き刺さっている家を見ると――

「どうしたのベルちゃん？」

　カルミッチェさんも一緒になってそちらを見て……。

「あー……」

　がっつり結晶化しているよ。

　なんか、思いっきり家が飲み込まれているけど。

「よっしゃ！　ざまぁみろ！」

　家の半分が結晶化に飲み込まれているのをみて、クロンダイクがテンションをあげている。

　どんだけ嫌いなのよ、あの別荘の持ち主。

　などと、私たちがわちゃわちゃやっているうちに、邪想獣は立ち上がる。もちろん前足も再生しているけど、まぁ想定内。

「ベルが一口で食べられるくらいまで弱らせる」

「ベルなら呪いを浄化できる可能性があります」

「ならベルちゃんに食べてもらって、ご本人を回収するのが最終目標ですね」

　うーみゅ。

　消化しないとはいえ、人喰いはあまり気が進まないけど、そうも言ってられないよね。

　さっき一口で行こうとしただろと言われる反論できないけど、棚に上げとくよ！

　どっちにしろ、手っ取り早く事態を収めるならそれが一番だろうし。

　なら、ためらってばかりもいられないね。

「がぶがぁ……がぶがぶが！」

　それじゃあ……やりますか！

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実は、３８話を更新しようとして、今話（３７話）を公開してなかったコトに気づきました

いやほんと、すみません。脳内では投稿してたんですが……

なので――というワケでもありませんが、明日も更新予定です。