【完結】リンガーベル!~転生したら何でも食べて混ぜ合わせちゃう魔獣でした~
北乃ゆうひ
第1話 はじまりはじまりリスタート
おもむろに新作をはじめました٩( 'ω' )و
こちらもよろしくお願いします。
読んで下さった方が少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
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お腹すいた……。
そんな感覚で目が覚めると――そこはどこともしれぬ洞窟だった。
はい、どうも~。
あるいは、大食いOLユーチューバーまたは格闘ゲーム動画配信者のベルです。
まぁ正直、呼び方はどれでもいいんですけどね。もう、どっちの名前もあんま意味なさそうですし。
何を言っているかって?
そりゃあ、アレですよ。昨今流行――は少し落ち着いてきたかな?――の出来事を実体験中なワケですよ。
どんな体験ってそりゃあ、アレです。
異世界転生ですよ、異世界転生ッ!!
さっきまで地元の大きな交差点に居たのに、気が付けばなんか見たこともないような美味しそうな水晶がキラキラ輝いている洞窟の中なもんで。
え? それなら転移じゃないかって?
いやぁそれがどういうワケか、自分でもこれは転生だって実感があるんですよね。
交差点で何かあったぽいんだけど、思いだそうとすると本能みたいなものが、それは今思い出す必要はないって訴えてくるんで、気にしないようにしてるんだけどね。
まぁでも、アレよね。
そういう直感的なモノが働く程度のトラウマが残るような死に方をしたってことよね、私ってば。
……血塗れの男性に駆け寄る女性を最後に見た記憶がぼんやりとはあるから……まぁ、なんだね。
男性より先に私も血塗れになってたんじゃないかね。うん。これ以上は思い出す必要ないな。思い出したって良いことなさそう。
前世のラストがどうあれ死んだってことを自覚してるから、それでいいや。
それに、前世では色々あって若干病みはじめてたんだよねぇ~……。
そんなタイミングで、死んで転生しましたって言われても、全部リセットされた新しい人生イエーイって感じ?
いやまぁ、大食いやゲームプレイの動画配信してた人間としては、ファンのみんなには悪い気はするよ? それなりにインセンティブもらってたし? だけど死因は恐らく自殺とかじゃないので、正直大目に見てもらいたい。不可抗力で死んじゃったんなら仕方ないよね?
――とまぁ、そんな気分が暗くなるような前世の話はさておいて。
目覚めてからの体感時間は一時間ほど。あってるかどうかは分からない。
とりあえず、洞窟の中を歩いているけど、特に目的はなく。
薄暗くてじめじめしてるし、個人的にはとっとと外に出たい。
何であれお腹はすいたので、目に付くモノでも食べてみようかしら。
アクションゲームの即死トラップよろしく壁からにゅっと飛び出したトゲトゲした水晶を一本軽く折ってみる。
あ、結構もろい。
ポキリと軽く折れた水晶は、ちょっとした腕の長さほどのもの。
私は琥珀糖のように綺麗なそれを口の中に放り込む。
――ゴクン。
おっと、噛まずに飲み込んじゃったけど、うん。まずくない。喉ごしさわやか。もうちょっと食べていこう。
ポキポキ折りながら、そこに生えていた水晶の先端を食べていく。
ちょっとのつもりが夢中になって口に運んでしまい、気が付けばだいたい食べ尽くしてしまった。でもこころなしか、心も体力も満たされた感じがする。
……ん?
いや、待て。なに、ふつうに飲み込んでるんだ自分。
そもそもあんなサイズの水晶を一口で食べられるってどういう原理だ?
うあー……これはイヤな予感がしてきましたよ。
もしかして、転生は転生でも、人外転生なのでは?
いやまぁ、その予感は若干あったんだよね。明らかにデブになってるし。尻尾みたいなの生えてるし。
気が付いてないフリはしてたんだけど。現実逃避とも言うかな。
それでも、人と交流できる程度の種族であって欲しいところなんだけど。
――っていうかこの世界に人はいるのかな?
ま、いっか。
難しく考えても仕方がない。
水晶食べたら何となく出口の方向が分かるようになった気がするので、そっちへ向かって歩くよ。
道すがら、美味しそうな宝石があったので口に放り込む。
剣が落ちてたので口に放り込む。
ナイフが落ちていたので口に放り込む。
盾も落ちてたので口に放り込む。
杖が落ちていたので口に放り込む。
なんかコウモリみたいなやつが襲ってきたのでシュパっと捕まえて口に放り込む。
ちょっと大きめのトカゲが襲ってきたので、舌を伸ばして捕まえたらそのまま口の中へ放り込む。
その辺に生えてた草をむしって口に放り込む。
なにやら不思議な色で発光しているコケをむしり取って口に放り込む。
……うん。
我ながら節操ないぞ。
いくら前世が大食いだったからって、この食べ方はちょっと異常だ。
目に映るモノが色々と美味しそうに見えちゃうし、なんか食べる度に身体のキレが良くなってる気もする。
しかも、どれだけ食べても満腹感がない。でも、多少の満足感はあるかな。
ステータスみたいなモノが存在するのかは分からないけど……。
例えるならば、食べる度にステータスが上がっていく感じ。
それが一時的なのか永続的なのかは分からないんだけど――まぁ種族特性みたいなモノなのかしら?
何でもかんでも口に放り込むってどんな種族だよ。実はこの身体、まんまるピンクだったしないよね? いや、アイツは尻尾はなかったから違うか……。
サラっと流してたけど、剣とか盾とかも落ちてたな。
――ってことは、とりあえずファンタジーな世界なのかな?
やばい。自分がどんな種族なのかよりも、ファンタジーな世界にいるってことの方にワクワクしてきた。
あー……出たいな。はやくこの洞窟の外に出たいな!
逸る気持ちを抑えて、目に付くモノを口にしながら私は洞窟の中を進んで行く。
お? 明かり?
やった、出口だ~~~~ッ!!
軽く飛び上がりながら、私は私は洞窟の外へと駆けだした。
ん~~~~……!
決して強いというほどじゃないんだけど、ずっと洞窟にいたからか陽射しが眩しい。
しばらく目を細めていたけれど、やがて馴れてきたころ、ゆっくりと目を開き――
わぁ! すごい!
目の前には、大きくて綺麗な湖がある!
最初は海かなって思ったけど、反対岸だと思われる場所に木が見えるからたぶん湖!
周囲を見渡すと木々がいっぱいあるから、森の中にある湖って感じ!
そういえば喉も乾いてるし、少し湖の水を飲もうかな。
陽光を反射してキラキラとした湖面。
その中には魚影っぽいものもチラホラあって、釣りとかできるなら、魚も食べたいな~……などと思ったりもして。
そうして、鏡面のように美しい湖の畔までやってきた時、私はようやくその姿を見た。
構成されるパーツを見るに、分類すればドラゴンとかトカゲとかそういう種族なんだろうけど、その姿はまんまるで、二足歩行はふつうに出来る。
ずんぐりむっくりと太ったペンギンのようなシルエット。手足はちょっと小さく短め。
大きな口と眠そうな目を持った愛嬌ある顔たち。
全身が黄色い鱗に覆われながらも、お腹側は薄茶色でプニプニというかモチモチというかそんな感じ。
そのクセ、トサカというか背ビレみたいな部分は赤みがかってたりと、赤や橙の要素がところどころにあるせいで、なんだか子供のおもちゃかぬいぐるみ。
何の話をしてるかって?
決まってるでしょ?
今の私の容姿だよぅ……ッ!!
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今回は初回ということでもう1話公開します。
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