とある名前の出せない有名ゲーム世界にぶっ壊れ魔法使いが最初から仲間だったら

ゆうらいと

第1話 勇者の旅立ち

「勇者よ! さあ行け! そして魔王を倒すのだ」


 目の前で我が国の王がかっこよくポーズを決めていた。


 そして俺に手渡されるのは、一つの宝箱。

 わくわくして箱を開けると、中に入っていたのは、

 どうのつるぎだった。


「しけてるな」


 思わず口に出してしまう。


 周囲の兵士たちから殺気。

 王様に至っては人を呪い殺すような目をしている。


 魔王を倒せというなら最初からエクスカリバーとか渡せよ。

 そう思いながらも言い繕う。


「い、いえいえ。最近雨が多くて湿気てるなって」


 我ながらナイスフォローが効いて、みんな笑顔。

 俺は無事、旅立つことができた。

 あの兵士、絶対俺より強いよ。

 

 最初に向かうのは仲間探しだ。

 仲間は最大三名。


 戦士、僧侶、魔法使いがいいだろう。

 早速この城下町で一番有名な酒場へと向かった。

 酒場に入ると、大勢の客でにぎわっていた。

 屈強な戦士、清楚な僧侶、ひげを蓄えた魔法使い、セクシーな遊び人。


「セクシーいいな」


 そう思いながらきょろきょろと物色していると、肩をぽんぽんと叩かれた。

 振り向くとそこにはいたのは、大男だった。


 二メートルはあろうかという巨躯を包むのは、鋼の如き筋肉。腕は俺の腰くらいはあるだろう丸太のようなサイズだ。目は三白眼でえぐいほど眼つきが悪い。

 すさまじい闘気を放っている。酒場で。


「ひええええ、お、お助けを。手持ち2ゴールドしかないんです」


 そう土下座したが、


「ふざけるな。この我がカツアゲするような器の小さき男に見えるのか」


 と恫喝してきた。

 その時点で全財産の2ゴールドを捧げようと、ポケットを漁っていたのだが

 男はそのまま、衝撃的なことをいう。


「貴様、勇者だな。我が、うぬの仲間になってやる」

「え?」


 いやいいです。

 そっちのセクシーぃな娘がいいんです。

 といおうとしたのだが、首根っこを掴まえられていた。

 ずるずると引きずられながら酒場を出る。


「い、いや戦士殿、他にも魔法使いとかいるっしょ」

「ふざけるな」


 再び恫喝された。

 あまりの迫力に地が震えるし、俺の膝も震える。


「この我というものがいるのに、なんて浮気者だ」


 意味が分からず目を白黒させていると、男は続けた。


「この我が魔法使いだ。他に仲間などいらぬ」

「え、あんた戦士とか、武闘家じゃ、ねえの?」

 

 その筋肉、無駄にしてない?

 素朴な疑問をぶつける。

 男の目が大きく見開かれた。くわっ!


「よかろう。それほどまでにいうのならば、我が魔法をみせてくれる」


 と城下町の出口へと、顎をしゃくった。


 いや、すっかり夜が更けてます。明日にしませんか。

 そういおうとしたのが、当然のごとく、拒否権などなかった。


 勇者 レベル1 おとこ

 装備 ぬののふく、どうのつるぎ


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