≪護≫2

 高級牛肉の袋を両手でつかみながら、隼人さまが僕を見ている。

「これは、俺が焼くから。君は、手を出すな」

 めずらしく、強い口調で言われてしまった。

「わっ、わかりました」

 やばい。怒ってる……のか?

 表情は、いつもとあまり変わらない。でも、オーラが怒ってる気がする。


「すみません。まずかったですか」

「食費は、月に三万以内だから」

「えっ、そうなんですか? どうしてですか」

「予算が、そこまでしかないんだよ。

 贅沢がしたいんだったら、自分の給料から出して。そこそこ、もらえるはずだから」

 あせった。

 僕の分の食費は、隼人さまが払ってたのか……。っていうか、なんで?

 てっきり、西園寺家が出してるものだと思っていた。お金持ちなんだし。

 えっ? 待って。

 僕がいない方が、この人は、楽なんじゃないか?

「もしかして、光熱費も……」

「俺が払ってるよ。俺の給料から」

「えっ。もしかして僕、いらない子ですか?」

「……」

 隼人さまが、黙ってしまった。これはつまり、肯定してるってことだ。


 ふーっと、血の気がひくような感じがした。

 やばい。やばいんじゃないか?

 クビにされたら、仕事がなくなる……。


「今後、しないでくれればいいから」

「あ、はい」

「明日の昼は、焼き肉にしよう」

「はい……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る