元プロゲーマーと予言者の訳アリ異世界無双

@takoyade

第1話 プロローグ


 朝が着て、昼を通り越して夜になって眠る。


 そんな何の変哲もない日常にも、「未知」だったり、「変化」は必ずある。


 当時の僕は、変わらない平凡な日常が続くと本気で信じていた。




 これからするお話は、そんな僕が楽しかったり、恐ろしかったり、驚きがあったり、時には生死を彷徨っちゃう......そんなお話。


 是非、最後まで聞き届けて、楽しんでもらえたらと思っています。








 朝なのか、夜なのかも分からない。


 外界からの光が遮断されたこの場所は、深海の奥深くのように暗い。


 そんな暗闇に存在するたった一つの光は、パソコンに繋がれたモニターから放たれている。


 モニターを熱心に眺める少年は、日課のネットサーフィンをしている。少年の髪は伸び放題で、目の周りには隈ができ、いかにも根暗と言った風貌だ。


 手慣れた様子で、次から次へと画面をスクロールしていく。毎日のニュースやゲームのアップデート情報等、確認事項は山積みだ。


 しかしふと、一つの記事を目にして、首をひねった。


 その記事には、「プロゲーマーの卵募集中」という太文字が躍っていた。


 プロゲーマーという単語に、懐かしさと、複雑な感情を伴う思い出の数々が蘇った。


 そして大学の3回生ということもあり、求人関係の情報には興味を惹かれてしまう。


 早速「詳細」ボタンをクリックすると、いきなり、ゲームの利用規約のような細かい文字が画面を埋め尽くした。


 普段の僕だったら、一文字も読まずに飛ばすところだ。しかし、寝起きだったからか、不思議とスラスラ読むことができた。




(ええと......契約期間は最長2年、MMORPGMMORPG×FPSをモチーフにした次世代型ESPORTSゲームをメインでプレイしてもらいます。ゲーム未経験でも歓迎、学生でも働きながらでも可......)




 意外と悪くなさそうだ。いや、むしろ面白そう。


 一つ問題なのは、ホームページの配色デザインが古く、いかにもな胡散臭さを醸している事だが、別にホームページがダサいからと言って、良くない企業と断定するのもおかしいと考え直す。


 なんとなく目を通しながら下へスクロールしていくと、「応募」ボタンがあった。



 自然とカーソルは、蛍光色に彩られた「応募」へと吸い寄せられる。


 正直、自分が選ばれるなんてことは微塵も思ってはいなかったし、選ばれても、退屈な日常に少しでも楽しみができたら......そう考えていた。


 応募ボタンを押すと、ロード画面へ移った。


 白い背景に、ロード中の文字と共に回る円を眺めていると、寝起きなのに瞼が重く感じる。


 ふと気になり、蛍光塗料の置き時間を見ると、今の時刻は深夜の2時半だった。


 天井に向かって大きなあくびを一つ。近頃睡眠不足が続いていたので、睡眠時間を増やしたほうがいいかもしれない。


 画面を見ると、まだ画面はロード中のままだ。回線が混雑するわけでもないのに、やけにロード時間が長い。




(ねむ......さっきは目が醒めたと思ったけど、二度寝しようかな......)




 やはり円形の物体には、催眠効果があるのかもしれない。


 かつて感じたことのない眠気の中で、なんとか立ち上がり、ベッドを目指す。




(そういえば僕、応募画面で個人情報とか書いたかな......)




 たった今思い出したことだが、応募画面では何も入力欄が無かった気がした。


 バイトに応募するときでも、面接の前に生年月日と電話番号くらいは聞かれるはずだ。


 しかし、既に睡眠へ入りつつある脳は、結論を保留し、ベッドに横たわることを要求する。



(まあいっか......明日になったら確認してみよ)



 ベッドに横たわり、眠りにつくとき、最後に見たモニター画面には、「good luck !!」と表示されていた。








 奇妙な夢を見た気がする。


 暗くて、何も見えない場所をずっと落下していた。


 落ちていく僕は、まるで光になったかのようで、全身が光り輝いていた。




 僕である「光」は、落ちていく中で、様々な形に変わり、二つに分裂し、落下していく。


 落ちていく間、僕は自分を見ながら涙を流している。


 双子のように寄り添って落ちていく二つの光は、尾を引いて、彗星のように眩しい。


 自分が何故涙を流しているのか、美しい光景に感動しているのか、もはや判然としない。


 夢は、まるで永遠のように長かった気もするし、一瞬だったような気もする。


 光は、底知れぬ闇を降っていく......。




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