転生したら女神とヨロシク背徳合体する

西 喜理英

第1話 異世界ド底辺

 冒険者数名の無惨な死体が、あちこちに……転がっていた。

 

 死体はいずれも、

 剣と魔法の中世ヨーロッパ風世界の装備をしていたし、魔物らしきものの死骸まであった。



 ――俺は確かに、異世界に転生とやらをしたようだ。

 


 薄暗い洞窟の中、明かりが灯る方へと進んで行くと……。

 次第に異臭が、ただならぬものへと変わり、鼻を突く。

 

 拷問でも行われてるような、うめき声が聞こえてきた。

 怖いもの見たさで、ちょっと覗いてみるかと、更に奥へと歩を進める。


 とてつもない生臭い臭いに、むせそうだ……。



 ――目前では、どエロいことが! 


 繰り広げられ……ているのだが……。


 ……いや、エロいのを通り越してて――もう、

さながら阿鼻叫喚の地獄絵図だった…………。



 10人ほどの、まだあどけなさの残るような少女たちの責められようは、鬼畜も鬼畜……。

 あられもない姿勢で拘束され、さらけ出された白い柔肌には、禍々しい拷問器具のおびただしい凶器が、容赦なく食い込んでいる。


 ギンギンに脈打つ無数の毒蛇は這い、隙間という隙間に潜り込んでは、液体を溢れさせていた。


 あらゆる責めの限りを尽くし、比喩でなく、本当に骨までしゃぶるような勢いで――。


 ――醜いゴブリンの群が猛り狂っていた…………!



 仮に少女たちが、何とか逃げ出すことが出来たとしても、既に遅いだろう……。

 惨たらしい姿に変わり果てていたり、修復不能なまでに心的外傷トラウマを負って…………。



 ゴブリンたちは、俺に気づくと、一緒にどうだ? と、なんとフレンドリーに誘ってきた。 


 じょ、冗談じゃない!

 もうこっちは、ドン引きして、ゲロ吐いた上、小便をちびってしまっていた。


 俺は、ただちにその場から逃走した。



 ゴブリンの根城と化したダンジョンだったらしい。


 恐ろしさのあまり、もうかなりの距離を走った、走った。


 川が見えてきて、そのほとりに辿り着くや、転げるように倒れ、川の中に頭を突っ込んで、渇きを潤した。


 ようやく一息つけるかと思った。


 ふと、川面に目をやると、一匹のゴブリンが、こっちを睨んでいた。

 ひょ、ひょええ!? 


 ――いや、違う……それは、川面に映った俺自身の姿だった! 


 ……って、マジか! 


 なんと、俺はゴブリンに転生していたのだ。

 ヤツらと同じ醜い…………。

 

 オ――マイガッッッ!!

 こんなはずじゃ…………。



 ――そも俺は。


 こんな姿とは程遠い、ちょっとイケメンの大学生だった。

 まあ、イケメンと言っても、見た目だけしか良いところなしだが。

 コスプレイヤーやって、多少モテたりするくらいの。

 底辺の大学に通ってて、まるっきし将来の展望がなかった。


 ある時、一人暮らしだった俺の部屋に、同人誌即売会で知り合ったコスプレイヤーのJKが家出して住み着き始めた。

 おっ、バラ色の人生が始まるかと思った俺はバカだった。


 そのJKは自らを「ミダラ姫」などと名乗るとか、なんとも妙な源氏名があった。

 俺はまだメンヘラ女子というものがよく解っていなかったのだ。

 もうその面倒臭さたるや、想像の斜め上を行っていた。

 毎日、俺のPCにスマホの中身はチェックされたり、プライベートは無いに等しい…………。


 そう、俺は見事に地雷を踏んでしまったのだ。


 つくづく疲れ果ててしまい、別れたかった。

 しかし、別れてくれない。

 ああ、どうしたらこの悪夢から抜け出せるのか……と、そんな中。


 同年代くらいの女の子が訪ねて来た。

 少しばかり、会話を交わしたところで、俺は背後から、ミダラ姫に刺されていた。

 

 新興宗教の勧誘ですら嫉妬に狂うとか…………。


 かくて、俺はそれにより死んだ。



 しかし、別の世界で生きて行く機会を、神により与えられた。

 異世界転生するなら、そっちの言語も解るようにもするし、サービスでひとつ願いも叶えてやると言うので、俺は即座に叫んだ。 


 ――そんなの決まってるじゃないか。


「超絶どエロいことが出来る身分、キボンヌ――――ッッッ!」


 …………結果、そう言ったことを、後悔する羽目となったわけだった。


 *


 今や自分がマモノだということをつい忘れそうになる。


 うっかり、人里に近寄って、

冒険者に追いかけられ、経験値のかてにされそうになったり、

うのていで、あてどなく彷徨ってるうち、

いつしか力尽き、

行き倒れた…………。

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