第6話話し

「お前達に話があるんだ…」


部屋で遊んでいた二匹は俺の様子に遊ぶのをやめて目の前にちょこんと座った。


あのトラ猫の迎えが来る前に話しておこうと思っていた。


「俺の話が通じるかわかんないけど、話しておく。俺は明日この家を出てかなきゃならないんだ…だから明日からもうこの家には来るな。来てももう何もやらんし誰もいないからな」


二匹はコメンと首を傾げて俺の顔を見上げる。


なんか人の言うことを理解してるような節があったがやはり気の所為かな…


でも言葉として伝えておきたかった。


二匹はわかっているのかいないのか、近づくとそれよりもアレをくれと言わんばかりに足を膝に乗せてカリカリと引っ掻く。


かつお節の催促だとわかったが俺はあげるのをやめた。


ここで俺を嫌いにでもなれば明日は来ないだろう。


「もう帰れ!そろそろ迎えも来るだろう…」


「にゃ~ん」


そう言うと答えるように扉の方でトラ猫が鳴いた。


「ほら行け!もう…来るなよ」


あいつらの方を見れずに顔を背けて下を向く。


「「にゃ~ん?」」


二匹の鳴き声が胸に刺さる。


どんなに懐かれても今の自分には責任を持って育てる事も飼うことも出来そうになかった。


それよりも自分の明日さえ危ぶまれる。


明日から自分には住む家が無くなるのだ、あれから何度もコンビニや本屋にいって求人を見るがなかなか住み込みの仕事が見つからなかった。


猫達が出ていくと充は荷物をまとめる。


元々そんなに荷物は多くないが最低限の物は持っていきたかった。


必死に荷物を詰める姿をトラ猫がじっと見つめていた。




次の日猫達が来る前にと朝早く家を出た。


鍵はポストに入れて置くように言われていたので最後の戸締りをしてポストに鍵を落とす。


ガチャン!


鍵の落ちる音にもうここには入れないのだと実感がわいてきた。


猫達と遭遇しないようにと逆の道を歩く。


「よし!とりあえず仕事だ!」


気持ちを切り替えて本屋へと向かった!





「はぁ…」


結果は惨敗…


もう住み込みにこだわってる場合でなく、手当り次第バイトを探すが家のない若い男と聞いて皆二の足を踏む。


もう残っているのはきな臭いバイトぐらいだろうか…


明日はもうなんでもやる覚悟で探そう。


とりあえず何処か休める場所を…


充は重い荷物を抱えて人気の少ない方へと歩き出した。


気がつくと公園にたどり着く。


夜の公園は人はもちろん誰もおらず静まり返っていた。


充はベンチに腰掛けるとドサッと荷物を置いた。


ゴソゴソと鞄をあさると袋を取り出す。


猫達の為に買ったかつお節だ。


もそもそと食べて飢えをしのぐ、今日初めての食事だった。


「疲れた…俺、どうなるんだろ…」


充は荷物に寄りかかるといつの間にか眠りについていた。

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