第5話二人

「しまった!」


朝の日差しに慌てて飛び起きる!


充はあのまま寝てしまい気がつけば朝になっていた。


「あれ?」


見ると玄関の扉が開いていた。


あのまま鍵もかけずに眠ってしまったようだ。


まぁ盗まれるような物は無いから問題ないが…扉まで開けてたか?


起きて扉を閉めようとするとお腹に何か乗っているのに気がついた。


「え!?」


見ればあの二匹が丸くなって腹の上で寝ていた。


「お前ら…」


充の声に二匹は目を覚ますと、グッ~!っと伸びをする。


そして充の鼻に近づいて湿った鼻をくっ付けた。


「な、なんでいるんだ?」


そんな事より二匹が居ることに驚いていると…


「ニャアー!」


昨日の猫の声が家の外でする。


二匹を抱えて外に出るとあの猫がまるで迎えに来るように外で待っていた。


「ニャー!」


「ニャー!」


二匹は嫌だと言うよに充の肩によじ登る。


「痛っ!」


爪で頭の上まで登られ顔を顰めた。


頬に鋭い痛みが走る。

顔に二匹の引っ掻き傷が出来ていた。


「ニャッ!」


二匹は傷に気がつくと慌てて傷を舐める。


するとスっと痛みが引いた。


まるであの時の足の痛みが消えたように…


「傷が…お前達がやったのか?」


二匹は髭を立てて誇らしそうにしている。


「シャー!」


すると外の猫が怒るように鳴いた。


「ニャッ!」


二匹は隠れるように充の服の中に隠れる。


「ま、まぁまぁ。ほら、お前お迎えが来てるから帰りな、傷はありがとな…この前のも」


二匹にお礼をいってそっと下に下ろしてやる。


怒っていた猫はじっと値踏みするように充を見つめるとくるっと向きを変えて歩き出した。


二匹はそれをトボトボと追いかける。

そして何度も何度も振り返っていた。



その日から朝になると二匹はいつの間にか夜に忍び込み朝起きると充の布団の中にいた。


親猫らしきトラ猫は朝になると必ず迎えに来て二匹を連れて帰る。


二匹はやはりきょうだいのようだ。


一匹は縞模様が入った三毛猫でこちらが少し上のようだ、もう一匹は茶色の縞模様でなんかどんくさい。


三毛猫のする事をみて真似をするが一歩及ばすといったところだ。


二匹は何が気に入ったのか充の家に入り浸った。


二匹が来るとミルクとかつお節をあげるのが定番となっていた。


一度トラ猫にもあげてみたが口を付けなかった。


そうして三匹が毎日のように来る日が続いたある日…充は二匹に深刻な顔を向けた。

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