パーティー追放されたからって冒険者家業はやめられない〰医療・犯罪・不老不死〰
飛騨牛・牛・牛太郎
第1話
「不老不死が可能か、ですか?またどうしてそんなことを」
Vは目の前の男にそう聞く。
「いや、君は可能だと思うか」
小汚いというわけではないが、どこか怪しい風体。
いつもの通り冒険者業組合に向かったら、受付から紹介された。
なんでも「医療、治療関係に詳しい冒険者に個人的で極秘の仕事を依頼したい」という話とか。
組合は個人的に冒険者を使いたい人間のための人材紹介はしない。そもそも組合員は組合を通さない仕事は原則としてうけてはいけない。
なので普通は正式に依頼を出した後の面談で決めると説明して追い返すが、あまりにも熱心に頼まれ帰らないので受付嬢がVに回してきた。
迷惑な客を追い払えということだ。
いい加減な、と思うが受付嬢には世話になっている。まぁ厄介な人間の相手くらいは受けるしかないだろう。
「まぁ、長老長寿ならできるかもしれませんが、不老不死は無理じゃないでしょうか」
「つまり、どういうことだね」
歳はよくわからない。貧乏人という感じではないが、金持ちって感じでもない。
どこか浮世離れしている感じがある男。
「医療や医学は、まぁ原則、人を長く生きさせる技術です。今も流行り病やケガで死ぬやつがたくさんいますが、それでも昔よりは長生きできる可能性は増えているでしょう」
「確かにそうだ」
「人間じゃありませんが、吸血鬼は寿命はない。けれど特殊な病気にかかるから死ぬ。と言われてます。なのでその病気を克服する方法が何か見つかれば、彼らはもっと長生きできると思います。それと同じように人間も病気やケガを克服する技術ができれば長生きすることはできると思います」
死神が肩をたたく、と吸血鬼の世界では言うそうだ。
「衰えにしても、健康的な生活をする金持ちは衰えが少ない、という話もあります。ですから、なるべく衰えないでいきる方法というのはあるでしょう。実際、長生きしている爺さんばあさんには、若い連中より元気だと呆れられる人もいますしね」
Vはあえて回りくどく言いながら質問の意図を探る。
医者や魔法使いと知り合った際に話の種にこういう質問をする。ならわかる。
けれど冒険者相手の話だ。なにか仕事を依頼したいのだろう。そのためのテストとみたほうがいい。
しかしなんだ。不老不死。完全な夢物語。雑談の種にしかならない。
「ただ、どんな生き物も、見た目に現れなくても、衰えていくものです。年を取れば呆けていきますし、内臓、関節、いろいろなところにガタが来る。これを完全に治すのは無理だ。ですからなるべくガタが来ないように、機械で例えれば、長く維持するための保守点検や修理という方法はあるでしょうし、医療や医学はそれを求めていくでしょうが、それでこの世界の終わりがくるまで持たせるというのは不可能だと個人的には思いますよ」
「そうかね。なるほど。なるほど」
この答えで納得したようにうなづく。
この雰囲気、どこかで見たことある。
そうだ。
「もし、何かしら依頼があるならまず冒険者組合に通してください。それが組合のルールですし、組合外で仕事を受ける冒険者など怪しい奴ですから近寄らない方がいいです」
「そうか。うん。なるほど、考えてみるよ。先ほどの受付嬢に謝っておいてくれないか」
そう言って男は立ち上がり、建物の外へ向かっていった。
「なんなんだか」
あの浮世離れした雰囲気。学校にいたころ何人か見たことがある。
「学者か?」
世間知らずの専門馬鹿。そういった類の学者があんな感じだった。
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