とりあえず、告白してみたら案外上手くいくらしい
葦月平
プロローグ
度胸試し、後先なんて考えない、軽はずみな行動だ。友達に乗せられ、深夜テンションも相まってやってしまった愛の告白。エイプリルフールだから許されるよね、なんて甘い考えで送信ボタンを押したのはどこのどいつだ。僕だよ。
スマホの画面には、『ずっと前から好きでした、付き合ってください』とごく普通の愛の言葉が綴られている。
四月一日なんだし、分かるよね。きっと、嘘だと分かってジョークの一つや二つ飛ばしてくれるに違いない。
後ろからニヤニヤと覗く三河の頭を定期的に叩きながら、反応を待つ。
ピコンと通知音がする。固唾を飲みながら、スマホの画面を開く。
『付き合ってやらんこともない』
「流石、先輩冗談と分かっていながらも、一度乗るというユーモアも兼ね備えている。流石だなー」
僕の声に抑揚はない。平静を保つためのでまかせだ。
僕は先輩のことはよく知っている。あの人は純粋で騙されやすい。しかも、素直じゃない言い方をするときは大抵照れ隠しだ。僕がこの前、髪型を変えた先輩に「可愛いですね」なんて言ったら、頬を赤らめながら、「ま、まあ、私は可愛いからな!」とうろたえていた。
冷や汗をかく僕を追い打ちするようにピコンとまた音が鳴った。恐る恐るスマホを見ると、そこには、
『私も好きだ。明日部室にはくるか?』
チェックメイト。先輩は嘘なんて微塵も思ってはいない。
『来てほしいな♡』
付き合いたての中学生みたいな文面に目が眩む。僕の胃をキリキリと痛めつける、地獄のデートのお誘いだ。
顔面蒼白な僕の顔を見つめ、元凶ともいえる三河はいう。
「初彼女おめでとう…」
なんとも言えない表情の三河。ありがとうなんていう気力もなく、僕はあらかじめ打ち込んでいた嘘ですという言葉を消す。
こうして、新田友春と相園あかりは付き合った。
四月一日、今日はお赤飯かな?
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