第53話 これは通るなということですね。(ヤマセミ)

 気がつけば、三月ももう後半。


 天気が良かったので、散歩がてらバードウォッチングへ行ってきました。


 外へ出ると、吹く風はそんなに冷たくありません。道端には野の花が咲き、畑にはモンシロチョウでしょうか、白いチョウがひらひら飛んでいます。すっかり春になりましたね。


 いつものバードウォッチングコースを歩いていると、上空を高速で飛ぶ小さな鳥に出くわしました。シュッとした黒いシルエット。よく見ると、お腹は白い。あれは、ツバメ!? もうやってきているのか!


 証拠にと、カメラを向けてみましたが、小さいうえに速すぎるので、まったく捉えられませんでした。


 ちなみに田んぼには、まだツグミが見られました。冬鳥のツグミと夏鳥のツバメが同時に見られるとは。やはり春は良い季節です。


 さて、今回はなんだか調子もいいので、途中の分かれ道で、普段とは別の道へ行ってみようかなと思いました。別ルートは帰り道が遠回りになります。でも、あまり行かない道なので、もしかしたら出会いがあるかもしれません。


 そう決めて、分かれ道の川沿いに着いた、その時。


「キャー!」


 どこからか、甲高い悲鳴のような鳴き声が……。今、私が行こうとしている道の先で、白いなにかが飛び立ったではありませんか!


「ヤマセミだー!」


 ヤマセミは道のさらに先にある、対岸から生えた木の枝にとまったようでした。少し近づいて、カメラを向けてみます。いました。白黒の鹿の子模様。間違いなくヤマセミです。


 前回出会ったのは、十二月頃。この川では何度もヤマセミを見ているので、もはや常連さんです。


 何枚か写真を撮って、双眼鏡も取り出して観察しました。


 さて、困った。私が進みたい道の先にヤマセミがいる……。


 川の対岸の木にとまっているものの、おそらくすれ違ったら、飛んでいってしまいます。なんだか飛ばすのが申し訳ない。ヤマセミ様の横を通るのが畏れ多い……。


 などと思いつつ、しばらく観察していましたが、ヤマセミはどこかへ行く気配もなく、枝にどんっととまっています。狩りでもしないかなと期待してみますが、動かない。そして私は待つのがとても苦手です。


 結局、私のほうが先に折れました。ヤマセミと別れ、Uターンしていつもと変わらないコースへ向かいます。


 その後は、特に大きな収穫はありませんでした。やっぱり遠回りコースへ行けば良かったかなと思いつつ、でもヤマセミ様がいたから、あれは通るなということだったのかなと自分を納得させています。




《今回見た鳥》

・ツバメ(?)

・ツグミ

・モズ

・アオサギ

・カルガモ

・トビ

・ヤマセミ


《今回撮れた写真》

・ヤマセミ

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1638119411726041088

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