第8話 願え、さすれば……。(ツグミほか)

 ある日、私は願った。


「ツグミに会いたいなー」


 ツグミとは、ムクドリくらいの大きさの鳥で、冬にやってくる渡り鳥だ。茶色っぽい翼をしていて、お腹は白くて黒い点々模様がある。ボテッとした姿がかわいらしく、冬が来たらこの鳥を思わずにはいられない。私が一番好きな鳥である。


 家の近くで鳴き声は聞いていたのだが、今季はまだ姿を見ていなかった。今回こそはその姿を見て、あわよくばカメラに撮りたい。


 そう願い、いつものコースでバードウォッチングをした帰り道。出会いは突然にやってきた。


「ツグミだ!」


 家に着く手前でツグミを見つけた。木の枝の上にとまっていた。しかも近い。五メートルほどしか離れていなかっただろう。飛んでいかないか心配だったが、ツグミはおとなしくとまっていた。私はしばらくの間、観察して、カメラにその姿を収めることができた。


 またある日、私は願った。


「トビの飛んでいる姿が撮りたい!」


 これは私が、カメラを手に入れた時から思っていることだった。まずはトビが撮りたい。カワセミやミサゴも良いが、まずはなじみ深いトビを撮ってからにしたい。


 そう願いつつ、いつものコースへバードウォッチングへ出かけた時、出会いは突然にやってきた。


「トビだ!」


 上空に、弧を描きながら飛んでいるトビの姿があった。しかも近い。上空へカメラを向け、幸運にも大迫力の姿を撮ることができた。


 またまたある日、私は願った。


「そろそろ、キジを撮りたいな」


 トビを撮ったら、次に撮りたい候補にキジがあがった。日本の国鳥なのだから、これはカメラに収めたい。いつものコースを歩いていれば、いつか田んぼで出会えるだろう。


 そう願いながら、今回は野鳥公園へバードウォッチングへ出かけた時、出会いは突然にやってきた。


「キジだっ」


 野鳥公園にある観察小屋の二階で鳥を見た後、階段を下りて、ふとドアの向こうの原っぱを見た時、その鳥はいた。しかもかなり近い。私は慌てながら、そろりそろりと階段の後ろに隠れた。驚かせないようにゆっくりとした動作でカメラを構え、シャッターを押した。


 またまたまたある日、私は願った。


「今年はまだシロハラを見てないな。会えるといいな~」


 シロハラとは、ツグミと同じ仲間で、冬にやってくる渡り鳥だ。灰色っぽい翼をしていて、名前のとおりお腹が白い。ツグミは開けた場所によく出てくるのに対して、シロハラは木の影など薄暗いところを好み、なかなか見つけにくい鳥でもある。


 ツグミを見たのだから、次はシロハラを見たい。そう願いながら、いつものコースをバードウォッチングしていた時、出会いは突然にやってきた。


「シロハラだ~!」


 気配を感じて見上げると、そこにシロハラがいて、こちらを見つめていた。これも近い。私は足を止め、驚かせないようゆっくりとカメラを持ち上げた。シロハラはすぐに茂みの中へ隠れてしまったが、その姿を撮ることができた。


 またまたまたまたある日、私は願った(以下略)。


 ……と、このように最近、私は会いたい鳥に会える確率が高くなっているような気がする。


 これは、私の強い思いが宇宙を巡り鳥の本能を刺激して互いを引き寄せ合っている、ということではない。


 ただ、「見たい!」と思って、その鳥を頭の片隅でイメージしながら歩いていくと、鳥が目につきやすくなり、結果的にお目当ての鳥に出会う確率も増すからではないかと思う。


 まずは「見たい!」と強く願うこと。それが、バードウォッチングを楽しむためのひとつのコツではないだろうか。


 さぁ、願おう。できれば今年中に、オオタカとフクロウとトキが見たいです!



追伸

・撮ったツグミの画像がこちら。

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1473955495631532036

・トビがこちら。お気に入りの一枚です。

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1479062974434508804

・キジがこちら。

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1480854957821919233

・シロハラがこちら。

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1484796212813336581

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