第16話 美少女ニートアカバネとの再会
施設内で労働が発生している箇所は、常にニートピアからの求人案内が張り出されていた。例えば、僕らがいるこの食堂も、従業員は皆白いマスクに姿に白衣を着ているから誰が誰だか分からなかったが、大半の作業員がニートモであるという。
「別に欲しい物はないけどなあ」
「売店で売っているのは何も食いモンだけじゃない。書籍やCDにゲームソフト,いやパソコンでダウンロードできる全てのものだって、ニータでしか購入できないようになっている。逆に言えば多額のニータさえ保持しておけば、個室内で悠々自適な生活が送れるというわけだ」
発売間近のゲームソフトは確かに欲しかった。パソコンでダウンロードすれば、ゲーム本体ごと取り寄せられると言う。
「そうだな、じゃあ少し考えてみるか」
そんなことをうだうだと話していると、銀髪の少女がすっと僕の傍を通った。先日、僕らを助けてくれたアカバネという女の子だ。
「ホビット、あれ、アカバネじゃない?」
「お、そうだな」
「何でアカバネって呼ばれているの?」
「さあな、東京都と埼玉県の境目に住んでたからじゃないか?」
アカバネは厨房前で食事を受け取ると、壁際の誰もいないテーブルを一人で占拠した。誰も近づけない、というか近づかせないというオーラを放っている。
「ちょっと話しかけてもいいかな?」
僕は椅子から立ち上がった。
「やめとけ」
ホビットが浮かない顔をして言った。
「どうしてさ。この前のお礼を言わないと」
「ヤツのジャージの色を見て見ろ。赤色だ。つまりはグロイカ寮の生徒だぞ。あんまり関わらない方がいい。何よりアイツは……」
ホビットの忠告なんて聞いてらんないよ。これは運命の出会いってヤツだ。
僕は彼女へ示す興味の方が強かった。確かに近寄りがたいほどの美少女ではあったけれど、何より切れ長のあの目で話しかけられた時のゾクゾク感が今でも忘れられなかったんだよな。スケベな野郎だ、なんて思わないでくれよ。これでも一応思春期の男の子だからな。
「や、やあ。こんにちは」
僕は手を振りながら彼女のいるテーブルに近づいた。
「どうも」
そっけない態度でそう言うと、アカバネは両手を胸の前で合わせてから箸を握った。
「先日は助けてくれてありがとう。その何ていうか……」
気が付くと、ホビットが僕の隣に立っていた。いいところなのに邪魔すんなよ、そう言いたげな目でホビットを睨み付けた。それに反抗するようにホビットも背伸びをしながら僕を睨み返す。
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