第33話 何としてでも ※リカード王子視点

 婚約者となったメイヤが、ナディーンの研究資料を持ってきてくれた。よくやったと彼女の働きを褒める。


 しかし、何度もこの手段を使うことは出来ないだろう。何か、他に良い方法を考え出さないと。ナディーンから、魔法の研究成果を引き出す方法を。今までは、素直に研究の成果を提出してくれていたのに。面倒なことになった。


 こうなる前にもっと、彼女に気を使うべきだったか。


 いいや、あのまま関係を続けるのは無理だった。だから仕方ない。それに、浮気を暴露されて、あんなに恥をかかされたんだ。彼女は許されないことをした。


 いつか、彼女を貶めたいと思っていた。だけど、ナディーンの研究が王国のために役立つということも分かっている。


 だから俺は、考えを改めた。ナディーンの能力を王国のために使い尽くしてやる。それぐらい、彼女には利用価値がある。だから許そう。




 とりあえず、手に入った研究の資料について宮廷魔法使いに解析するよう命じる。今までは、ナディーンが分かりやすく解説してくれた。それを陛下に報告していた。


 だが、メイヤが持ってきてくれた資料には解説がない。この研究資料がどのように役立つのか、どんな魔法道具を作成できるのかが分からないような状況。これだと、陛下に報告することは出来ない。


 だからまず先に、手に入れた資料を宮廷魔法使いに渡して調べ上げろと命令した。それなのに。


「分からない? どういう事だ!?」

「えっと、その……。解析を試みましたが、我々には理解できませんでした」


 宮廷魔法使い筆頭の男性が、解析することは出来なかったと報告してきた。そんな馬鹿な。


「あの資料に書かれいてる魔法効果がどういう意味なのか、何に作用するのか理解が難しく。資料の実験内容や結果もよくわからなくて、我々では理解不能で……!」

「お前たちは王国を代表する魔法使いなんだぞ! それなのに、小娘の研究していた内容も分からないだと!」

「で、ですが……」


 確かに、彼女は天才なんて呼ばれていた。以前、提出された資料の数々を目にした宮廷魔法使いも絶賛していたようだ。


 だが、一回りも年下の女が研究していた内容がどういう意味なのか、役に立つのか立たないのかも分からないなんて。


 言い訳を続ける宮廷魔法使いに、怒りが湧き上がってくる。


「何としてでも、あの資料を調べ上げるんだ! そして、ちゃんとした成果を持って来い! それ以外の報告は許さんぞ!」

「……っく」

「返事はどうした?」

「了解しました」


 報告しにきた宮廷魔法使いを追い返して、次は必ず良い結果を持ってくるようにと命令する。それ以外は、許さない。


 宮廷魔法使いを雇うのに、王国がどれだけの大金を支払っているのか理解しているのか。その金に見合う働きをしてもらわないと困る。

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