第34話 満喫旅
「連絡ありがとう。こっちでも把握しているわ。妹が勝手に、私の研究室に侵入したのよね?」
「そうです。どうしましょう?」
屋敷から旅立ってすぐ、魔法研究室の管理を任せていたメイドが申し訳無さそうに連絡してきた。
どうやら予想していた通り、妹のメイヤが研究室に侵入したらしい。置いてあった資料を勝手に持ち出したようだ。
研究室内に設置していた撮影機の映像を確認してみると、妹が侵入している様子がバッチリ記録されていた。しかも、何度も繰り返して。
一番最初の記録は、私が屋敷から旅立った日の翌日だった。顔を隠して忍び込んでいたけれど、バレバレの変装で。なんというか、呆れて言葉も出ない。
「貴女は、何も気にしなくて大丈夫よ。悪くないんだから。今後も関わらないようにしなさい。面倒だから、目をつけられないように注意して」
「わかりました。彼女とは関わらないように注意します」
盗まれても問題ないから大丈夫。研究室の管理を任せていたとはいえ、侵入された責任を彼女に追及するつもりは無い。それを聞いて、彼女はホッとしたようだ。
盗まれた資料を取り返そうなんて思わないように、関わり合いになっちゃ駄目だと忠告しておく。
「えぇ。それじゃあ、また何かあったら連絡して」
「はい。失礼します」
通信を終えて、私は気持ちを切り替える。今は家のことも忘れて、思う存分旅行を楽しもう。
「お母様、気分はいかがですか?」
「とても楽しいわよ。外の世界って、こんなに広かったのね」
「そうですね」
馬車の上で景色を眺めながら、お母様が楽しそうに笑っていた。
体調も良くなって、とても嬉しい。これで、今回の旅行の目的を半分は達成した。後の半分も順調に達成している。
色々な場所を巡って魔法に関する資料を見つけ出したり、魔法道具の作成に使える特別な素材を入手することが出来ていた。大満足である。
モーリスの商会が用意してくれた馬車は、とても快適だった。御者の腕も良くて、長時間乗っても疲労が少ない。
派遣されてきた護衛達も優秀で、必要以上に馴れ合うこともない。適切な距離感を保ってくれて、とても気楽に旅が出来ていた。
まさに、私の求めていた旅行。準備を整えてくれたモーリスには、次に会った時に必ず感謝しなければ。
そして、私達の次の目的地はデュラレン王国。何百年も前から魔法を研究している国として有名だった。しかし、数年後に王族の権力争いが起きて王国は滅びの一途を辿ることになる。研究してきた魔法の知識も、その争いの最中に失われてしまった。
もっと早く、デュラレン王国を訪れておくべきだったと後悔した。なので今から、その後悔を晴らすために向かう。
今の時期に行けば、まだ権力争いが起きていないか、もしくはまだ争いは激化していないはず。未来では失われてしまった魔法の知識を手に入れるために、今のうちに行ってみる。
デュラレン王国が研究してきた魔法とは一体どんなものか、今から楽しみだった。
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