第1節 千雪がいく!ー魔大陸編ー

@anyun55

第1章 修行時代

第1話 魔王召喚

 


 ここは,日本ではない。日本と似ている月本という国だ。でも,社会体制は,日本に似ているが,総理大臣ではなく,代わりに大統領がいるという国だ。


 この月本国の首都,西京の外れにある民家に,一人の少女がいる。


 彼女の名は,早乙女千雪,15歳,高校1年生。親は海外で生活している。彼女は現在一軒家でひとりで生活中だ。


 千雪は高校を行かなくなった。理由は簡単だ。千雪が美人だったからだ。いや,絶世の美人と形容してもいいのだが,その美をうまく胡麻化そうと努力してきたのだが,それでもその美を完全に隠せなかった。


 そのためストーカーなどの被害にあったり,クラスの女性にいじめにあったりしたのが原因だ。今は,無理やりソバカスを作ってブス化した。


 学力の面では,記憶力は比較的いいほうだったためか,高卒認定試験は軽くクリアできるレベルだ。だが,大学に行くつもりはないので,受けるつもりはない。


 彼女の愛読書は,魔法関連の本,占い,占星術,中国の八卦,西洋魔術などだ。将来は,占い師,未来の予言師、悪魔祓い,除霊師になって,インスタやユーチューブなどで有名になって,生活できればいいと漠然と考えている。いずれは,彼女の目の前に,きっとすてきなイケメンの男性が現れて,恋に落ちて,家庭をもって,幸せな一生をおくる,ということを夢見ている。


 ここ数ヶ月は部屋に引きこもって,ネットと占いの本ばかり読む日々だ。そんな折,ネットで悪魔召喚のホームページを見つけた。その召喚の具体的な方法が詳しく記載されていた。


 『乙女たちよ。魔界の魔王を召喚せよ。さすれば,魔法をしんぜよう。世界の富,栄華を得ることができるであろう。ただし,対価を払ってもらわねばならぬ。魔法の習得ができたら,われに半年間下僕として仕えることを課す。

 以下の魔法陣に,真夜中の0時ちょうどから5分間,強くわれの召喚を念じるだけでよい。念が弱いと,召喚は失敗する。召喚が成功次第,このページは消滅する』


 千雪はまったく疑うことをしなかった。どうせ高校もいかないし,半年間,魔王の元で働くのもいいかなぁ,と軽く考えた。それに,魔法が使えるようになるなんて,なんてすきなことなんでしょう,と期待と夢が膨らんだ。


 真夜中の0時。


 冗談半分で,5分間ほど,声を上げて,モニター画面の魔法陣に向かって語った。


 千雪「魔王さん,ぜひここに来てくだい。魔王さん,私の願いを叶えてください。私に魔法を与えてください。ここに書かれてある条件は,すべて同意します。半年間,魔王様の下僕として働きます」


 すると、画面の魔法陣が光りだした。そして,さらに一層強く光だし,目が開けていられないほどだった。光が止み,目をあけると,そこに、一人の男性が立っていた。


 黒のマント姿で,中肉中背の,いかにも魔王というイメージ通りの姿がそこにあった。年齢は16歳前後。髪はややぼさぼさ頭で,見だしなみにあまり気をつかってないようだ。キリッと鼻筋の通ったイケメンであり,千雪の好みの顔だ。


 魔王「私を召喚したは,あなたか?」

 ちょっとぎこちない月本語をしゃべりだした。

 千雪「魔王様ですか?私、早乙女千雪です。千雪と呼んでもらうと嬉しいです。15歳です。とても健康です。かなりソバカスがありますけど,かなりの美人だと思います。半年間,魔王様の下僕として働くことも納得しています。今すぐにでも働けます。どうか,魔法をお与えください」

 魔王「千雪というのか。良い名前だ」

 魔王は,ところどころ傷があって,一部分が欠けていて,ぼろぼろの指輪を取り出した。

 魔王「この指輪は,魔界では,古来から伝わる伝説級の指輪だ。これを入手するため,幾多の血が流れたことか。これを今,千雪に与える」

 魔王は千雪の左手を握り,その薬指に指輪をはめた。千雪は,この指輪があればすぐ魔法が使えると思って感激した。

 千雪「この指輪がとても貴重なものだということはわかりました。魔王様の元で,一生懸命務めさせていただきます」

 魔王「あなたはこれから魔法を習得するために,修行をしなければなりません。その修行を指導するのは,私ではありません。どのくらいの期間で魔法を習得できるのかは,あなたの指導者に聞いてください」

 千雪はちょっとがっかりした。指輪をもらったら,すぐに魔法が使えると思ったからだ。

 千雪「すぐに魔法が使える訳ではないのでか?なんか,ちょっと残念です,,,」

 魔王は,千雪の言葉に反応せず,肌色のブレスレットを取り出して,千雪の左腕につけた。

 魔王「これは一定の魔力が身についたら、その魔力に反応して、自動で私の元に転移する魔道具だ。これを肌身離さず身につけなさい。私がどこにいようと、魔道具が導いてくれる。それまでは,魔法の習得に専念しなさい。下僕になるのは,私の元に来てからでよい」

 千雪「魔王様,ブレスレッドの方はわかりましたけど,指輪の使い方がわからないのですけど」

 魔王「何もしなくてもいい。自ずとわかるはずだ。なにか質問はありますか?」

 千雪「はい。なんか,いろいろ聞きたいのですけど,ちょっと頭が混乱していて。あの,魔王様の元に転送される前に,魔王さまと連絡とる方法ってあるのですか?」

 魔王「連絡は不要だ。魔法の習得はかなり厳しいと聞きている。千雪よ,あなたとは,今日が初対面だ。だが,私は確信した。一目みて,千雪には,その試練に耐えるだけの力があると。どうか,私の期待に答えておくれ。」

 千雪は嬉しくなった。

 千雪「はい,魔王様。ご期待に答えたいと思います」

 魔王「そうか。よかった。では,私はもう戻ることにする。ではさらばだ」

 魔王は自分のブレスレットを触り,時空亀裂魔法陣を起動して自分の世界に戻った。


 千雪はなんか幸福に包まれたような感じがした。


 千雪は『はい,魔王様。魔王様のために、身も心も捧げます。この身は魔王様のものです』と独り言をいった。そして,ベッドに潜り込んで,ぼろぼろの指輪とブレスレットを眺めながら,そのまま寝入ってしまった。


 しばらくすると,指輪から勝手に時空亀裂魔法陣が起動した。そして千雪の体は,その魔法陣に吸い込まれて,異空間へと転送された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る