『通りすがりの幽霊さん?』

やましん(テンパー)

第1話 『地下道の前で転んだとき』


 『これは、一部の事実と、妄想による、あくまで、フィクションである。』





 年なんかとりたくないよ。


 転びたくなんかないもん。


 でも、最近は、なんだか、よく転ぶようになった。


 わざと、転んでるわけではない。


 あなた、擦り傷だらけに、好き好んでなりますか?


 でも、年寄りが転がっても、しくじっても、必ずや、助けがあるとも、限らない。


 世の中、甘くはない。



 ある日のひるま。


 ぼくは、半地下になっている、国道下の随道をくぐろうとしていた。


 元々あった道の上に、新しい道路を通すにあたって、何故だか半地下にしなおしたので、危ない壁ができた上に、直進するには、わざわざ四回も90度曲がって坂道を上がり降りしなくちゃならなくなった。


 時々、前を良く見ないで、真っ直ぐに突っ込んでしまうバイクや、自動車があったらしい。


 最近は、そうした話は聞かなくなったが。



 このところ、ちょっとだけ、足腰が弱くなっているとの認識はある。

 

 分かってはいるのだ。


 指摘されたくはないけどね。


 狭い、気持ちだけの歩道を降りていたら、先でなにかの工事をしていたらしく、ガードマンさんが立っている。


 ついでに、暑い最中であり、その方は、水筒を、歩道の上に置いてお仕事をしていた。


 つまり、ぼくは、歩道からちょっとだけ下がった車道側に、はみ出して歩く必要性に迫られた。


 これが、歩く歩幅の読みを狂わせた。


 おまけに、そこは、何故だか分からないが、小さな砂利が少しだけ溜まっているのである。


 だから、足元に、小さなボール玉が溜まっているのと、同じであるわけだ。


 だからして、滑るなと言うほうが、無理である。


 すてーん、と、見事にいった。


 くだんのガードマンさんは、すぐ脇で見ていたが、彼は、ちょっとすまなさそうに、こう言った。


 『自分は、仕事だから。』


 つまり、そこは、割に交通量が多いのだ。


 彼は、その、自動車の処理をしなければならいわけだ。


 それで、助け起こせないと、言ったわけである。


 あとから思えば、ぞっとする。


 タイミングが、悪ければ、タイヤが頭の上を走ったかもしれない。



 しかし、まあ、通常なら、確かに分かる話だ。


 転んだ自分が悪い。


 しかし、としのせいか、なかなか、立ち上がれない。


 なんだ、これは。


 おかしいじゃないか。


 すると、向こうの方にいた、ベテランさんらしきガードマンさまが走り寄ってきて、引っ張りあげてくださった。


 良い力である。


 たいへんに、心地よかった。


 『大丈夫ですか?』


 大丈夫ではないとは、言えない。


 ズボンのお膝のあたりは、地面に切り裂かれてしまっているみたいだし。


 いくぶん、擦りむいたりはしているようだが、ま、大したことはないようだ。


 『え、大丈夫です。はい。』


 ぼくは、その先に行くのは、一時、断念し、家まで引き返すことにした。



 で、ふと、気がついた。


 だれかが、見ているぞ。


 壁のあたりみたいだな。



 あら、気のせいかしら。


 ごめんなさい。



 他人事だと思うべからず。


 危ない場所は、良く、注意すべし。


 とくに、年寄りは、自分の過信は、自滅の元。


 貴方だって、としはとるのだ。



 

    ・・・・・・・・


           つづく……カナ?



 


 


 

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