自然由来 ― 果実 ―

兎野熊八

第1話ー 誕生 ー






∞ ∞ ∞




 タン、タン、タタタン――。

 

 踊るような雨音の中、私は彼女を生みました。

 

 恵みの雨、大地をうるおし、草木を育み、命をもたらす雨の中、喚き叫ぶ産声が上がりました。

 

 踊るような雨音の中、彼女が生まれたのです。

 

 あぁこの誕生をお祝いください。

 

 神経を駆ける花火、歓喜の感情、痛みを掻き消す雌の本能に、この顔は今にも蕩けてしまいそうです。

 

 嗚呼、ああ、嘻嘻。

 

 舞踊の雨音が万雷喝采の拍手に聞こえてくるほどに、この時が恍惚で、満たされる充足感で骨身までトロけてしまいそうで。

 

 でも、あぁどうして……

 

 どうしてそんなに泣くのか。

 

 こんな母の心中を察しているから、泣いてくれるのだろうか。

 

 あぁなんて優しい子、美しい子、慈しい子。

 

 恐れないで、怖がらないで、大丈夫。

 

 あぁなんて、なんて、――





『 ■■■ソウ 』


 

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