第18話 ギフトで

 風のように走り去ったオ・ウゴンさんの後には災難がやって来た。それは建設途中のウチとカオウメイジン国共同の港町【リカオン】からの報告だった。


「陛下、リカオンに海上からの攻撃が加えられました。幸い、陛下のギフトとヤエ様の聖別により攻撃が町中に届く事はありませんでしたが」


「それで、向こうは名乗りを上げたのかな?」


「はい、ヤツらは北大陸にある人族の王国【ガー・イコク】からやって来た兵士達で、邪悪なマ族と共にすごそうとする人々を滅ぼす為にやって来たと主張しております」


 全くどうしようもない人って何処にでも居るよね。さてと、どうしようかな。僕は少し考えてからカオウと一緒に行くと伝えた。報告に来た伝令兵はかしこまりましたって返事をして、休みもとらずに戻ろうとしたから、ヤエに言って休ませて、違う兵を伝令に向かわせたんだ。


「という訳なんだよ。カオウも一緒に行ってくれるかな?」


「勿論だ。リッター。私もそやつらを懲らしめてやりたい」


 僕は転移装置を使用してカオウメイジン国へ来てカオウに事の経緯を伝えたんだ。


「今回は僕にヤらせてくれるかな。女神様のギフトを試してみたいんだ」


「おおっ! そう言えば言ってたな。リッターは女神○■●□様からギフトを頂いたと」


「うん、その中で使用してみたいギフトがあるから試してみても良い?」


「分かった。今回はリッターに任せて高みの見物と洒落込もう」


 そして、僕らは建設途中の港町【リカオン】にカオリの魔法で連れて来て貰った。ヤエも一緒に来てるけど、何故かバイトは走って来いとカオリとヤエが言ったらしくて、まだ来てないんだ。まあ、バイトなら後ニ〜三十分後には到着するだろうけどね。


 それから僕とカオウは海に碇泊している五艘の船を眺めていた。船からは拡声魔法で降伏勧告がされていたけど、頭が可笑しいのかな? 自分達の攻撃が届いてないって分からないのかな。


 僕はカオリに言って拡声魔法をかけて貰った。


「船のガー・イコクの兵士に告ぐ。僕はリッターセンキロ国王のリッターだ。今すぐに船を反転させて自国に戻るなら攻撃してきた事を不問にしよう。けれども、反転させずに居座るならコチラからも反撃させて貰う。答えは如何に?」


 僕の言葉にガー・イコクの将軍が返答した。


「愚かな! 我らはマ族にくみする輩を成敗に来たのだ! そう、其方らをなっ! コレより我らも本気で攻撃させて貰う! どのような強力な結界であろうとも、我らの本気の攻撃の前では紙の壁に等しいぞっ!! 恐れ慄き、震えて泣き叫ぶが良い!!」


 その言葉にヤエがキレそうになったけど、僕はギフトを試したかったから、ヤエを止めたんだ。


「ダメだよ、ヤエ。僕のお楽しみを奪っちゃ」


 僕の言葉にヤエが畏まって申し訳ございませんと謝ったけど、僕は笑って許したよ。だって僕の為に怒ってくれてるんだからね。


 カオウがそんな僕達を見て言った。


「リッター、それでは見せてくれるか? 女神○■●□様からのギフトを」


 僕は頷いてギフトを発動させたよ。


「ギフト【こう】より、【工兵こうへい】!」

「ギフト【ごう】より、【剛兵ごうへい】!」


 僕は工兵こうへいを三十に剛兵ごうへいを三十ギフトにより創り出した。

 

工兵こうへいは船に向かい、船底に大穴を空けてきて。剛兵ごうへいはアソコに見える建設資材用の岩を船に投げて」


 僕のこの非常な命令を即座に遂行する為に工兵こうへいは海に向かい、剛兵ごうへいは資材置場に向かう。建設用の岩は加工前で直径ニメートル前後のサイズだけど、剛兵ごうへい達は片手で持ち上げてポンポンと感触を確かめている。

 まだ投げてないのは、工兵こうへい達が船底に穴を空けるのを待っているからだ。

 穴あけが完了したら、工兵こうへいから剛兵ごうへいに完了連絡が届く。ソレを待っているんだ。


 と、その前に最後の通告を出しておきますか。


「ガー・イコクの兵士達に告ぐ! 降伏するなら今のうちだよ! 間もなく攻撃を開始するから! ソレからさっきからそちらが攻撃して来てるけれど、全て防いでコチラには何の被害も出てないからね。そこの所を良く考えてみて!」


 けれども僕の最終通告も彼らには伝わらなかったようだ。徹底交戦だーって聞こえたから、僕は船底に着いた工兵こうへいに合図を出したんだ。


 船底に穴が空いて傾く船に、剛兵ごうへい達が岩を投げつける。彼らの投げる岩は的確に船に当たり、傾きが加速して船は沈んでしまった。そして岩を回収して戻ってくる工兵こうへい達。優秀だね。

 敵兵達はコチラに向かって泳いでくるけれども、全員が途中で阻まれて岸にはたどり着けない。だって敵意ある存在(物も含む)は一切通さないからね。

 最終通告をも無視したんだし、しょうがないよね。頑張って泳いで自国にたどり着きなさいって拡声魔法で伝えたら、敵兵達は鬼か! やはりマ族とつるむようなや奴らはとか勝手な事を言うから、一喝しておいたよ。


「貴国に何の敵意も持ってない国を、いきなり包囲して攻撃してくるのは、鬼ではないと言うのかっ!! そもそも余は通告した筈だ! 反転せよと! ソレを無視して更に攻撃を仕掛けてきた其方らに我らを愚弄する資格は無い! カオリ、顔を見るのも不愉快だっ! 今すぐに小奴らを余とカオウ国王の前から消すが良い!」


「ハッ! リッター様の仰せのままに!」


 僕の言葉を受けて即座に敵兵全てを転移させたカオリ。

 カオウは僕に礼を言った。


「リッターよ、有難う。今こそ其方と友になれた事を心から嬉しく思う。其方は我らマ族の為に怒りを見せてくれた。それが何よりも嬉しいのだ」


「やだなあ、カオウ。褒めても何も出せないよ」


 褒められて怒りが冷めて冷静になった僕は、照れて何時もの僕に戻ったよ。


「それで、カオリ。奴らを何処に送ったの?」


「ハイ、魔境の魔獣達の元に送りました。運が良ければ生き残れるんじゃないでしょうか? まあ、我が国には入れませんが」


 うん、僕の怒りに感化されてカオリも過激になってたんだね。僕は直ぐに、そのままガー・イコクに再度転移させてとカオリに頼んだ。

 万が一、我が国やカオウの国の冒険者達と遭遇したらややこしい事になるからね。

 カオリは渋々ながらも従ってくれたよ。そして、全てが終わった時にバイトが到着したんだ。


「剣神、只今参上!! さあ、リッター様に仇なす奴らは何処ですか? はっ? もう終わったですと……」


阿呆あには何処をほっつき歩いてたんですか? 遅すぎますね」


「ヤエ、今阿呆にあにって当て字をしただろう!! これでも時速三百キロで爆走して来たんだぞ!! しかし、リッター様遅れて申し訳ありません!」


 平身低頭のバイトに笑って僕は言ったよ。


「今回はバイトの出番は無かったよ。次はよろしく頼むね」


 そして、今回の工兵こうへい剛兵ごうへいは一応建設が終わるまで、町を防衛させる事にして、僕達は転移で帰ったんだ。


 あっ、バイトは来たばかりだけどまた走って帰る事になったよ。ヤエもカオリも実の兄のバイトに冷たいよね。僕は一応言っておいたよ。もう少し優しくしてあげてねって。返事は、


「善処します」


 だったけど。 

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