第7話 もう出来てる
翌朝。僕は顔を洗ってから朝食前に馬車の外に出てみた。すると、
「何で!? もう出来てるっ!」
出来上がっている建物を見て思わず大きな声を出してしまった僕の前に、ゴーレム達が集合した。そして、
「リッター様、お待たせ致しました。どうかご見分をよろしくお願い致します」
そう言って皆が跪いた。
イヤイヤ、待ってないから。明日、明後日ぐらいに出来たら早くて助かるなぁって思ってたから。実際、僕のスキルで建てても早くて四日は掛かるよ。
「う、うん。とても早く出来たんだね。嬉しいよ。それじゃ、外観はここから見ても合格だから、中を見させて貰おうかな。あっ、その前に僕だけじゃなくて他の人の意見も聞きたいから、呼んで来ても良いかな?」
「はい、勿論でございます。しかし、早く出来たなんて仰って頂けるとは…… リッター様は大変お優しい。私どもも益々やる気が出て参ります」
「うん、そうなんだ。頑張ってくれると僕も嬉しいよ。それじゃ、チョット呼んで来るね」
そして、馬車に戻りヤエにアレグーラとレイラ、カーナ、アニーを呼んで来て貰う。バイトとカオリは既に僕の元に来ていたからそのまま皆が揃うまで一緒に待つ事にした。
「おはようございます、リッター様。お呼びと聞きましたが如何されましたか?」
アレグーラがレイラとカーナと一緒に来てそう聞いてきたけど、アニーがまだ来てないから少し待ってと言って返事を保留した。
そして、待つ事三分。アニーが走ってやって来た。
「おはようございます! スミマセン、お待たせして!」
「ううん、そんなに待ってないから気にしなくて良いよ、アニー。おはよう、皆。実は昨日ゴーレム達に命令しておいた休憩用の建物なんだけど、今朝見てみたらもう出来てるんだ。それでゴーレム達が見分してくれって言うから、僕一人の目で見るより、皆で見て貰って意見を言って貰う方が良いかなと思って」
「エエ、もう出来てるんですか!?」
カーナが驚いてそう言うから、僕はもう出来てるんだと僕も驚いた事を含めて返事をした。
そして、半信半疑な皆を連れて表に出てみたら、やっぱりちゃんと出来上がっている。
「皆様、おはようございます。お待たせしてしまって申し訳ございません。やっと完成致しましたので、皆様でご見分をよろしくお願い致します」
ゴーレムの言葉にハッとして先ずはバイトが突っ込んだ。
「イヤイヤ、待ってないし、早過ぎるし。お前達、何者だ?」
「バイト様、我らはリッター様がお創りになられた
「うん、知ってるけどな……」
黙ってしまうバイトに続いてヤエが言う。
「どうやって一晩でコレだけの建物を二棟も建てたの?」
「ヤエ様、我らは
「はい、そうですか……」
ヤエも黙ってしまう。ううん、スーパー執事とスーパー給女が黙るなんて初めて見たよ。気を取り直して僕は皆に言った。
「さあ、折角だから中を確認しよう。何か意見があったら遠慮なく言ってね」
僕の声と共にゾロゾロと連れ立って建物に入って見た。先ずは入口から入って直ぐに靴箱が。って、建物の中で靴を脱ぐ事なんて寝る時だけだよ。
けれどもコレに反応したのがバイト、ヤエ、カオリの三人だった。
「おおっ、分かってるな」
「やはり休む時には靴を脱ぎたいわね」
「これは日本の旅館?」
「カオリ様、流石でございます。我らはリッター様に創られたゴーレムではございますが、女神○■●□様から授けられた記憶もございます。今回、リッター様からのご依頼は快適に休める空間にせよとの事でしたので、女神○■●□様からの記憶から最適解を選んだと自負しております」
頭を下げながらそう言うゴーレム。僕達は三人と違い戸惑いながらだけど、靴を脱いで靴箱に入れた。そしたら、ゴーレムが説明を始めた。
「コチラの靴箱ですが、
「そ、そうなんだ。凄いね、ソレは」
「お褒め頂きまして有難うございます。次は各部屋をご案内する前に【受付】の説明をさせて頂きます。皆様、あの正面に見えるカウンターにお越し下さいませ」
そう言われてカウンターに向かう僕達。ソコには、僕達の知らない服を着た女性に見えるゴーレムが居た。そして、
「ようこそ、リッターの快適宿へ。皆様お連れ様でしょうか? コチラの台帳にお名前をお書き願えますか? あっ、申し遅れました。
ソコでバイトは言った。
「うん、完璧だ。満点だ、満点」
「おお、本場の方にそう仰って頂けるとは! 練習した甲斐があったな、ゴレム子」
「はい、嬉しいですわ、リーダー」
「それでは各お部屋にご案内致します」
そうしてリーダーゴーレムに付いて行くと、一人部屋が全部で十室あって、トイレ付。それからニ〜三人部屋が五室あって、風呂トイレ付。更に四〜六人部屋が同じく五室で風呂トイレ付。大部屋として、八〜十五人が泊まれる部屋が三部屋あって、風呂は一つだけど、トイレは二つ付いている。
それとは別に大浴場(男女別)があって、廊下の端にも誰でも使えるトイレがあった。
調理場もあって、泊まる人や休む人が自由に使用して良い様になっている。調理台は全部で七つしか無いですがって言うけど十分だよね。
もう一つも同じ造りになってるそうだ。開いた口を塞ぐのに苦労したよ。そして、それらを見たアレグーラは、料金を取るべきだと主張した。それには他の皆も賛成のようだ。
ソコでその場で相談して、開拓が進んで交易が始まったら、ココをバイト曰く宿場町にする事にした。一泊一人銅貨五枚に決定したけど、皆からは安すぎるって言われた。けど、快適に休めるなら沢山の人が利用してくれるから、それで良いと思うんだ。休憩だけして泊まらない人は銅貨二枚で、お風呂には入れる事にした。
そして、僕はゴーレムリーダーに言った。
「どうかな? ココの管理を任そうと思うんだけど?」
「わ、私めでよろしいのですか、リッター様」
「うん、寧ろ君以外に適任者は居ないと思うよ。それから、君を含めて十人だと少ないだろうから、あと、三十人追加で出てきて貰うね」
もう既に僕の中でこのゴーレム達は人だと認識されてしまっている。そして、僕は
最後にココを離れる前に、もう二百メートル四方をスキルで木を抜いてギフトで地面を硬化した。更に、
「ギフト【こう】より、【構内】指定!」
ギフトを使用して、切り開いた場所を僕の所有だと認定した。ソコにヤエが聖別をしてくれたから、完璧だと思う。
僕とゴーレム達は離れていても念話で会話が出来るから、必要な事があれば報告するように言って、僕達はまた草原に向けて動きだしたんだ。
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