04.残された想い

当時、学生の頃から付き合っていた彼女へ自分の想いを伝えようとしていた兄ちゃんから預かった指輪の意味を理解したのは、僕が高校生の頃。





 僕はずっと大事に保管していた指輪を持って、兄ちゃんの彼女を探した。




 彼女をみつけると彼女は僕を見てビックリしていた。




僕と同じ歳頃の兄ちゃんとそっくりだと優しく、どこか切なく微笑む彼女に、兄ちゃんから預かった指輪を渡すと彼女の瞳から大粒の涙が頬を伝う。




 そんな彼女に僕は言葉をかけることも、自分の密かな彼女への想いを伝えることも、胸を貸すこともできなかった。





 気持ちが落ち着いた彼女と少し話をする。






 お互いの今までのこと。


 家族のこと。


 仕事のこと。


 学校のこと。







 兄ちゃんのこと。







 あの日のこと。





 あの日から心にぽっかりと空いてしまった穴をお互い塞ぎ合うように、記憶を辿った。














 そんな彼女が兄ちゃんのあとを追ったことを知らされたのは、彼女と話をして数ヶ月後のこと。









 兄ちゃん、守れなくてごめん。






 彼女の支えになれなくてごめん。













 僕はあの日から変わらず、今も無力だ。

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