03.かくれんぼ
いつも僕の手を引いて歩いてくれた兄ちゃんがいれば、僕の心もあの日から進むことができると思った。
10年前、数週間経っても帰らない兄ちゃんを探しに一人、家を出て兄ちゃんが居そうな場所に足を運んだことがある。
周りが暗くなっていることにも気付かず、時間を忘れて探したが兄ちゃんの姿はどこにもない。
兄ちゃん、昔から隠れんぼ上手だったよね。幼かった僕に手を抜かずに本気で隠れる兄ちゃんを見つけるのが大変で、何時も泥だらけになって必死に探したね。
兄ちゃん、どこに隠れているの?
身なりも気にせず泥だらけになって、家の玄関を開けると、中から父さんが勢い良く駆け寄ってくる。
いつも怖い顔をしていた父さんが、汗を沢山流しながら、僕を強く抱き締めて声を出して子供の様に泣きわめく。
僕はこの日、生まれて初めて父さんが泣く姿を見た。
僕の両肩を強く掴みながら、父さんは真っ赤にした目で真っ直ぐ僕の目を見て言った。
母さんも、
おばあちゃんも、
兄ちゃんも、
もう僕の元に帰ってこないことを、父さんは教えてくれた。
もう、二度と会うことはできないの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます