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ひなみ

第1話

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「君だったのか」

「ごめんなさい、貴方にだけは知られたくなかった。これで私はもう……」


 泣き顔を浮かべ、真っ白な翼の生えた彼女の姿が薄くなっていく。流れる涙はまるでダイヤモンドのように、キラキラと眩しく輝いている。


「そんな!」

「なぜここに足を踏み入れてしまったのですか? 絶対に来ないでと言ったのに」

「どうしても君のことが忘れられなかったんだ。だから――」

「お願いです、それ以上は言わないで。……さようなら、私の愛したひと」


 こうして彼女は彼の前から姿を消した。

 彼女の正体は天使だったのだ。

 何も知らなければこのままでいられたかもしれないのに。自分が会いに行ってしまったばっかりに、と彼は今更になって後悔した。


「それでも。それでも君は、綺麗だ」


 ――チリン

 彼女がいつもつけていた髪飾りの鈴の音を何度も何度も、手繰たぐり寄せるように思い返していた。


+++

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