第26話
スタンピードとはダンジョン内の魔物がキャパオーバーを起こし地上に出て光側闇側関係なく暴れ出す事態だが、基本的に光側に対する砦なので光側に侵攻していく。それに対して擬似スタンピードとはより明確なもので光側に対する侵攻を目的としている。ダンジョン外の魔物は闇側の土地、つまり元々住んでいた土地でキャパオーバーになった為、新しい定住の土地を求めるのだ。
では、ここで光側と接面していない闇側の領土では擬似スタンピードが行われているのではないか?と思うかもしれないが結構ご都合設定の様でダンジョンの魔力があるところでないとキャパオーバーを起こすほど魔物が増えないらしい。だから基本的には大丈夫だ。また、闇側の奥にある大帝国の様なものを築いている古参のダンジョンマスターが治める土地はそもそも彼らの支配下にある為スタンピードなぞ起こさせないし、なんなら闇側、魔族の冒険者の様な存在もいる為問題にはなっていないらしい。
総括するとゲームでいうところのインスタントダンジョンみたいなものだな。狩っても狩っても勝手に湧いてくるみたいなものだ。ちなみに洒落ではない。ここまで深い説明は光側にも闇側にもされておらず、俺のようなごく一部の神に近いものだけが知っているかもしれないという程度らしい。
さて、そんなことを考えているとオークが段々とこちらに近づいてきている。彼らはグレーウルフの様に鼻がいいと言うわけでもないから多分たまたま、こちらの方向に向かってきているだけだ。レッサーボアから作った付与付きのショートソードを腰から引き抜き中腰で構える。右手に剣を持ち身体はオークに対して横向きに顔はオークの方に向く。左足を前に踏み出し足に力を込めて飛び出すとその勢いのままオークのクビに一撃を叩き込む。
オークは2メートル越えのでっぷりとした体型で首を切り落とすというよりも切り上げる形になる。そのままオークの肩まで飛び上がった俺はオークの身体を踏み台にもう一体のオークの頭上にジャンプして落下速度そのままに脳天をカチ割る。血が飛び散り汚れるがそこは魔法で処理をしてオークの身体自体をアイテムボックスへと収納する。1体はダンジョン登録のために使い、もう一体は戦利品として扱う。オークの討伐証明は特徴的な鼻や耳である。なので切り落としておく。他は丸々保存だな。
一応魔物も倒したし、元々の目標である採取も満足いくほどに終わっていたので剣を鞘に戻してそのままセーフティーポイントを目指して歩いて戻ると、最初に来た頃よりも人が増えていた。日も傾いて来ているのでこのまま帰るグループとここで野宿するグループで別れているみたいだな。俺はとりあえず帰るつもりだったので帰るグループの端の方に混ざって悪目立ちしない様にそのままエルドレアの街へと向かい冒険者ギルドに寄っていく。
グループをまとめてくれていた代表者達が先に受付を済ませて、残りのソロ冒険者達が受付を終えた頃にミィスさんの方に向かい今日の成果について報告をする。
「こんばんわ、アイテムを出したいんですけど納品はこちらで大丈夫ですか?」
「いえ、基本的には依頼の報告や討伐の報告はこちらで納品などの品質や量をしっかりと測る場合は素材受け取りカウンターに出してもらいます。」
そして、ボソッとこちらにだけ聞こえる声で
「アイテムボックスに入っている分は気付かれると面倒くさいと思うので明日のお昼とかに錬金術用の部屋を利用してください。その時に素材受け取りの者を送ります。」
「わかりました。ありがとうございます。とりあえず討伐証明だけ渡しますね。はぐれの魔物がいたので襲われる前にその1体だけ倒して引き返して来ました。」
そう言いながら袋の中から取り出すフリをしてオークの耳を取り出してミィスさんに渡す。
「はい、受けとりました。お金はどうしますか?受け取られますか?それともギルドに預けておきますか?ギルドに預ける場合引き出しの際に手数料をいただきますが、ギルドカードにしっかりと記録されるのでどこでも取り出し可能になります。」
「では、その様にお願いいたしますね。」
ギルドカードと一緒に渡すと少し奥に下がっていきカードだけ渡された。カードの欄に残高を表示するかどうかは個人の自由らしいので自分にだけ見える様にしておく。そして、そのままカウンターを後にして木漏れ日亭で夕食を取りそのまま就寝した。
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