気が付けば極道の娘
クイーン
第1話 だから私は父に捨てられた
私の名前は「まゆり」。
父が名付けた。
今も残る私の母子手帳には、父の汚い文字で「千景」と最初に書いた文字を消し「まゆり」と書き直してあるのが分かる。
今なら「まゆり」と言う名も、別段珍しくもない。
でも私が生まれた当時は、女の子の名前は「○○子」か「○○美」。
ほぼこの2択しかなかった。
今となっては個性的でいい名前だと思えるけれど、内向的な子供だった私はこの名前が全く好きになれなかった。
どうして最初に書いた「千景」にしておいてくれなかったのかと父を恨んだ。
名前が漢字じゃないのも気に入らなかった。
子供の頃、名前を聞かれて「まゆりです」と、か細い声で言うたびに、必ず聞き返された。
「えっ?まゆみ?」
「(恥ずかしくて下を向いたまま) いいえ、まゆりです。」
「まゆりちゃんって言うの?変わった名前やね!」
あかんたれの私はそれだけで消えてしまいたくなったものだった。
何故父が「まゆり」などと言う名前を選んだのかと言えば、美空ひばり主演で幼い頃父と生き別れて、父親探しの旅に出る連続ドラマがあって、その主人公の名前が「まゆり」だったとか。
ミーハーな父はドラマの主人公の名前、しかも超売れっ子の美空ひばりの役の名前なら目立つだろうと私に名付けた。
要らぬお節介!
目立ちたくなんかないわい!
私が3歳の誕生日。
その朝、父が出掛ける時に母が言った。
「今日はまゆりの誕生日やから、早く帰ってね。」
父は「分かった。」と言って出掛けて行き、そのまま帰って来る事はなかった。
父と生き別れるドラマの主人公の名前なんか付けるから、私は3歳にして父に捨てられた。
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