宇宙船:地球

ひざし便り

第1話 裏側の一族

 あの人が言っていた再運行の日がきた。


「お父さん!早く!あたし裏側に帰っちゃうんだからねー。」

娘は今日裏側に帰る。これから元に戻っていく地球のことなんか知らずに。

「お父さんが遅いんじゃないんだからなー。そんなに急ぐと怪我するぞ。」

「んー……」

速度を緩める気はないらしい。

「入口にはまだ入っちゃダメだからなー。絶対だぞ。」

両手でまるをして止まっている。


 長い冬眠をしていた地球が今日からまた目覚める。

 まだ続くかもしれない人生だけどいいものだったとしか思えない。

 裏側に帰る娘、ここにいない息子、冬眠中の地球で同じく眠っていた僕を起こした妻……なくしてしまうのは惜しい。多くが眠りから目覚めるなら、なにより裏側に帰ることがたのしみならば後は


「お元気で。」

「もちろん!」

「忘れ物はないかな?」

「ないけれど……最後にハグは貰いたいわ!」

「お安い御用さ、ほーらおいで。」

「また会いたいけど、会う時は大変なことになっているからなんて言っていいかわからないの。」

「そんなことに悩む必要はないと思うよ。人間は短命だから約束事が守れないこともある。」

「どういうこと?」

「守れない約束も大切ってこと。」

「そう……じゃあ!お父さん、また会いましょ!」

「うん、またね。」

「えぇ!また。……そろそろ時間だから入口に行ってきます!」

「はい、いってらっしゃい。」

 そばを離れた娘がぴたりととまる。そして

「いってきます!」

 そう言って足で円を描き知らないところへ帰って行った。

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