第39話 和泉の血族
業火が立ち昇り、氷はすぐさま融け、白い蒸気となった。だが、すぐさま濃い魔力が蒸気を押しのける。
「そうか。お前は元ヴァンパイアだったな。ヴィアクとかいう和成の跡取りの血も吸って殺したわけだ。つまりここに、『和成』と『冷泉』の両家の血が混じった」
サンサの声がする。
まさか。
生きているのか?
エレナの全力のメルティングレイを食らって消し飛ばなかった魔族など、一匹としていない。
「世界の支配者たる『和泉』の血を再現できてしまったわけだ」
蒸気が晴れ、邪悪な笑みを浮かべるサンサの姿が見える。
左半身が欠落しているのに、普通に喋っている。しかも再生しつつある。
なんだこいつ?
魔族か? 人間か?
東方にはこんなバケモノがいるのか?
「貴重な存在だよ、実に。冷泉の血から【大罪魔妃】を輩出できるとは。もちろん、和泉の血族たる碧の才には、到底及ばないがな」
サンサはニタニタと笑いながら、エレナに手を伸ばす。
俺はすかさずその手を払った。
「エレナに触るな。それとエレナは、大罪人なんかじゃない」
「勇者殺しは事実だろう? 【大罪魔妃】は実に良い通り名だと思うがね」
「炎魔法【フレアバースト】」
目くらましにもならないだろうが、火柱を浴びせ、俺はアヴァロンさんのものとに駆け寄る。
「おっとダメだ」
鎖を手繰り寄せ、サンサはアヴァロンを遠ざける。
「何度も言っただろう。和泉の血族は貴重なんだ。かつて和泉閑厳が、家系を二つに分けたせいで、我ら【蔵造り】の数は大いに減った。だからこれはよい兆しなんだよ。和泉の【蔵】の力を扱える才能が、冷泉の血から誕生したことはな!」
何を言っているのか、俺には半分も理解できなかった。
「まぁいい。今は見逃してやるよ。だがいつか、【大罪魔妃】も我が陣営に加わるだろう。和泉家の絶対的優位は揺らがないからな。なんたって、」
驚くべきことに、サンサは空中を浮遊し始めた。
「皆我々に支配されていることに気付いていないのだからな」
飛び去る襲撃者を、止めることは叶わなかった。
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