第9話 圧倒的戦力差
「剣技【テンペスタ】」
無属性の魔力を刀身に纏わせ、嵐のような高速連撃を叩き込む。外皮が硬く、斬撃は通らないだろうが、これで衝撃は蓄積していくはず。
そう思っていた。
「それで全力か? ロッソ・アルデバラン?」
次の瞬間、俺の右腕は刈り取られていた。片腕と剣が地に落ちる。
「このサイズの体躯だとちょっとは響くが、慣れれば大したことはない。ギルドマスターというから期待していたが、所詮は人間だな」
肩口からどくどくと血が流れる。痛みで意識が飛びそうだ。
何が起こった?
一瞬で腕を斬り落とされたのか? そうだ。実際、ドラゴンロードの剛爪は、血と肉に塗れている。
勝てるわけがない。所詮、こんな地方ギルドの冒険者が行って帰って来れるのは、魔界の第一層か第二層くらい。それ以上深くは潜らないし、潜ったとしても死ぬだけだ。
そんな冒険者たちが闇に呑まれた際に処理するのが俺の仕事。逆に言えば、その程度の実力しかない。
おそらく最も深い第八層でエレナに仕えているであろうドラゴンロードを倒すことなど、できるわけがない。
俺は死ぬのか? ここで。
死んだら魔界に持ち帰られ、蘇生させられてしまう。どんな種族に転生させられるか分かったものではない。
確実に分かるのは、そうなればエレナに絶対服従するしかないという事実だ。
「炎魔法【フレアバースト】」
渾身の魔力を練り、炎の柱を顕現させる。熱波で自宅の瓦礫は吹き飛んだ。だが、
「ぬるい炎だ」
そう一蹴され、俺はドラゴンロードの蹴りを食らった。
内臓がひしゃげ、肋骨が砕けるのが分かる。
「【ロード】の名を冠する我々を侮らないことだ。我々こそがエレナ様に選ばれた存在。その我々が命じたことに、抗うつもりか? ただの人間の分際で」
何か言い返してやりたいが、俺は挑発の言葉一つ絞り出せない。
「貴様はエレナ様の夫となる。拒否権はない」
俺は首を締め上げられる。
まずい。
このまま死んだら、本当にエレナを救える人がいなくなってしまう。エレナが、人でありながら魔妃を名乗る、大罪人になってしまう。
それだけはダメだ。
エレナを死なせずに、正気に戻す。それこそが唯一の活路だ。
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