第21話
「仕留め損ねましたね。もしかするとほかの宿泊者が危ないかもしれません。身勝手で申し訳ないのですが、リーモさんを読んでもらってもいいですか?」
ジャッジさんの交渉のお陰でこの宿の宿泊者には避難してもらった。
「自己紹介が遅れましたね。僕はジャッジ。整光騎士団本部に所属しています。お二人のことはよく存じ上げています。何しろ十二星剣を二人倒したのだからね。」
「いいえ、それはもう一人、魂を賭けて戦い続けたロックスさんという方のお陰です。」
「そうか、そんなにも素晴らしい方がいたとは。」
俺たちは一通りの自己紹介を終えた。
「さて君たちには、自分の部屋で待機してもらおう。私は双子を引き付ける為に隣の部屋に一人でいる。何かあったら合図する。その時は加勢を頼む。」
「待って、メイも一緒に戦ってもいい?」
そう聞いたのは、メイユンだった。
「むしろ、こちらがお願いしたいくらいだ。君なしではやられていた。よろしく頼みます。」
「頑張る、ありがとう。」
こうして俺達三人は部屋で待機することになった。
待機していると、不安が大きくなる。ジャッジさんは本当に大丈夫なのだろうか?不安に耐えながら、俺は待機していた。
ー部屋にて―
「メイユンちゃんは何か好きなものとかあるの?」
「メイは特に…」
「私は『悲しみの姫』って本が大好きなの』
「どんな話なの?」
―「昔々夢もなく、友達もいないお姫様がおりました。彼女が初めて町に出た時初めての友達ができました。その友達はとても優しくて、たくましい人でした。姫は友達と一緒に剣術の練習をしました。ある時、姫が友達に『なぜそこまで剣術を練習するの?』と尋ねました。しかし、友達は『強くなるため』とだけ言い、それ以上は何も言いませんでした。時がたち、姫の国に兵が攻めてきました。なんと敵国の兵長は姫の唯一の友達だったのです。姫は悲しい気持ちになったでしょう。しかし自軍の兵にこう言いました。『私が説得するまで、彼らを攻撃するでありません。』しかし、姫の説得もむなしく兵の勢いは止まりませんでした。やがて、自国の兵たちは敵軍を攻撃しだしました。姫は友達のもとへ駆け出しました。友達を見つけ、目が合ったその時、自軍の矢が友達を襲いました。姫は自分でもわからずに、友達をかばいました。友達は驚きの表情で『裏切り者の僕に、なぜそこまでするんだい。今日のことだって君に一度も言ったことがないのに。』と聞きました。『私にも分からないの。ただ、貴方を守りたかっただけ。それじゃダメ?』『ダメだ。なぜ君が僕のために、敵のために死ななくちゃならない!』『分からない。もしかしたらあなたのことを愛していたのかもしれないわ。』姫はとても冷たくなって、友達の暖かい膝の上に寝た。友達は泣いた。戦は終わった。やがてその場所には美しいバラと姫の首飾りだけが、静かに置かれていた。」―
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