第2話
「突然何を言ってるのか?もしかして伝えたいということはこのことか?なら俺は帰る。そういう確証のなさそうな話には興味はないんだ。」
「待っておくれよ、エルピス。この話をするにあたっての理由がある。昨日は日食だった。日食は不幸の前触れとされている。それにこの村に非人族以外の何か不吉な気配を感じるんだよ。」
「それは確かな根拠といえるのだろうか?申し訳ないけれど、これ以上は付き合えない。」
「確かな根拠なんてものはない。それは私もわかっておる。しかし、危険が迫っている以上何かしなくてはならない。予言通りにならなくても、いやならないことを願っているが、対策を立てなくてはならない。何かたってからでは遅いんだよ。どうか私の言うことを聞いてほしい。」
「分かった、そこまで言うなら手伝いたい!」
「ありがとう、エルピス。ついてきておくれ。」
そう言われて俺は婆さんについていった。
そこにあったものは一本の剣だった。
「この剣は何だ?」
「これは昔の戦争で非人族が武器として使っていたアーティファクトというものだよ。」
昔、世界中を巻き込んだ大きな戦が繰り広げられた。非人族、悪魔族、水妖族、獣人族、神生族、この世界に生きる六つの、すべての人種が互いの将明日のために争った。そんな戦の中で力も弱く、魔法も使えない非人族が生きるために作り出した武器、それがアーティファクト。
「エルピスにこの剣を持っていてほしい。そして自分を守れ!」
「なんでだよ!ご先祖様の大切な武器まで受け取って今更何を言い出すのかと思えば自分を守れだと!それじゃ村のみんなはどうなるんだ!」
「恐らく、いや助かる未来はない。無論私もだよ。」
「なんで、助からないって決めつけるんだよ。そんなにヤバいやつなのか?この村を滅ぼそうとしている奴は!」
「日に日に感じる邪悪な力が増大している。敵は非人族ではないことは確かだが、それもとてつもない奴だ。我々最弱と蔑まれる非人族が適う相手ではないのだよ。お前には生きてほしい。生きて我々の遺志を継いでほしい。おそらく最後の非人族として」
この時代非人族は数を急速に減らした。そして確認できる非人族はこの村の村人のみとなってしまったのだ。
「だからといってなんで俺なんだよ。俺は16歳で村の中では若いけれど、もっと力の強いやつもいるし、将来有望な奴もいるだろう。なんで、俺なんかに…」
「エルピス、お前最近変な夢を見るだろう。」
「なんでそれを?」
「お前の体から不思議な気が流れている。言葉では言い表せないが、お前は奴らに気に入られているのだよ。だから夢を見せている。お前が生き残れば何か可能性が見えてくるかもしれない。こんな酷なことを任せてしまってすまない」
「いいや。謝るのは俺だ。生き残る権利を与えてくれてありがとう。俺頑張るよ。みんなの為にも絶対に非人族の血を途絶えさせない。」
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