虚言嘘虚言

エリー.ファー

虚言嘘虚言

 頼むから、嘘をついてくれ。

 頼む。

 嘘をついて欲しいんだ。

 そして、突き放してくれ。

 私を、捨ててくれ。


 嘘が好きなんだ。

 嘘については、私を知らないところに持って行ってからでお願いします。

 分かっていますね。

 私は嘘つきです。


 嘘ではない、これは虚言だ。

 癖である。

 嘘のような物語を歩み始めるだけである。

 毛だらけの嘘。

 引き抜いて殺して欲しい。


 虚言から始まる歩幅が狭くなっていく。

 これは、嘘だ。

 嘘つきのための虚ろな性格だ。


 言葉は嘘でしかない。

 そうだろう。絶対に、嘘だ。嘘だ。

 この嘘つきめ。死ね、嘘つき。

 虚言を入れ替えてくれ。私と殺しを同一にしてくれ。

 お願いだ。頼む。頼む。


 嘘をついてくれっ。

 頼む、お願いだ。

 虚言から始まる私の人生は傑作だ。

 殺して欲しいんだ。嘘で突き止めてくれ。

 刺し殺すなら虚言だ。

 構成を考えてくれ。


 虚言と嘘を心の形にしてください。

 それから、少しずつ晨朝と書いてください。

 もちろん、あなたの血を使って下さい。

 嘘と虚言の違いを説明してみせなさい。


 嘘だね。絶対に嘘だ。

 お前は虚言の案山子だ。

 忘れ形見は嘘よりも虚言に近いのだ。


 虚ろな表情。

 虚言では信仰。

 分かりますね。

 あなたの物語。


 嘘を口に入れて下さい。

 まず、虚ろを投げ出して下さい。

 火曜日ですから、虚ろの日ですね。

 分かりますね。

 日曜日だったら、殺してましたよ。


 言葉が足りないから、逃げ出して下さい。

 発生したのは、虚です。

 後ろから刺し殺して下さい。

 絶対に前から刺さないで下さい。

 お願いします。


 お願いします。

 殺して下さい。

 殺さねばならないはずです。

 そうですね。

 

 虚言から下る。

 嘘を積み上げて。

 積もったのは雪だ。

 いや。

 あれは絶対に嘘だ。


 口を虚ろにして下さい。


 答えはない。

 嘘を紡ぐな。

 いずれ。

 私を捨てねばならない。

 もちろん。

 嘘を使い果たしてこそ。

 私になれる。


 私から嘘を語ることはない。

 繋いでくれ。

 特に虚言が良い。

 何もかも、今夜、虚ろにしてくれ。

 今夜だけは、一人、躍らせてくれ。


「これ、なんなんですか」

「さあな。連続殺人鬼の家だから、何があってもおかしくはないだろ」

「でも、嘘とか虚ろとか、そんな言葉が壁いっぱいに書かれてますよ」

「天井もな」

「うわっ、本当だ。気持ち悪い」

「吐き出し続けてたんだろうな。自分の中にある何かを」

「どうしてですか」

「連続殺人鬼になりたくなかったんだろう。だから、欲望をぶつけてた」

「言葉にしてってことですか。じゃあ、これはあらがった跡ということですか」

「たぶんな。正常であることの証だ」

「異常じゃないですか」

「正常でいたいがために、自分だけの世界では異常でいた。ある日、耐えられなくなって、その異常は外の世界へと溢れ出た」

「分かりません」

「分からなくていい」

「どうするんですか」

「凶器を探す」

「もう、ナイフは見つかってますよ」

「同じナイフを使い続けられるわけがない。きっと、壊れたものは大切に保管しているはずだ」

「なんで、そう思うんですか」

「罪悪感だよ。反省したいんだ。だから、罪を物質にして身近に置いておきたい」

「なるほど」

「大丈夫だ。きっと直ぐに見つかるさ」

「先輩のこと、なんか怖いなって思ってます」

「なんでだよ」

「犯人の気持ちをとっても理解できている感じがして、怖いんです」

「心配するな」

「でも」

「じきにお前もこうなる」

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