戦いの前に

シヨゥ

第1話

「やっぱり大きい」

 鎖帷子を足元に余らせた戦士が不満げに言う。

「なんでみんな成人男性ように作ってんだ」

「成人男性が一般的な使用者だからだよ」

「不公平だ。私みたいな低身長女性用にも作るべきだ」

「そんな手間のかかること、工房のおっちゃん達もやってられないって」

 モンスターが跋扈するこの世界で武装するのは決まって男だ。そこに向けて量産品を作るは当たり前のことだろう。

「何を着ても大きくてやってられん」

 そう言って戦士は鎖帷子を投げ捨てる。

「ただ丸腰というわけにもなー」

 そう言ってぐるりと歩き周り、急に立ち止まった。

「もうこれでいいか」

 手に取ったのは分銅鎖。それを体に巻きつける。

「たしかにないよりはいいけども」

「背に腹は代えられない。さあ行こうじゃないか」

 戦士は身の丈以上の大剣を肩にかけて歩き出した。

「働いてやるからちゃんとした防具を頼むぞ」

 そう言い残して城外の喧騒の中に身を踊らせていく。

「分かっているよ」

 その言葉が届いたかどうか。まずは五体満足で帰ってきてくれること。その条件を達成してくれたらと思う。大口叩いて屍を晒す。そんな輩の仲間にならないことを今は願おう。

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戦いの前に シヨゥ @Shiyoxu

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