戦いの前に
シヨゥ
第1話
「やっぱり大きい」
鎖帷子を足元に余らせた戦士が不満げに言う。
「なんでみんな成人男性ように作ってんだ」
「成人男性が一般的な使用者だからだよ」
「不公平だ。私みたいな低身長女性用にも作るべきだ」
「そんな手間のかかること、工房のおっちゃん達もやってられないって」
モンスターが跋扈するこの世界で武装するのは決まって男だ。そこに向けて量産品を作るは当たり前のことだろう。
「何を着ても大きくてやってられん」
そう言って戦士は鎖帷子を投げ捨てる。
「ただ丸腰というわけにもなー」
そう言ってぐるりと歩き周り、急に立ち止まった。
「もうこれでいいか」
手に取ったのは分銅鎖。それを体に巻きつける。
「たしかにないよりはいいけども」
「背に腹は代えられない。さあ行こうじゃないか」
戦士は身の丈以上の大剣を肩にかけて歩き出した。
「働いてやるからちゃんとした防具を頼むぞ」
そう言い残して城外の喧騒の中に身を踊らせていく。
「分かっているよ」
その言葉が届いたかどうか。まずは五体満足で帰ってきてくれること。その条件を達成してくれたらと思う。大口叩いて屍を晒す。そんな輩の仲間にならないことを今は願おう。
戦いの前に シヨゥ @Shiyoxu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます